飛ばされた私は

波間柏

文字の大きさ
上 下
7 / 13

7.現在の私は

しおりを挟む

「言葉だけならいくらでも言える!それに好きじゃなくても」


やっと息ができるようになって、でも話したくて。キスなんてある程度の知り合いならできちゃうんじゃないの?……私は、嫌だけど。

それにさ。

「このタイミングで言われても同情にしか思えない」
「そうですね」

ほら、やっぱり同情なんでしょ?
何でそんな風に背中を撫でるの?

それじゃあまるで…。

「ミオリは言葉を発しないと力を使えない。だから機会はありましたよ。口をふさぎ腕を拘束すればいつでも。身体だけなら手に入った」

 上を向かされ、刺さるような視線が痛い。

「私が欲しかったのは、欲しいのは身体だけじゃない。気持です。両方ないと意味がない」
「なら、なんで今?」

刺すような瞳が一気に弱くなった。泣きそうな顔に。

泣きたいのは、泣くのは私じゃないの?

「今日は何日ですか?」
「えっ?」
「今朝、食べた物は覚えていますか?」
「食べた物…」
 
立て続けに問われて、なんだか混乱する。今日は何日?

「それに今は夏じゃない。私の服が分かりますか?」

 彼の砂の上に広がっている服は色が黒い。

夏服はもっと明るい色だ。

「…夏じゃない?」
「今は、秋ですよ」

秋?

「ミオリ。貴方は、もうずっとろくに食べも、眠ることすらしていない」

私が?

「自分を見てみろ。もう、精神だけじゃない。身体も限界だ」

 言われて、掴まれた腕を見ろと前にだされた。

私の、私の腕も、見下ろせば足も、まるで骨に皮がついているだけのようだった。

「これ、これが私?」
「そう。このままではどうせすぐに終わりを迎える。だから選べ。今すぐに」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢は、元敵国の人質になったかと思ったら、獣人騎士に溺愛されているようです

安眠にどね
恋愛
 血のつながらない母親に、はめられた主人公、ラペルラティア・クーデイルは、戦争をしていた敵国・リンゼガッド王国へと停戦の証に嫁がされてしまう。どんな仕打ちを受けるのだろう、と恐怖しながらリンゼガッドへとやってきたラペルラティアだったが、夫となる第四王子であり第三騎士団団長でもあるシオンハイト・ネル・リンゼガッドに、異常なまでに甘やかされる日々が彼女を迎えた。  どうにも、自分に好意的なシオンハイトを信用できなかったラペルラティアだったが、シオンハイトのめげないアタックに少しずつ心を開いていく。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません

黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。 でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。 知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。 学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。 いったい、何を考えているの?! 仕方ない。現実を見せてあげましょう。 と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。 「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」 突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。 普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。 ※わりと見切り発車です。すみません。 ※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

処理中です...