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第十二局【雀聖位編】

17巡目◉雀聖位戦決着

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 左田純子のダブリーを受けてマナミは腹をくくる。
(どうせダブリーなんて考えても分からないんだ。自己中心的に切っていくしかない!)
 打中! ピンフになりそうな配牌なので役牌は要らないという判断だ。しかし、それに合わせてユウも河野も中を切る。
(うっわ! 最悪。2人共中を持っていたなんて。これじゃ2人を助けただけになっちゃったじゃない!)

左田ツモ北

打北

(北なんて持ってないっての! 持ってりゃそれから切ってたわ。また私が開拓しなきゃいけないの?)

 と思って白に手をかけたが、ふと思い直した。
(いやまてよ。私の手では使わないっぽい数牌を捨てたらいいんじゃないの? みんな切りたい字牌なんかを率先して切ってやる必要ないのよ! そうかそうか。これは良いことを思い付いた)

 マナミの気付きは正解だった。安牌が分からないリーチに対して対応する方法は字牌を切らず自分の手では不用な数牌に手をかけるのが正解。そうすることで他の誰かに字牌を先に試させる事が出来る。殿しんがりになる必要はない。先頭の係は押し付けてしまえばいいのだ。

 しかし。

マナミ切り番

打⑧

「ロン」

左田手牌
一二三六七八⑦⑨⑨⑨456 ⑧ロン ドラ1

「2600」

「はい…」(あ、やっぱり字牌から切れば良かったわ。やらかした)

《マナミの⑧切りは良い考えでしたけどね》
(そうなの?)
「私なら一発放銃だからマナミは耐えた方ね」と守備派のミサトが言う。なるほど、womanとミサトがそう言うのだから間違いないのだろう。

「とは言え大接戦になったわね」とアンもドキドキして見ていた。これでユウがトップ目になったからアンは期待しているのだ。

南4局オーラス

点棒状況

財前真実 25500
佐藤優  25600
河野勇一郎25200
左田純子 23700

 この局を和了あがった奴が雀聖。今までの道のりはなんだったんだと言うくらいの超大接戦で最終局は開始された。

「ポン」

 6巡目。左田に勝ったも同然の手が入る。

左田手牌
二三四伍六六六234(中中中) ドラ6

一四七二伍イッスッチーリャンウー萬待ち。

(終わった——)
(ダメだコレ)
(5面張はズルいよ)

 しかし、これを左田はツモれない!

河野8巡目

打一

(ロン! …なんてね。するわけない。こんなツモれそうな待ちで倒してもう1局勝負するなんてことするわけないわよね。ツモればそこで終了なんだから)

 雀聖位戦はアガリやめありだ。ツモってトップになったらその時点で終われるのである。そしてこの5面張。中のみの1500点なのでこの局で決めるためにはツモアガリをする必要がある。

ユウ9巡目

打二

(だーかーらー、出てもしょーがないんだって!)

河野9巡目

打二

(はいはい、私のとこには来ないのね。ったく。でもまだたくさんあるはずだし、焦らず待つわよ。同巡フリテンで当たれないし)

マナミ10巡目

打一

(しつこ! いい加減次あたりは当たろうかしら!)

ユウ10巡目

打伍

「リーチ」

ユウ手牌
七八九①①①23456白白

(リーチ棒が出たならもう出されても大丈夫! 出してこーい)

河野10巡目

打伍

(今じゃないっ!!)同巡内フリテンだ。

 いつまで経ってもツモれない左田はストレスでどうにかなりそうだった。

左田10巡目ツモ8
(これ、当たったりしたら怒るわよ! いや、誰も悪くないけども) 

打8

 通る。ユウは1-4-7待ちだ、スレスレを通す。


 11巡目マナミのツモ番。

 するとクスッと笑ってマナミが牌を優しく手元に上向きに置く。




(100点でいいのにね)



マナミ手牌
四四四七七七②②③③③④④ ④ツモ

「ツモ。8000.16000」



 ここに来ての四暗刻!

 これ以上ないオーバーキルで財前真実が第30回雀聖位を獲得する。



『優勝は財前真実プロ!』

「「ありがとうございました!!」」

 挨拶をすると祝福の拍手も待たずに席を立ちカメラさんの方を見てマナミがニコッと笑う。
「このカメラでいいのかな? 写ってる?」
「写ってますよ」
「みんなー! 観てるよねー? 立って立ってー。せーの、で一緒に決めるよー!」と言って立ち上がらせた。

 モニターごしにマナミがみんなに話しかける。そして──

『せーの』



「「「『私がナンバーワンよ!!』」」」

 麻雀部の全員でそう言って天高く人差し指を突き刺した。


ワアアアア!!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

「なんて、格好いいんだろう。財前マナミ」と、左田純子は見惚れていた。

 ユウは嬉しそうに「私の自慢の親友ですから」と話す。

「私は自分が優勝を逃してもマナミが優勝したことが誇らしい。私達はずっと一緒に鍛錬してきたんです」

「そっか、羨ましいな」

ワアアアア!!
パチパチパチパチパチパチ!!


 対局室の中と外から歓声と降り注ぐたくさんの拍手の雨があった。そしてマナミにはそのどこかから、小さな声で〈おめでとう〉と聞こえた気がした。
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