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第十一局【麻雀教室編】
5巡目◉運命に抗う冒険者
しおりを挟む『ひよこ』の店長はこの日、彼女たちの戦いを見て自分が全然未熟だということを知った。なぜなら、ユウもミサトも自分とは全く違う選択をしてアガリを探し出していたから。
店長は自分はどこか諦めていたのだと気付かされた。麻雀なんて、結局こんなもん。どうせ誰がやっても同じようなもんだし。と、運のゲームなんだと思い込むことで鍛錬するのをもうやめていた。
しかし、日々精進する財前姉妹や成田メグミ。そして麻雀部の少女たちを見て、スグルが武者修行に出ると言い出した理由もよーく分かった。バカにしちゃいけなかった。麻雀のこと。どうせ運ゲー。と思いニヒルに斜に構えるのはまだまだ百万年は早かった。このゲームはやはり頭脳戦なのだ。
例えるならロールプレイングゲーム。最初こそ頻繁にレベルが上がり、強くなっている実感があって楽しいのだがレベルが高くなってくると次のレベルになかなか到達せず、だんだんと飽きてくる。そして、こんなもんでいいだろ。とついにレベル上げを諦めてしまうのだ。でも、だいたいの人が「だって麻雀なんてこんなのどうせギャンブルだし」とレベル上げをやらない言い訳をする中で「まだ強くなれるはずだ」と鍛錬をやめない奴がたまにいる。それが一握りの強者になるのだ。
「おれも武者修行の旅に出ようかな」
「ちょっと、お店はどうするんですか?」
「ははは! ウソウソ。でも、そんな気分になったスグルの気持ちは今ならよーく分かる気がしてな…。おれはさ、普通に打って運がいい時には勝って、ついてないなら負けて。それが麻雀だと思い込んでいたよ。だけど、キミらの麻雀見てるとさ。自分が弱かったこと思い知らされてしまうよね。おれなら負けてた所でも、運命に抗う姿勢を見せるし。何とか勝機はないかと探し求めるじゃない?」
「ええまあ、諦めが悪いのは私たち麻雀部の共通点かもしれませんね。私たちは生きてる限り戦おうとします」
「さっきの佐藤さんの第一打とかもさ。おれには思い付かないものなんだよ」
「ああ、なんかやってましたね。取っとけばリャンシャンテンになる手からサンシャンテン戻しの北切り」
三四②③③④⑤⑥557北北中
ドラは8
ピンフ系のドラ使ってく手になりそうだ。
かなり良さげなリャンシャンテン。しかし、ユウの第一打は北だったのである。何故なら東家南家が第一打に北を選んだから。ここで西家も北を合わせたら暗に「私は配牌悪いので流局希望です」と言っているようなものだ。(麻雀には第一打で全員が同じ風牌を捨てることによりその局は流れる『四風子連打』という特殊なルールがあります)
「あれによって西家はノーマークでいい存在と勘違いさせて、対子落としがバレないように2枚目の北はギリギリまで引っ張ってのリーチ。みんなそこのリーチには安牌用意してないから詰むのも仕方ない。っていう計画だったわけでしょ。最後まで見たから理解したけど、そんな手段はおれの引き出しに無いんだよ。本当に凄いと思う」
二三四②③④⑤⑥55678
実際、ユウはイメージ通りのこれに成長して高めロンの裏1跳満。
「1巡の前後が命取りになるのが麻雀ですからね。放銃した人はユウをケアしていたらまだ安全牌を持ててる手でしたけどあの北を見せられたらケアするはずがないです」
「運命は力で変えられるって所を見せてもらったよ」
「私たちは運命に抗う冒険者です。どこかにまだ勝てる選択が残されていないか? それを探し、見つけたいんです。それが仮にまだ、誰も見つけていないルートであろうとも!」
「マナミさん、おれは大きな勘違いをしたまま麻雀を続けていたようだ。なんか今日は感動しちゃったな。…今日気付くことが出来て良かったよ。おれも、探求してみようと思う。まだ誰も見つけていない新しい選択を」
「一緒に成長していきましょう、店長」
こうして、ひよこの店長もこの日を境に麻雀部のことを支援してくれる協力者となるのだった。
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