上 下
288 / 297
第十六局【決勝戦編】

9巡目◉絆読み

しおりを挟む

最終4回戦ファイナルバトル

 井川ミサトはジッと財前カオリを見つめて昔のことを思い出していた。

(カオリ…… 私の大好きな友達。高校2年の頃は麻雀部で1番弱かった子が… それが今はすっかり強くなってプロ意識も高い。しまいには麻雀界最強を決める大会の決勝戦に残って私の敵として立ちはだかるのだからわからないものね、カオリも私も)

「リーチ!」

 そんなことを考えていたらカオリから4巡目にリーチが入った。ミサトの手はとても勝負などできるものではなかったので徹底して降りたが… 15巡目、ついに安全牌を失ってしまう。
 選択肢は2つだけ。孤立したとり切りか孤立した三切り。他の牌は5枚使いスジや宣言牌跨ぎの3枚使い、ドラ周辺牌などでとてもじゃないが切り出せない。

1が当たりのケース

1.1単騎
2.1シャンポン
3.1-4リャンメン(あるいはノベタン)

この3つのケースであり、それと比較して三は

三が当たりのケース

1.三単騎
2.三シャンポン
3.三-六リャンメン(あるいはノベタン)
4.三ペンチャン
5.三カンチャン

この5つのケースがある。つまり数字の理論上は1の方が通るように思えるが… それは間違いだ。

(果たしてプロ意識を持っているあのカオリが4巡目リーチで愚形三待ちなどするだろうか? ましてこれは映像対局だ… あの子なら…)

「…すいません」

『おっと、珍しく長考に入る井川!』
『出しちゃうかもしれませんねー。三よりは端牌でしょう。普通なら』

(カオリならきっと4巡目愚形は作り直す。私達は今までそうやってきた。この場面… 三はリャンメンじゃない限り当たらない可能性が高い。それと比較して1待ちは単騎、シャンポン、リャンメンの全て最終形として採用しそう。ここは三を勝負して1を止めよう!)

「よし!」

打三

カオリ手牌
一二三九九③④⑤⑤⑥⑦11 ドラ⑤

『1を止めました! 井川ミサト!』
『いやあ、出るかと思いましたけどね。素晴らしいですね。どう考えても1だと思って見てたんですけど』
『私たちには分からない2人の絆があってこその読みが入っていそうですね』
『人読みということですか』
『そう、いうならこれはきずな読みですね』
『絆読み… なるほど』

——流局

「テンパイ」

(やはり、1が当たり。危なかった…)
「フゥ…」

(あ… ミサトがホッとした顔してる。止めたんだ、きっと。やるなあ)

『財前カオリ東1局のドラドラリーチは不発に終わりました!』
『財前選手少し笑ってませんか? まあ、1人テンパイですから良しとしましょう。という顔ですかねあれは』
『いやあれは、この待ちで4巡目リーチしてもアガれないなんてコイツらなんて腕してやがる。っていう、強プレイヤーとの対戦でワクワクしてる笑みじゃないですかね。若いですからね。たくましいです』

 アガリ牌をギリギリで止めたミサトはもちろん、これを止められたカオリのテンションも変な話だが上がってきていた。

 今2人のボルテージは最高潮に達して、むしろ超えていた。この最も大きな大会の決勝最終戦で若い2人のプロプレイヤーが限界を突破して成長していくのであった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...