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第十三局【支援編】

7巡目◉私の全盛

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 左田純子は『全盛期』という言葉が嫌いである。こと麻雀においては年齢による衰えなどそうは無いと考える左田は「全盛期なら」などと言うのは言い訳にしかならないと感じていた。弱くなったらそれは鍛錬が足りないだけ。『期』のせいにする者は日々鍛錬してない者。面倒くさがりな自分を認めたくない弱者の言い訳だ。
 もう50代の左田はそれでも「私の全盛はいつだって『今』だ」と言う。
 なので第30回雀聖位決勝戦最終局の5面待ちをツモれなかったことについても「全盛期の左田なら軽くツモっていたけどな」などと言う話をされるのが非常に不愉快であった。
(舐めるなよ! 私はいつだって全盛だ! たしかに負けた。だが、それは相手だって強いんだから当たり前に起こる事。私が衰えたわけじゃない。むしろ私は…… まだ、これからだ!!)

 自分はまだ成長する! これからが一番いい所なんだと。そう言う左田は出版社で新しい企画となる『月刊マージャン部』の編集をする傍らプロ活動にも力を入れた。

「私の勝負はまだこれからだ!」それが左田純子の口癖であった。


————

 中條ヤチヨには物語を作る才能があった。就職先が決まったヤチヨはみんなが勉強してる時間に小説を書いていた。
 それは『気付いたら年がら年中牌❤︎握ってた』というタイトルの実話を元にした青春小説だった。ヤチヨがなぜ麻雀部に入ったのか。どうしてこんなにハマってのめり込んでいったのか。今はもう生活の一部になったこの麻雀。それについて熱く語る主人公と、そのライバルや友人の物語である。ヤチヨが麻雀部でも抜け番にそれを書いていて、マナミがふと気になってそれを読んだ。

「なにこれ凄い面白いじゃない! 物語のパートだけでなく麻雀の戦術パートもあって解説付きで理論的! しかも、これは私たちで開発した新戦術たち。それを物語に組み込んで世に出すなんて考えたわねー。戦術書は知名度高い選手が書いたものしか出版されないけど小説なら物語が面白ければ世に出るチャンスはあるわよね! そうだ! これを左田さんに見てもらおうよ」
「えっ、忙しい人なんじゃないの? こんな長いの読んでくれるかな…」
「まーまー、ものは試しよ!」
 
 ヤチヨの物語を左田にデータで送ってみた。

————

後日

 ヤチヨのその文才に左田は惚れ込んだ。(この物語をなんとしても世に出さなければ!)そう思った左田はヤチヨの物語を『月刊マージャン部』で連載しましょう! と提案した。もちろん、ヤチヨはそれを喜んでOKした。こうして、後の世で有名になる麻雀小説専門家『ヤチヨ』がここにひっそりとデビューする。
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