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お客様はいつでも
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日の光の中、ゆっくりと歩いていく老人の後姿を紫野は黙って見送る。
「本日は懐かしいお客様にも間接的にお会いできましたし、良い日ですね」
紅茶のティーパックを取り出して、沸騰した湯を注いだマグカップにゆっくりと沈める。朝はコーヒーを、小休止に紅茶を飲むのはあの人の癖だった。その背中をふと思い出してしまったのは、老人の後姿を見てしまったからなのか。それともあの人が一等手を焼いていたソラウミクラゲを誰かと一緒に見たからなのか。
そこまで考えた時、ベルがチリンと小さく鳴った。どうやら次のお役様がお見えになったらしい。
「では、お迎えに行きますか」
少し渋くなったカップの中身をごくりと飲み干した。襟を正し、制服のボタンをかちりと留める。時計を確認すると閉館までにはまだ十分時間がある。まあ閉館時間など、あってないようなものではあったが。
「水白水族館はいつでも、訪れるお客様が見たいものを見せる水族館ですからね」
耳に馴染んだ声を反芻するように言葉にして、紫野は切れ長の瞼をすっと開いた。エントランスのほうで人の気配がする。彼は柔らかな絨毯の上を滑るように歩き、お客様の前で優雅にお辞儀をして見せた。
「ようこそ、水白水族館へ」
紫野の一日はまだ当分終わりそうになかった。
「本日は懐かしいお客様にも間接的にお会いできましたし、良い日ですね」
紅茶のティーパックを取り出して、沸騰した湯を注いだマグカップにゆっくりと沈める。朝はコーヒーを、小休止に紅茶を飲むのはあの人の癖だった。その背中をふと思い出してしまったのは、老人の後姿を見てしまったからなのか。それともあの人が一等手を焼いていたソラウミクラゲを誰かと一緒に見たからなのか。
そこまで考えた時、ベルがチリンと小さく鳴った。どうやら次のお役様がお見えになったらしい。
「では、お迎えに行きますか」
少し渋くなったカップの中身をごくりと飲み干した。襟を正し、制服のボタンをかちりと留める。時計を確認すると閉館までにはまだ十分時間がある。まあ閉館時間など、あってないようなものではあったが。
「水白水族館はいつでも、訪れるお客様が見たいものを見せる水族館ですからね」
耳に馴染んだ声を反芻するように言葉にして、紫野は切れ長の瞼をすっと開いた。エントランスのほうで人の気配がする。彼は柔らかな絨毯の上を滑るように歩き、お客様の前で優雅にお辞儀をして見せた。
「ようこそ、水白水族館へ」
紫野の一日はまだ当分終わりそうになかった。
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