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第二局【カオリ覚醒編】

16巡目◉土作り

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 決勝戦が始まる。トーナメント勝ち上がり選手はAグループからは部長の財前マナミと1年生の三尾谷ヒロコ。Bグループからは顧問の佐藤スグルと財前カオリ。

「点数は持ち越しなしでやります。優勝者は第一回優勝として名前を書いて壁に貼ります」
「ちょっと待てよ、おれの部屋だぞ!」
「なら問題ないわよね?」とユウが言う。マナミもニッコリと微笑んで圧力がすごい。
「…はー。まあいいか」
 話はついたので場所決めを行う。
 
東家 佐藤スグル
南家 三尾谷ヒロコ
西家 財前マナミ
北家 財前カオリ

 決勝戦の並びは以上のように決定した。
 スグルは実を言うとチーチャが好きなのでこの勝負貰った! と思っていた。出だしで大きくドカッと仕上げてペースを掴んでそのまま勝ち切るのはスグルの勝ちパターン。それにはチーチャスタートがうってつけなのである。

 だがしかし、開局してみるとスグルの配牌はかなり重かった。
(うわ~…… これテンパイも難しいな。守備的に打とう)そう考えて安全牌候補の字牌を溜め込んで端牌を捨てた所、捨てた牌やその周辺牌ばかり引いてきた。
 完全に裏目。強気に広く構えていればサクサクと有効牌を引き入れてかなり締まった手になっていたのにそれを逃したのはスグルの選択ミスでしかなかった。

(くそ、やっちまった。親番はあれほど押し有利だとこの子達にも教えてきたのに。いつの間にかこの子達の実力にプレッシャーを受けていたのか。弱気な選択を押し付けられたな)
「ツモ。ゴットー」

 まずはヒロコがタンヤオの愚形仮テン500.1000をツモあがりする。その時マナミはダマでピンフドラの2000点を張っていた。待ちは少し切られて少ないし三色手替りも引けそうだったのでダマにしていた手である。
(あー… リーチかけとけば違う結果もあったっぽいな。失敗したかなー)
 もし、ヒロコがタンヤオの仮テンのままリーチをしていたらマナミがきっと追いかけてきたし、アガリを逃してしまったら流局時にリーチ棒を供託しているまま自分の親番が回ってくるので次局は供託の取り合いになるスピード勝負となりじっくり親番をやらせて貰えなくなる未来が予想できた。なのでこのヒロコのダマは非常に冷静な判断であると言える。待ちが少ないからダマというだけじゃない。次局が親番だからダマなのだ。。それはヒロコにとっては当たり前の考えだった。

 ヒロコの祖父は農家なので、作物を作るにはまず土作りからとよく聞かされていた。麻雀もそれと同じとヒロコは理解していたのである。
 勝てる環境を整えて戦う。それが麻雀軍師と後に呼ばれる三尾谷ヒロコの兵法だった。
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