中途半端な私が異世界へ

波間柏

文字の大きさ
上 下
48 / 72

47.ルークSide

しおりを挟む
 早朝ラウと勤務を交代後騎宿舎へ戻る前に寄り道をした。

 気に入っている庭の隅のベンチに転がり、カエデと出会ってからの事を思い出す。

「俺は、何をやっているだ?」

無意味な言葉が口から出た。

 一昨日は泣かれ、昨日は避けられ。愛想が良くないのは自覚している。

 ただ叩き込まれた礼儀は身につけているつもりだ。

 実際夜会など出れば自分で言うのもなんだか、俺の容姿は悪くはないらしく色々寄ってきた。

 不思議と辺境伯の次男にもかかわらず、戦での働きもあり尚更縁談は増えていく。

 しかも特別処遇で副団長の打診もあったが、全て断った。

 俺は、香水臭い女性も、書類が増えるだけの地位も興味がない。

 確かに、付き合いに関しては一通りは遊んだ。

ただそれだけだ。

 欲しいと思ったのは、カエデが初めてだった。


 何故こんなに惹かれるのか? 会って間もないのに。自分でも不思議で仕方がない。

言われるほうも困るだろう。

 彼女が馴れていないのは分かっていたが、本気で抵抗してこない事で余計抑えられなくなる。

 いやに構える時があると思ってはいたが、向こうの世界で男に許可なく触られたと言っていた。

よほど嫌だったんだろう。

 カエデは、自己評価が低く隙がありすぎる。見る奴によってカエデはとても庇護欲をそそる。

 逆に傷つけたくなるという馬鹿もいるだろう。

 いまや彼女の人気は上がるいっぽうだ。シャルには気付いていたが、ヒューイまで。他の奴も今日で何人かいるだろう。

嫉妬した。

他の男に触れないで欲しい。

 自分は汚れて、相応しくないのにそう思ってしまう。

 戦を含め何人切って捨てたか覚えていない。

殺るか殺られるか。

 カエデがあの戦場にいたら、どうやっていたか。おそらくは敵味方関係なく傷を癒し、カエデの身体は負荷がかかり過ぎ壊れただろう。

 カエデが帰りたがっているのも知っている。

だが、諦められそうにない。

 また聞きそびれたが話に出るルークはカエデの何なんだ?

まぁいい時間はまだある。

 俺は仮眠をとる為騎宿舎へ重い足取りで向かった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

波間柏
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

余命七日の治癒魔法師

鈴野あや(鈴野葉桜)
恋愛
王太子であるレオナルドと婚約をし、エマは順風満帆な人生を送っていた。 しかしそれは唐突に終わりを告げられる。 【魔力過多症】と呼ばれる余命一年を宣告された病気によって――。 ※完結まで毎日更新予定です。(分量はおよそ文庫本一冊分) ※小説家になろうにも掲載しています。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました

葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。 前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ! だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます! 「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」 ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?  私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー! ※約六万字で完結するので、長編というより中編です。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする

楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。 ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。 涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。 女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。 ◇表紙イラスト/知さま ◇鯉のぼりについては諸説あります。 ◇小説家になろうさまでも連載しています。

処理中です...