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第一部
第二十三報◉再会
しおりを挟む長谷川春子がニットネクタイを完成させたのは3週間後だった。3色使って作ったからというのもあるが、春子にしては少し完成が遅い。春子は自分がなんとなく不器用になったような気がした。とは言え、時間をかけた分満足するものが出来上がったので春子は久しぶりにテンションが上がった。
ただし、リーグ戦第一節は明日である。ギリギリもいいとこだ。出勤しているかはわからないけど、今日『アクア渋谷』に渡しに行かないと間に合わない。
「春子、出来たんだろ。渡しに行こう」
「うん。でも、いないかもしれないし」
「そんなの行かないとわからないだろ」
「そうだけど待って、じゃあラッピングしてから」
──数分経過
(出来た)
春子は完成したニットネクタイを丁寧にラッピングするとようやく腹を決めた。
「……じゃあ、行きましょうか」
◆◇◆◇
「会長、明日は小林のプロリーグ初日ですが見に行きますか? 観戦は自由なはずです」
「どうしようかな。たしかに明日はたまたま予定ないけどな」
とかなんとか言って、本当は行く気満々なのを上村は知っていた。会長室の卓上カレンダーにしっかりマルをして『リーグ戦』と書いているのを気付かない上村ではない。
(本当に素直じゃないんだから)
「何か言ったか?」
「いいえ。ちなみに私も明日は予定が少ないので応援に行こうと思っておりますが。新しく新宿店に社員希望で入店した研修アルバイトの『狭山学』もいますしね。あ~、私一人だと2箇所見ることは出来ないしなあ。一緒にもう一人、来てくれる人がいたら助かるんですがねえ」
「そういうことなら仕方ないな。ついて行ってやるか」
「ありがとうございます。助かります。(やれやれ)」
◆◇◆◇
「いよいよ明日ね。私の妹の弟子には気をつけてね。かなり才能あるって茜が言ってたからぁ」
「それって氷海恵美プロだよね。96点の。やっぱりそうか、マグレで出せる点数じゃないとは思ってた。ありがとう、肝に銘じるよ」
「ついにプロデビューすか。期待してます。おれに自慢させてくださいね。将来は『若い頃おれはあの小林賢と一緒に働いてた』って自慢して回るんで」
「大げさだよ、ヒロト」
「大げさかどうかは小林さんにかかってます。おれは信じてますよ」
「ったく。……でも、ありがとよ。気合い入ったわ」
神戸緋呂斗に鼓舞されて気合いを入れた。今すぐにでも打ちたい。そんな気持ちになっていた。
「ねえ、今日は人足りてるからもうあがっていいんじゃない? 明日に向けて調整したいでしょ」
「おれたちなら大丈夫ですから、あがって下さい主任」
「ええ? レンタルスタッフの蘭ちゃんを残して主任のおれが先にあがるなんて出来ないよ」
「だーいじょうぶよぉ。責任者っていうことなら私も主任だしぃ~」
「プロデビューすること自体、会社の方針なんですからプロリーグは優先させていいはずっすよ」
「たしかに」
じゃあ、お言葉に甘えてー
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長谷川夫妻が来店した。
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