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10.解放した私
しおりを挟むとうとう全部話をして見せてしまった。
私は、魔物をそれこそ数えきれないほど砂に変えた。そして罪悪感は常につきまとっていた。共存できないのかなとか色々考えたけど、彼らは共食いもし、会話にならなかった。
ただ一方的に魔物からの思いだけが心に刺さり続けた。
かといって、デュイさん達に嫌われたくはなかった。なにより私は、それしか魔物を殺すことだけが役にたてる事だった。
どっちつかずの私が一番汚くて醜い。
なのに、デュイさんは、苦しそうな悲しそうな顔をした後、笑い、この子達が孵れば私も解放されると言ってくれ私の体調まで気にしてくれた。
湖の光でデュイさんの新芽みたいな明るい緑色の瞳が更に綺麗な色になり金色のクセのない前髪は、さらさらと揺れている。
この人は、優しすぎるよ。
彼の瞳をみているのが、なんだか辛くなり私は湖に手を浸し歌った。
私は、この世界に来て言葉が話せず、勿論読めなかった。そこで子供向けの歌や絵本を勉強がわりに沢山歌い読んだ。
怖くないよ
大丈夫
皆一緒だよ
だから出ておいで
空はとても広くて
吹く風は強いときもあるけれど
優しい風も吹く
海は広くて時には高い波が押し寄せてくる
でも穏やかな音も届けてくれるから
皆いるから大丈夫
だから出ておいで
青白い光は強さを増していく。
パリン パリン
聞こえるはずのない音が、ガラスの割れるような高い音が聞こえてきた。
「危ない」
デュイさんに後ろから抱えこまれ、周りに防御の膜がはられた。
次の瞬間、湖の水が膨れ上がり水柱が出来上がった。そこからいくつもの光る蝶が一斉に飛びたっていく。
あまりにも強い光で空が、森が照らされた。まるで昼間のような明るさだ。一瞬でそれらはおさまり、また暗闇に戻った。
私は、まだ動けなかった。
雲が動き水色のきれいな月が顔を出した空を見上げたまま。
「凄かった」
つい、言葉が漏れた。
「凄いのは貴方ですよ」
すぐ頭の上で声がした。
私は、まだ抱きしめられていたことに気がつき急に落ち着かない気持ちになった。でも、そんな私にまったく気づいていないデュイさんは、空を見上げたまま。
「ベイなら名を知っているかもしれない。あれは、ただの生き物ではない。おそらく強い浄化の力を持つ神獣に近い生物です。空気がとても浄化されたのがわかりますか? 」
わからないので首を横に振った。
「そうですか。ああ、苦しかったですね。失礼致しました」
「あの?」
抱え込まれて身動きがとれない状態に気づいてもらえたのはいいけれど、デュイさんの腕はそのままだ。
「目を離すと何をするか分からないので、このまま屋敷に転移します」
「えっ、うわっ」
一瞬で今では見慣れた玄関に着いていた。
「「ミオリ様!」」
「大丈夫ですか?」
「ああ、こんなにお身体を冷やして!」
「おーい! ミオリ様が戻られたぞ! デュイ様もご一緒だ!」
「あっ! デュイ様! ミオリ様に何かしてませんよね!?」
お屋敷中の料理を作ってくれている人まで総出で出迎えられた。
「人気者ですね。私には随分冷たいようですが」
デュイさんが呆れたような口調でやれやれと呟き。
「かなり疲労していると思いますが、少しだけ皆につきあってあげて頂けますか?」
よくわらないお願いをされた。
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