230 / 297
第十三局【支援編】
7巡目◉私の全盛
しおりを挟む左田純子は『全盛期』という言葉が嫌いである。こと麻雀においては年齢による衰えなどそうは無いと考える左田は「全盛期なら」などと言うのは言い訳にしかならないと感じていた。弱くなったらそれは鍛錬が足りないだけ。『期』のせいにする者は日々鍛錬してない者。面倒くさがりな自分を認めたくない弱者の言い訳だ。
もう50代の左田はそれでも「私の全盛はいつだって『今』だ」と言う。
なので第30回雀聖位決勝戦最終局の5面待ちをツモれなかったことについても「全盛期の左田なら軽くツモっていたけどな」などと言う話をされるのが非常に不愉快であった。
(舐めるなよ! 私はいつだって全盛だ! たしかに負けた。だが、それは相手だって強いんだから当たり前に起こる事。私が衰えたわけじゃない。むしろ私は…… まだ、これからだ!!)
自分はまだ成長する! これからが一番いい所なんだと。そう言う左田は出版社で新しい企画となる『月刊マージャン部』の編集をする傍らプロ活動にも力を入れた。
「私の勝負はまだこれからだ!」それが左田純子の口癖であった。
————
中條ヤチヨには物語を作る才能があった。就職先が決まったヤチヨはみんなが勉強してる時間に小説を書いていた。
それは『気付いたら年がら年中牌❤︎握ってた』というタイトルの実話を元にした青春小説だった。ヤチヨがなぜ麻雀部に入ったのか。どうしてこんなにハマってのめり込んでいったのか。今はもう生活の一部になったこの麻雀。それについて熱く語る主人公と、そのライバルや友人の物語である。ヤチヨが麻雀部でも抜け番にそれを書いていて、マナミがふと気になってそれを読んだ。
「なにこれ凄い面白いじゃない! 物語のパートだけでなく麻雀の戦術パートもあって解説付きで理論的! しかも、これは私たちで開発した新戦術たち。それを物語に組み込んで世に出すなんて考えたわねー。戦術書は知名度高い選手が書いたものしか出版されないけど小説なら物語が面白ければ世に出るチャンスはあるわよね! そうだ! これを左田さんに見てもらおうよ」
「えっ、忙しい人なんじゃないの? こんな長いの読んでくれるかな…」
「まーまー、ものは試しよ!」
ヤチヨの物語を左田にデータで送ってみた。
————
後日
ヤチヨのその文才に左田は惚れ込んだ。(この物語をなんとしても世に出さなければ!)そう思った左田はヤチヨの物語を『月刊マージャン部』で連載しましょう! と提案した。もちろん、ヤチヨはそれを喜んでOKした。こうして、後の世で有名になる麻雀小説専門家『ヤチヨ』がここにひっそりとデビューする。
10
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる