上 下
212 / 297
第十二局【雀聖位編】

7巡目◉ありがとうのリャンメン

しおりを挟む

 決勝戦前日。その日の夜、財前マナミは寝れないでいた。
(緊張する…… 明日は決勝戦。映像対局の決勝戦に残ってしまった…… どうしよう、寝れない。私の人生で一番の大舞台になる可能性すらある日。それが明日なんだ。みんなが応援してくれてる。ミスは出来ない。早く寝てコンディションを整えて行かないといけないのに…… 緊張で寝れないよ! そういえば昔、中学の理科の先生が寝れない時は何も考えずに目を閉じて横になっているだけでいい。それだけでも回復はするからって言ってたっけ。ようし無心だ
無心。……………………………………………………………………………………………… いや…… ムリよ! どうしても何か考えちゃうわよ。それが出来たら苦労しないわー)











チュンチュン
チュンチュン


(朝んなっちゃった)
「…あーーもう! 今さら眠いし!」
「ど、どーしたのマナミ。目え真っ赤よ?」
「えっ」
 鏡を見るマナミ。そこにはウサギのような目になってる自分がいた。
「やば。今日は映像対局なのにどうしよう」
「なんとかかんとかゾリンってのが入った目薬を使うといいよ。ゾリン」
「ゾリン? わ、わかった。うちにあるの?」
「無い。ひよこに置いてきた」
「だめじゃん!」
 幸い、水戸駅構内には薬局がある。マナミは行きにそこに寄ってから向かうことにした。

「すいません! なんとかゾリンが入った目薬ってありませんか?」
 薬剤師の先生が眼を見て察する。
「なんとかゾリン? ああ、充血してるね。ならコレがいいですよ、察するに今すぐに治したいんでしょう?」

 百寿製薬の『マイティーV』塩酸テトラヒドロゾリン入り。750円

「ありがとうございます!」
「はい、ありがとうございましたー」
 マナミは買う側なのにいつもありがとうございますと言う。店員と客がお互いにありがとうと言う形になるありがとうのリャンメン。そのやり取りが素で出来ているのがすごくいいなとカオリは前から思っていて、マナミに会って以来いつも真似して自分もそうするようにしてる。

 マナミは本心からいつも思っているのだ、そこで働いていてくれてありがとう。助かりましたありがとう。と。そんな善良な姉を持ち、それこそが有難いなと常々思うカオリなのであった。

「なにボーっとしてんの! 行くよ!」
「はいはい」
 待ち合わせ場所にした駅前のベンチにはずらりと少女達が揃っていた。

 ユウ、アン、ミサト、ヒロコ、ヤチヨ、サトコ、ショウコ、ナツミ、ユキ

 そしてメグミも到着しアカネも来てる。
 今回の大会はそのくらい大変なものなのだ! 対局室には入れないが一番近くでモニター越しにでも応援したいとみんなが思った。ユウとマナミのどちらを応援するとかそんなのは決められないけど、2人とも悔いのないベストの戦いをして貰いたいと、麻雀部のみんながそう祈っていた。見慣れない男性も1人いた。誰だろう。

「あ、これは私の父です」とナツミが紹介する。そういえばナツミは父親の影響で麻雀始めたと言っていた気がする。
「今日は楽しみにしています。2人とも決勝戦頑張って!」

「はい!!」「ハイ!!」

 特急ときわに乗って14人は決戦の地とうきょうへと向かった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

処理中です...