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第七局【新人王編】

14巡目◉私たちの掟

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 ミサトとマナミは大会1回戦2回戦を順調に勝ち予選突破の勢いを見せていた。カオリも悪くない成績ではあった。しかし、3回戦カオリはミサトと同卓になってしまう。
(ミサトと対局か… ついてないわ)
《仕方ないですよ、いつも通りやるしかありません》
(そうね)

 対局前はとくに会話はしなかった。プロ対局というのはそういうもので対局相手と仲良くお喋りなどは御法度ごはっとなのである。
 無言の空間で集中力を高めている選手たち。ピリッとした空気がそこにある。ここに集まった人間は少なくとも会費を支払ってまでして1日を潰してお金も動かない麻雀をしに来てる。つまり、人生を賭ける覚悟でここにいる。それほど真剣な戦いなのだ。友達だからってお喋りしてていい空気ではないし、それこそがプロの作法だと言える。


「「よろしくお願いします!」」


 同卓者たちは中々に手強く、攻めても攻めても空振りで流局が多かった。しかし、南2局についにカオリに勝負手が入った。

カオリ手牌
二三四伍六⑤⑥⑦56777 ドラ4

 リーチして高目をツモれば一気に浮上だ。しかも待ちは山にごっそり残っていそうな3面待ち。親番はミサトだがここは容赦なく3000.6000を目指してリーチとする。

 すると、このリーチに対してミサトが反撃してくる。ミサトは持ち点がへこんでる南場の親番だしそれは当たり前だった。そして打たれる打一。

「ロン」

「2000」

「はい」

 もちろん見逃してツモにかけた方がいい結果になりそうなのは分かってる。跳満チャンスなど赤なしの競技麻雀では非常に貴重だ。特に今回のように山に残ってそうな待ちなら見逃しツモにかけるという選択はおおいにアリだった。だが、カオリたちは決めていた。

『友人間でのリーチ後の見逃し・・・は決してやらない。むしろ潰し合うつもりでやる』と。

 これが、カオリ達が決めた掟なのである。例えどんなに戦略性のある見逃しであろうと友人間では行わないと。そうしなければ、グルになっていると思われたらつまらない。理解してもらえなかった場合が大変になるだけなのでリーチ後は必ず当たる。そういう決めだった。

(うわ、ド安目に打っちゃったか… カオリ、邪魔してごめんね)とミサトはこの手を見て思ったという。
(勿体ないけど、これは掟。仕方ないわね)
《そうです、カオリ。よく躊躇なく倒しましたね。それでいいんですよ。チャンスでしたけど、友人であるミサトさんから出されたなら当たらないといけない。これが出来ないと色んな言い掛かりをつけられることになりかねませんから。倒して正解です》

 3回戦はミサトも親番を蹴られたのでそのまま浮上出来ずマイナスしたし、カオリも跳満チャンスを2000で仕上げたのでマイナスした。それが響いて4回戦に大変な条件になってしまうのだが、それでいい、それで仕方ない。と、納得する2人だった。
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