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第十三局【支援編】

16巡目◉人気投票

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 師団名人戦の一般予選が終了し、プロ予選の時期が近づいてきた。予選通過は一般よりは難しくないが、しかし結局は優勝は1人だけ、予選通過率がどうとか何回戦まで残れたとかは何の意味もない。No. 1になることだけがプロたちの目的なのだから。

 師団名人戦にはシード枠があり新人王のミサトは既に本戦1回戦からのシード権がある。

 
「いーなー。ミサトはシード権かあ」
「カオリもリーグ戦首位昇級だから首位シードあるんじゃないの?」
「無いわ。私のは繰り上げ首位だからね」
「えー、ケチなの。じゃあ2人とも頑張って。私は本戦で待ってるわね」
「「うん!」」そう元気よく返事をすると財前姉妹は師団名人戦プロ予選へと出場登録をした。
 プロ予選は2週間後————


 その頃、左田純子は『月刊マージャン部』の創刊号を作ることに専念していた。あまりにもやる事が多いので今回の師団名人戦は悩んだ末に不参加とした。去年雀聖位だった左田には本戦1回戦シードがあるので今年はチャンスではある。しかし時間がないのだ! この不参加は競技麻雀に誰よりも熱い左田にはそれはそれは苦渋の決断だった。
(今は長年の夢だった自分の雑誌を完成させることが最優先! 師団名人戦はまた来年もあるし。今年はせっかくの本戦1回戦シードだけど、我慢しよう)と思っていたのだが…。
『現代麻雀』という雑誌で毎年行われるプロ雀士人気投票で上位の男性プロと女性プロ2名ずつの計4名が本戦3回戦からのシードとなるアンケートがあるのだが(1人につき1回だけの投票権。1位2位3位の順で3p2p1pが投票される。自身への投票も可能)今売り出し中の白山シオリ女王位の人気を追い越して左田純子が女流人気1位となった! その人気はやはりあの雀聖位戦決勝戦の最終局。ツモで一撃決着にこだわって見逃しをかけていたあの勇姿に感動したという声が多かった。

「この私が… 人気投票1位…? 何かの間違いじゃない? 私もう50代のおばさんよ?? シオリちゃんより人気があるなんて信じられない…」と現代麻雀のアンケート担当者と話す左田。
「間違いじゃありません。みんな左田プロの麻雀に勇気をもらったんですよ。結果は優勝を逃していても素晴らしい内容だったこと、観てた人は全員分かってるんです。かくいう私も左田プロに1票入れた1人ですし」
「そうなんだ。うん… ありがとう。頑張って良かった…… ありがとう!」
「では、参加ということでよろしいでしょうか」
「もちろん!(本戦3回戦シードならそのくらいの時間は捻出出来る!)…ちなみにあなた私のこと何位で投票してくれたの?」

「えと、それは… 3位」
「3位かい!!」
「スンマセン!」
「あははは! ジョーダンよ。3位で充分嬉しいって! ほんとにありがとうね」
「いえ、感謝されることは何も…… 私の方が、感動をありがとうという気持ちでいっぱいなんで」
「…はは。もう、嬉しいなあ。グスッ、おばさんを泣かせるなよ」

 左田純子はそう言うと瞳に涙を溜めながら心からの笑顔を見せてアンケート担当者に大会参加の意思を伝えた。


現代麻雀人気投票

男性プロ
1位富士山賢太郎
2位豊田貴志

女性プロ
1位左田純子
2位白山詩織

 
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