中途半端な私が異世界へ

波間柏

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49.本番からのサプライズ

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今日が御披露目の日。

 今、私は姿見の前に立っている。この日迄に何回か他国の刺客がきたりしたけど私は無事だ。

 周囲にはマリーさん達とミリーさんのお抱えの仕立て屋さんがいて賑やかで。

「お髪どうしましょうか」

 やっぱりボブだと結いづらいかな。

「今日1日だけ長くしてみますかね」
「えっ?」

 ベルさんが声を発する間に私は腕輪に念じれば、金の光が私を包み眩しくて目を閉じた。

 光が収まり目を開けるとともに、マリーさん達の声が同時に部屋いっぱいに響く。

「「まあ!」」
「素敵ですわ!!」

 私の髪はお尻くらい迄伸びた。こんなに長いのは人生初である。

なんかうっとおしい。

 そんな思いとは逆に周りのテンションは一気に上がっていた。

「これなら飾りも大丈夫ですわ!」
「見事な色!」

もう好きにして。

「お迎えに上がりました」

 振り返ると今日は3人勢揃い。そして3人とも固まっていた。

 おかしいな。私の中では人生で1番綺麗に仕上げてもらった。つい首を傾げてしまう。

「カエデちゃん、やれば出来るじゃん~」

 間があいたのは気のせいだったんだろう。ラウさんなりの最大の賛辞と受けとります!

「とても綺麗です」

 キラキラのシャル君に誉められた。ちなみにルークさんは、顔に手を当てている。

そんな酷い?!

ちょっとへこみます…。

 馬車で移動した場所は街の中心だ。街は広場を中心に放射線の様に広がっている。ひな壇席もあり、ステージのよう。

 この場所は、お祭りの時などイベントの時に活躍しており普段はカップルの憩いの場らしい。大昔は祈りを捧げたりしたと神官長さんから聞いた。

「なんか、凄くない?」

 驚いた事に広場は人で埋め尽くされていた。

…緊張で気持ち悪いぞ。

「大丈夫だ」

 不意に後ろから声をかけられる。ルークさん達、マリーさん達までいる。

「絶対大丈夫ですわ」

 マリーさんがそう言いながらそっと手を握ってくれた。弦楽器の音が鳴り、周りは静まる。

さあ出番だ。

「いってきます」

私は足を踏み出した。




***



 緩やかな弦楽器の音が鳴り響く。

 私は、神官長に踊りとともに教わった「幸せの呪文ですよ」という昔の言葉を呟きながら舞う。

中心から円を描くように。

 最初より後半の足元がとても複雑だ。余裕なんてないのにふと上を見上げれば青空が広がっている。

 そういえば、私は自分の世界にいた時、最近、空なんて眺めた事がなかったかも。

 朝は早いし、帰りは学校の図書室で実験の考察など調べていつも夕方。

 建物が高くないからか、空がとても広く見える。

あぁ、きれい。

この世界は、本当に綺麗だなぁ。

 くるりと回ると私の浴衣の上にもう一枚着ている羽織が優雅にひるがえる。

 浴衣は淡いピンク。上に羽織るのは白。作りは同じだけど袖と裾が長く広がる作りにした。

 帯は他の淡い色とは対照的な赤。耳の横でシャラリと棒の鈴とは違う音が鳴る。頭には、金の簪が4本。

 豪華なのを嫌がる私にミリーさんが、もう使ってないからと自分のピアスとネックレスをリメイクしてくれた。

簪は細い繊細な鎖が繋がりあい、ペリドットのようなグリーンの石がキラキラ日の光で光るのが視線の端に入る。気分が良くなってきたせいか、自然と身体から金の粒が。

どうせなら桜の形がいいなぁ。

願い変化させた。

 音楽が盛り上がりやっと終盤に入った。

一番外側の円の最後を繋げる為大きく棒を振り上げ地面を突く。

 瞬間、何もなかった地面に魔方陣のような物が金の光と共に浮き上がる。

「これ、私が描いたのだ」

 次に眩しい光の洪水。柱のように縦に吹き上がる。

「えっ」

 そこには夢で会っていたより、ずっと大人びた姿のヴィラが浮かんでいた。


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