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第十六局【決勝戦編】
9巡目◉絆読み
しおりを挟む最終4回戦
井川ミサトはジッと財前カオリを見つめて昔のことを思い出していた。
(カオリ…… 私の大好きな友達。高校2年の頃は麻雀部で1番弱かった子が… それが今はすっかり強くなってプロ意識も高い。しまいには麻雀界最強を決める大会の決勝戦に残って私の敵として立ちはだかるのだからわからないものね、カオリも私も)
「リーチ!」
そんなことを考えていたらカオリから4巡目にリーチが入った。ミサトの手はとても勝負などできるものではなかったので徹底して降りたが… 15巡目、ついに安全牌を失ってしまう。
選択肢は2つだけ。孤立した1切りか孤立した三切り。他の牌は5枚使いスジや宣言牌跨ぎの3枚使い、ドラ周辺牌などでとてもじゃないが切り出せない。
1が当たりのケース
1.1単騎
2.1シャンポン
3.1-4リャンメン(あるいはノベタン)
この3つのケースであり、それと比較して三は
三が当たりのケース
1.三単騎
2.三シャンポン
3.三-六リャンメン(あるいはノベタン)
4.三ペンチャン
5.三カンチャン
この5つのケースがある。つまり数字の理論上は1の方が通るように思えるが… それは間違いだ。
(果たしてプロ意識を持っているあのカオリが4巡目リーチで愚形三待ちなどするだろうか? ましてこれは映像対局だ… あの子なら…)
「…すいません」
『おっと、珍しく長考に入る井川!』
『出しちゃうかもしれませんねー。三よりは端牌でしょう。普通なら』
(カオリならきっと4巡目愚形は作り直す。私達は今までそうやってきた。この場面… 三はリャンメンじゃない限り当たらない可能性が高い。それと比較して1待ちは単騎、シャンポン、リャンメンの全て最終形として採用しそう。ここは三を勝負して1を止めよう!)
「よし!」
打三
カオリ手牌
一二三九九③④⑤⑤⑥⑦11 ドラ⑤
『1を止めました! 井川ミサト!』
『いやあ、出るかと思いましたけどね。素晴らしいですね。どう考えても1だと思って見てたんですけど』
『私たちには分からない2人の絆があってこその読みが入っていそうですね』
『人読みということですか』
『そう、いうならこれは絆読みですね』
『絆読み… なるほど』
——流局
「テンパイ」
(やはり、1が当たり。危なかった…)
「フゥ…」
(あ… ミサトがホッとした顔してる。止めたんだ、きっと。やるなあ)
『財前カオリ東1局のドラドラリーチは不発に終わりました!』
『財前選手少し笑ってませんか? まあ、1人テンパイですから良しとしましょう。という顔ですかねあれは』
『いやあれは、この待ちで4巡目リーチしてもアガれないなんてコイツらなんて腕してやがる。っていう、強プレイヤーとの対戦でワクワクしてる笑みじゃないですかね。若いですからね。たくましいです』
アガリ牌をギリギリで止めたミサトはもちろん、これを止められたカオリのテンションも変な話だが上がってきていた。
今2人のボルテージは最高潮に達して、むしろ超えていた。この最も大きな大会の決勝最終戦で若い2人のプロプレイヤーが限界を突破して成長していくのであった。
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