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12.私の力
しおりを挟む「寒いですよね。気温を下げると進行が遅くなるので。これを」
「あ、ありがとう」
ラスティ君は、肩に自分のマントを掛けてくれた。遠慮したいところだけど、本当に寒くてすぐに体に巻きつけた。
ラスティ君は横たわる女の人に近づいて話し出す。
「師、ヴィセル・ラナ。ラナ先生に僕は、魔力のコントロールを学んでいました。ユイの世界とは違い我々は魔力を生まれながらに持っています。それはお祖父様から説明されたかと思いますが」
私は少しづつこちらの世界の話をラスティ君と会ったあと世間話をするように帰りがけにラグナスさんと話をしている。
でも、私が話すのは講義の愚痴など役にたたない話ばかりだけど。その時に魔力については、さわりだけ聞いた。
「うん。人によって力の差はあるけど絶対持っているって。あっ、でもコントロールって」
確かラグナスさんが、魔力が強い場合は幼少期にコントロール出来るようにさせるって言っていたような。
「そう。本来なら幼少期にコントロール出来るようになるのが普通だ」
ラスティ君は左手の手のひらを上に向け。
「えっ…黒い火?」
前に庭で見たのは赤い炎だった。
「これが、僕の本当の色です。不気味ですよね」
「不思議なだけで怖くないよ。それより手、熱くないの?」
そっちのほうが気になるよ。
「大丈夫ですよ」
あっ、またなんか微妙な顔をされたので、話を戻すために聞いてみた。
「で、それが何の関係があるの?」
「この力は特殊で今のところ我が家の血筋のみに現れます。勿論皆ではないのですが、私の場合は桁外れな力で器に入りきらないほどで。只でさえこの力は扱いづらいと言われている力の為、未だに感情が強くゆれると暴走し…」
ラスティ君は、横たわる先生を悲しそうに見ていた。
「ラナ先生もまた魔力が強く、そのおかげで直ぐに死には至らなかった。この状態なのは、僕の魔力に逆らう為に身体が対抗しているからなんです」
「ラスティ君の力が強くてもう無理なの?でも私を連れてきたっていう事は何か…」
さっき私が、ラスティ君の腕に触って治った事を思い出した。
ラスティ君と目が合う。その表情は嬉しさなんて欠片もない。
「ユイ。僕は、いえ俺は貴方を利用しようと、その優しさにつけこもうとしています」
「えっ?でもただ触れるだけだよ?」
何がそんなに深刻なんだろう。
「師が完治すれば、貴方の存在を公にせざるおえなくなってくる。俺の力が特殊なのは、ユイが来る裂け目とも深く関係しているからなんです。わかりますか?俺の力をユイは、吸収または無にできるんです」
「う~ん。とりあえずは、決めた」
私は、ラスティ君の先生の身体に触れていった。
「ユイ!」
「寒すぎて限界だし、ちゃっちゃと終わらそう!それに先生一人でずっとこんな暗い場所に可哀想だよ」
私はせっせと、先生に触れていった。
この時の選択は、先生を治した事は今でも後悔していない。
でも、後のちに究極の二択を迫られる事になるなんて、その時の私は、ちっとも気づいていなかった。
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