228 / 297
第十三局【支援編】
5巡目◉マナミの誕生日
しおりを挟む4月20日。明日はマナミの誕生日だ。ついにマナミも明日で二十歳。大人とされる年齢である。
その日の夜、マナミは夢を見た。
○○○○○
〈財前真実さん。ずいぶん強くなりましたね〉
「だ、誰?」
〈私はラーシャ、あなたに憑いたラシャの付喪神です〉
「ラシャ? 麻雀マットのこと?」
〈そうです。あなたがお姉さんからもらった麻雀マットを何年も大切に手入れしたので付喪神が憑いたんです。私はあなたの勝利をきわめてさりげなくアシストすることに徹していました。あくまでお手伝いという形で、答えを教えることはせず〉
「あっ、たまにビリッとくるのはもしかしてアナタがやってたの?」
〈ええ、余計なお世話かとも思いましたが、でも最近は明らかに間違えた選択などはしなくなって来ましたよね。なので、私からのアシストはもう終わりにします。いいですよね。もう大人ですから。神様がいるのは小さい頃だけってのは物語のセオリーですし〉
「えっ、いなくなっちゃうってこと?」
〈私はいつでもラシャに宿っていますよ。ただ支援しなくなるだけです。見えなくても、聞こえなくても、マナミのそばに————
ピピピピ! ピピピピ!
ガシャ!
目覚まし時計が鳴ってそこで目が覚めた。今日は土曜日だがマナミは早番の日なので起きなければならない。
誕生日の日くらいゆっくり休んだら?とカオリは言っていたが早番でさっさと仕事を終わらせて、その後でゆっくりすることにしたのだ。
「なんだか変な夢を見てた気がする…」
(断片的にしか思い出せないけど… 私には付喪神が憑いてて、でももう大人だからいなくなる… そんな感じだったような… まあ、ただの夢よね)
とは言え気になったは気になった。本当にただの夢だったのだろうか。
その日、試しにわざと変な牌を捨ててみた。
マナミ手牌
一二三②②③⑦⑧123778
ここから
打③
(ピリッと来ない…)
一二三②②⑦⑧123778 ⑨ツモ
(ええい! これならどうだ!)
二に手をかけるマナミ
(……なんにも感じない。あの間違いを直感するような電流は実は神様がくれたギフトだったのね… 知らず知らずのうちに私は神様からの支援を受けていたんだ。そして、大人になった今日なくなったということか…… にわかには信じられないけど。一二三の二を捨てようとしたのに何も感じないのは…… そういうことなんだろうな)
そう思うとマナミは掴んだ二をそっと戻した。やはりこれだけは切るわけにはいかない。
(そう言えばカオリは私が不思議な力があるって話した時、疑いも持たずに聞いてくれたな…… あとで話してみよう。今日見た夢のこと)
その日の夜、マナミは家でケーキを家族と一緒に食べたあとお父さんと一緒にビールを飲んだ。
「なにこれ、苦いなぁ~。こんな苦いものをみんな飲んでたの? よくわかんないなー」
「ははは! まあ無理して飲むこともない! 飲むことが許される年齢になったってだけだからな。とにかくおめでとうマナミ」
食事を楽しんだ後、部屋に戻って今朝の夢のことをカオリに話した。
「……てなかんじで、大人になったから私の勘の良さはもうなくなったってワケ。まあ、信じられないかもだけど」
その話を聞いたカオリは驚きと戸惑いで真っ青になった。
「カオリ?! どうしたの? 大丈夫?! カオリ!!」
(womanが… いなくなる?!)
師であり、パートナーであり、生涯の親友であると思っていたwomanがあと数ヶ月後には消えるのかと思ったらカオリは熱が出てきて寝込んでしまった。
10
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる