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第二局【カオリ覚醒編】
5巡目◉麻雀への礼儀
しおりを挟む場決め用にまずは東南西北を伏せてかき混ぜて掴み取りをする。ちなみにだが、この方位の順番は季節風の流れを表している。春は東風。夏は南風。秋は西風。冬は北風だ。それを知ってると風牌がドラの時も分かりやすい。
ヤチヨ「西! やった!」
西家スタートあたりは得することが多い。南3局という重要な局面で親になることで一気に勝負を決めることが出来るし南2局までどんなにへこんでいても焦らずにいられるからだ。
ヒロコ「北。ラス親かあ」
北家スタートだとオーラスに親をやる事になるので親のうまみが少し少なくなる。最終局面だから親がどうであれ攻めるしかないと腹を括られる事があるからだ。特にこの麻雀部の面子だと腹を括って勝負に行ける肝の座った打ち手しかいなかったのでオーラスの親は少し嫌だった。ただ、オーラスまで逆転のドラマがあるという面白さはあるから嫌な事ばかりでもない。
ユウ「…南。ホッ。チーチャ苦手だから良かった~」
マナミ「てことは私が起ち親ね! 東1局で終わらせてあげるわ!」
アガリの上手いマナミにはチーチャスタートは絶好のポジションであったし、ユウの麻雀は展開読みを得意とするので動きの一切ない東1局から親をやりたくはない。2人とも自分の引きたいポジションを引いているのは偶然とは言えさすがであった。
牌を混ぜる
ジャラジャラ————
自山を作り
————カシャン!
「「おねがいします!!」」
誰に習ったわけでもない。試合開始の挨拶は子供であれ自然と行う。それはしかし相手に向けているわけでなく牌に。麻雀に言っているのだった。その競技に対する礼儀。勝利への祈り。そして感謝。その心があると必ず挨拶してしまうのが雀士という生き物であった。
サイコロを振って開局。チーチャのマナミが自山の内壁に当てるように2個の小さなサイをヒュ! と投げる。
2と6の8
左8
マナミが左8からの取り出しをスッとノータイムで行って、東1局が始まった。
その取り出しの早さ。それだけで1年生達は少しビックリしていた。なぜなら左8という取り出しは素人なら数を数えて取るような、わかりにくい場所なのだ。それをノータイムで取るなど1年生には無理なことである。経験値の差がこれだけでわかるアクションだ。
まずはマナミが一歩リード。そんな立ち上がりだった。
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