コバヤシ君の日報

彼方

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第一部

第十七報◉全員の祈り

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「渡辺、例の件。小林に伝えてくれたか」
『連絡しておきました。試験料は店持ちですよね? と聞かれました』
「店持ちでいいと言っておいてくれ」
『わかりました』

────

「ふう、抜け目ないヤツだ。会長、小林はプロ試験の受験を了承したようです」
「よし、容姿と実力とユーモアを備えた小林だ。プロになればスター選手になるだろう。今後は麻雀アクアリウムの看板選手にして盛り上げていくぞ」
「うまくいくといいですね」
「小林ならやってくれるだろう」
「渡辺はいいんですか?」
「まずは1人。うまくいったら増やす。徐々に徐々にだよ。いずれ上村にもやらせるかもな」
「ええ? 私はそんな実力はないですよ」
「ないならつける。そういうものだろ」
「お、会長。残念なお知らせです。日本プロ麻雀師団入団試験には年齢制限がありました。私は試験を受けれません。いや~残念だ」
 残念と言いながら嬉しそうにする上村。
「上村のために新団体でも作るか」
「や、やめて下さい! 冗談ですよね!?」
「さあ、どうだろうな? クククッ」
「会長~!」

 これがきっかけで鈴乃木大河は後に【麻雀真剣師団体TUIKA】という新団体を立ち上げることになるのだが、それはまた別の話。


◆◇◆◇

 小林がプロ試験を受けることはあっという間に店中の話題になっていた。

「小林さんなら受かるよ。がんばって!」
「小林プロかー。いつかなるとは思ってたんだよ」
「小林さんがプロじゃないなら誰もプロとは言えないよね。絶対、競技プロになるべきだよ」

 そんなことをみんな口々に言うが、なぜみんなそれを知っているのかと言えば、ヒロトだった。
 ヒロトは真面目ではあるが、かなりのおしゃべりでもある。そして、誰にも言うなよとかの口止めはしていない。
(仕方ないか。まあ、いずれわかることだ)と、小林は割り切ることにした。ヒロトはなにも悪くない。

 そして、七夕飾りを準備して短冊も用意。願い事書いて吊るしていいよ。と言って店の中央の柱に縛るようにして置いたら奇跡のようなことが起こった。


⦿小林さんがプロになりますように。
⦿小林さんが合格しますように。
⦿小林さんプロ試験絶対合格!
⦿小林さん合格!
⦿小林プロ首位合格!
⦿小林さん合格

 なんと! 全ての短冊に同じ願いが書かれていたのだ。いや、ひとつだけ首位とかいう難しいのもあったけど。それを書いたのはもちろんヒロトだ。合格すれば首位もボーダーギリギリも同じだろうが。しかし驚いた。

「みんな……。ありがとう」

 渋谷店全員の祈りを力にして、来月のプロ試験に小林が挑む!



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