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7.彼の秘密と謎の女性
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「これをどうするのか分からないけれど必要ならあげます」
ランスさんには、もしかしたらこの塊を動かせるかも知れないけれど、私には無理だ。
「本当にいいんですか?」
「はい」
いやに念押しするなぁ。何回か聞かれて頷いたら満足したらしく早速とりかかるようだ。純粋に気になる。
「やってみます」
彼はこの原石、表面は転がっている石の色で中には紫色の小さい突起がびっしり詰まった細長いそれに手をかざした。
しばらくすると変化が。
徐々にアメジストの紫の色が抜けて白く透明になっていき、石の形も崩れ最後は…少量の砂が残った。
「気持ち悪いですよね」
彼の声に私はランスの顔を見た。
何でそんな悲しそうなの?
「俺は異端なんです」
彼は自分の手のひらを見ながら話し出す。
「昔子供の頃、まだこの能力に気づいていなかった時、崖から落ち死にかけた事がありました。側には一緒に遊んでいた年老いたサシル、飼っていた動物がいました」
彼の表情は、悲しさと悔しさだろうか。
「死にかけていた俺は、無意識にサシルの生命力を奪っていた。気がついたらベッドの上で、いつも俺の側にいるサシルがいないのを不思議思い看病してくれていたであろう母に聞いたら母は俺にサシルがいつもしていた首輪を渡しました」
水色の瞳が私を一瞬見た。
「俺は生命力だけでなく全てを、骨すら遺さず奪い取ってしまった。この能力を知るのは、両親とヒュラルだけです」
私は、言葉を選びながら、もどかしさを感じつつランスに話しかけた。
「本当は、ランスの為にそのサシルは役にたってよかったと思ってるよって言えばよいんだろうけど、そんなのサシルにしか分からないから私は言えないかな」
誰にもわからない。
ただ。
「とりあえずランスを助けて損したとサシルが思わないような生き方するとか」
私は人を慰めるとかできない。
「これだけは言えるよ。砂になったのは、少しびっくりしたけど気持ち悪くない」
それに。
「例えばその力で雑草の生命力を少し貰って他の生き物に移せたりできるのかな?」
貰うことが出来るならあげる事も可能な気がする。
「いえ、試した事すらないです」
ランスは困惑しているような表情。
「万が一友達がケガして緊急の時とか近くにある草とかから貰えたら、その貰う量も調節できれば草も枯れないし便利じゃない?」
かなりの間があいた後に。
「そうですね。今度、試してみます」
呟くような声が返ってきた。うん。絶対試してほしい。
「じゃあ力はとりあえず大丈夫なんですよね?ここじゃあ空気も悪いし座る場所もないから下で通信とやらをする?」
「はい」
*~*~*
私は夕方に作って冷蔵庫に冷やしておいた紅茶ゼリーの用意をしはじめた。彼はソファーに座り腕輪の操作しているようだ。
「私がいない方がよいなら部屋にいるから」
ソファーに座っているランスに声をかける。
「いえ、大丈夫です。ただ、少し部屋を暗くしてもいいですか?」
「いいけど。こうかな?」
キッチンの部分だけ照明を残し電気を消した。
「ありがとうございます」
彼は、そう言い終るとなにやら腕輪に手をあてブツブツと呟き始めた。
私は、それを眺めながらお湯を沸かす。紅茶ゼリーだと飲み物どうしよう。そんな事を考えていたら、ランスさんの腕輪が急に光を放ち始めた。
その光の中に怒鳴り声と同時に人が現れた。
「※※※!」
そこには、真っ青な髪に真っ赤な瞳の美女が映し出されて彼女は何やら興奮しながら叫んでいた。
これ、テレビ電話だ。そしてその美人の人は?
微妙なタイミングでお湯が沸いた事を知らせるヤカンのけたたましい音が暗い部屋に響き渡った。
ランスさんには、もしかしたらこの塊を動かせるかも知れないけれど、私には無理だ。
「本当にいいんですか?」
「はい」
いやに念押しするなぁ。何回か聞かれて頷いたら満足したらしく早速とりかかるようだ。純粋に気になる。
「やってみます」
彼はこの原石、表面は転がっている石の色で中には紫色の小さい突起がびっしり詰まった細長いそれに手をかざした。
しばらくすると変化が。
徐々にアメジストの紫の色が抜けて白く透明になっていき、石の形も崩れ最後は…少量の砂が残った。
「気持ち悪いですよね」
彼の声に私はランスの顔を見た。
何でそんな悲しそうなの?
「俺は異端なんです」
彼は自分の手のひらを見ながら話し出す。
「昔子供の頃、まだこの能力に気づいていなかった時、崖から落ち死にかけた事がありました。側には一緒に遊んでいた年老いたサシル、飼っていた動物がいました」
彼の表情は、悲しさと悔しさだろうか。
「死にかけていた俺は、無意識にサシルの生命力を奪っていた。気がついたらベッドの上で、いつも俺の側にいるサシルがいないのを不思議思い看病してくれていたであろう母に聞いたら母は俺にサシルがいつもしていた首輪を渡しました」
水色の瞳が私を一瞬見た。
「俺は生命力だけでなく全てを、骨すら遺さず奪い取ってしまった。この能力を知るのは、両親とヒュラルだけです」
私は、言葉を選びながら、もどかしさを感じつつランスに話しかけた。
「本当は、ランスの為にそのサシルは役にたってよかったと思ってるよって言えばよいんだろうけど、そんなのサシルにしか分からないから私は言えないかな」
誰にもわからない。
ただ。
「とりあえずランスを助けて損したとサシルが思わないような生き方するとか」
私は人を慰めるとかできない。
「これだけは言えるよ。砂になったのは、少しびっくりしたけど気持ち悪くない」
それに。
「例えばその力で雑草の生命力を少し貰って他の生き物に移せたりできるのかな?」
貰うことが出来るならあげる事も可能な気がする。
「いえ、試した事すらないです」
ランスは困惑しているような表情。
「万が一友達がケガして緊急の時とか近くにある草とかから貰えたら、その貰う量も調節できれば草も枯れないし便利じゃない?」
かなりの間があいた後に。
「そうですね。今度、試してみます」
呟くような声が返ってきた。うん。絶対試してほしい。
「じゃあ力はとりあえず大丈夫なんですよね?ここじゃあ空気も悪いし座る場所もないから下で通信とやらをする?」
「はい」
*~*~*
私は夕方に作って冷蔵庫に冷やしておいた紅茶ゼリーの用意をしはじめた。彼はソファーに座り腕輪の操作しているようだ。
「私がいない方がよいなら部屋にいるから」
ソファーに座っているランスに声をかける。
「いえ、大丈夫です。ただ、少し部屋を暗くしてもいいですか?」
「いいけど。こうかな?」
キッチンの部分だけ照明を残し電気を消した。
「ありがとうございます」
彼は、そう言い終るとなにやら腕輪に手をあてブツブツと呟き始めた。
私は、それを眺めながらお湯を沸かす。紅茶ゼリーだと飲み物どうしよう。そんな事を考えていたら、ランスさんの腕輪が急に光を放ち始めた。
その光の中に怒鳴り声と同時に人が現れた。
「※※※!」
そこには、真っ青な髪に真っ赤な瞳の美女が映し出されて彼女は何やら興奮しながら叫んでいた。
これ、テレビ電話だ。そしてその美人の人は?
微妙なタイミングでお湯が沸いた事を知らせるヤカンのけたたましい音が暗い部屋に響き渡った。
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