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第四局【プロ雀士編】
6巡目◉マスターの一番驚いた日
しおりを挟む「せっかく真面目なやつが来てくれたと思ってたんだがなあ」
マスターは誰もいない店内でそうポツリと呟いた。強いやつ、ズルいやつ、賢いやつ、モテるやつ、悪さをするやつ、色んなやつと働いてきた。この店を作ったその時から、自分の店を任せて安心なやつを求めて人を探してた。
(アイツになら、継がせるのも良かったと思っていたが、まだアイツは麻雀を強くなりたいという情熱があったようだ。……武者修行に出たいから辞めますなんて、やっぱりアイツは真面目そのものだなあ)
「ふふ」
マスターは笑みが溢れた。スグルが行ってしまったのは痛いが、その行動こそ、スグルらしいなと思うと笑ってしまう。
(頑張れ)
ただそう思った。アイツに大きくなって欲しい。挑戦者であって欲しい。
午前中の店内はまだ誰もいなくてマスターは1人で朝の仕事をやっていた。
前日の片付けやフードメニューの仕込みなどやるべきことは割とある。
するとガシャンと扉が開いた。ずいぶん早いが誰だろうか。
「いらっしゃいませ!」
入ってきたのは場違いなくらい若くて綺麗な2人だった。
「えっと、4名様かな?」
こんな時間に来客とは珍しい。多分、貸し卓の新規客だろう。にしても綺麗だ。雀荘に来たのは何かの間違いではないだろうか。
「いえ、私達フリーで少し打とうと思って来ました。でも、すぐに出来ないなら出来ないでいいです。本題から済ませるので」
フリー? 本題? どういうことだ。
「アルバイト募集してませんか? 私達ここで働きたいんです。土日祝日だけになりますけど。良ければ雇ってください」
「えっ、どういうこと?」
マスターは驚きのあまりワケのわからん返しをしてしまった。こんなに驚いたことは今まで生きてて初めてかもしれない。
「ですから、ここでアルバイトを。土日祝日だけ。どうですか? と」
「このお店は麻雀をするとこだけど?」
「もちろん分かっています」
「私達は高校生のころ佐藤スグルさんに鍛えてもらったんです。今は大学生なので年齢は問題ありません」
これは夢だろうか。スグルがいなくなったと思っていたらスグルの弟子がやってきた。しかもこんなに綺麗な女の子が2人だときてる。
「……えっ、と……分かりました。じゃあ採用するのでシフトを作りましょう。初日は2人とも来てもらうけど、基本的にはどちらか1人でいい。6時間交代くらいで2人で交互に来てもらおうと思う。土日はうちの女性スタッフがいないので助かったのは間違いない。ありがとう」
「やったー! ありがとうございます!」
ひよこには専属の女流プロや女子バイトがいるが、看板を作った頃は若かった彼女達ももういい大人になってしまった。今となっては彼女達は結婚して家庭があり子供がいる普通のお母さんなので土日祝日は出勤出来ないのである。なので土日祝日希望のスタッフが来たのは渡りに船だと言える。
こうして、雀荘ひよこに新スタッフとして財前姉妹が加わった。
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