麻雀少女青春奇譚【財前姉妹】~牌戦士シリーズepisode1~

第四局【プロ雀士編】

3巡目◉東京雀士

《能力のことはマナミさんには言わない方がいいかもしれませんね。彼女の能力もだし、私の存在も。知らないままの方が都合の良いこともあります。それに、きっとラシャの付喪神様は彼女に知られることを望んでません。だから力をセーブしているのでしょう》とwomanが言っていたので私はマナミには能力のことを黙っておくことにした。そういえばいつだったかマナミは麻雀のアニメを見ててつまらないと言っていた。手品のようなイカサマで勝つのなんて何も面白いと思わない。と。だからかもしれない、マナミの付喪神が力をセーブしてるのは。womanが言っていた。付喪神は憑いた先の主人が望まないことはできないって。
　マナミは超能力で勝つなんてことは望んでないからあくまでもアシストするだけの力にとどめているのではないだろうか。

（しかし、ラシャの神様だとなると麻雀中はほとんど常に触れてるからずっと見守ってくれてるのかもしれないな。こりゃあマナミは強敵だ……）

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　その頃、スグルは山手線の鶯谷うぐいすだに駅から徒歩10分ほどの所にある雀荘『富士』で働いていた。寮完備で基本給もこの界隈で一番高額なためここに決めた。
　スグルは前職も雀荘店員メンバーだということで即戦力とされ遅番おそばんに配属されることになる。
　雀荘店員は基本的に遅番の方が雀力を求められる。人員多めの早番と違い遅番は最低限の人数で回すため打ちっぱなしで交代要員なしという事になりがちである。しかも真夜中まで麻雀をしに来るのはもうガチ勢しかいないため一瞬たりとも気が抜けない戦いを強いられる。
　例えるなら早番は一般道なのに比べて遅番は高速道路で時速100キロを出し続けているような緊張。なので新人は基本早番からやっていくのだがスグルは経験者だったので人手不足だった遅番に入ってもらうことになった。

「佐藤さん今日からよろしくお願いします。私は遅番責任者の萬屋よろずやです」
「はい！　よろしくお願いします！」
「さっそくだけどあの卓に入ってもらおうと思う。特殊なルールはない普通の麻雀だから、いけるよね？　ちょうどゼロは続行で王牌ワンパイは14牌残しの門前祝儀メンゼンしゅうぎ。流し満貫は流局時成立の役満の包パオやダイミンカンの包ありでやってるから」
「分かりました、では本走入ります」

「本走です。よろしくお願いします」

　後に富士2号店にこの人ありと言われる佐藤スグルの東京雀士としてのデビュー戦が始まった。