中途半端な私が異世界へ2

波間柏

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4.好奇心と驚きと

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きました。再会の口づけ──、ではなく、彼は人差し指を立て静かにとゼスチャーをした。

 とりあえず従う方が良いなと判断した私は声に出さず頷いてみせた瞬間、ルークさんは、右手から球体を作り出し転移へ投げた。

 手から生みだし投げる迄の速さが超人技である。

 それはボフッと音を立て天井に当たった。

 おぉ、布が破けてない。力加減も素晴らしい。

 そう思っていたら、いつの間にか彼は剣を持つと入り口に移動し出入り口である布を勢いよくはね上げた。

「お前達、何をやっている?」
「「えっと、報告などを…」」

 そこには、懐かしいザルグさんや猫耳ヒューイ君、あと知らない騎士さんが2名程いた。

「悪いが期待している事は何もない」

低い低~い、ルークさんの声。

これは、ヤバい。

 私でそう感じるという事は、皆は更に不味いと感じたはず。

「えっと、急ぎではないので後程!」

 騎士さん達は、急いで逃げようとしたが。

「待て」

ピタリ。

 皆の動きが息ぴったりに止まり、そろそろと此方を振り向く。

ルークさんが怒る為に呼び止めたのかと思ったけど違った。


「上のは?」
「ラウニーが追ってます」
「ならいい、行け」
「「はっ!」」

 天井に人がいてラウさんが追っている?

私が来たせい?

キーン

 防御をかけたであろう音が微かにした。

「楓のせいじゃない」

 なんで考えてる事がわかってしまうんだろう。

 そう疑問を浮かべているうちにベッドにゆっくり押し倒された。

 上にルークさんがいるのに重たくないのは加減してくれているんだろうな。

 ルークさんの、まだ濡れている髪が私の首筋に触れる。

「あの…?」

 ドキドキのシチュエーションなはずなのに、耳元で囁ささやくルークさんの口から出る言葉はムードの欠片もない、真面目な話だった。

「今回の目的は、デュラス王子が成人された祝の席へ出る為に宰相がガインの城へ行く。だが、それだけじゃない」

 だよね。兵士さんの数が多すぎる。

「最近、影からの連絡が途絶えた」

 ルークさんは、再びネックレスを手にとると今度は何かを呟いた。その直後、一瞬だけ青く強いフラッシュのような光が現れ、石の中に消えた。

「楓を連れて行きたくない」
「邪魔なだけだって知っていますよ」

分かってるよ、そんな事。

 でも、このタイミングは私の意思じゃないから!

「違う。危険な目に遇わせたくないだけだ。いや、それだけじゃない。ガインの王子は、楓をひどく気に入っている」

 うーん、珍獣扱い枠だと思うけど。

「楓は気がついていないが、他にも何人かの男が楓を欲しがっている」

いやいや!

「それはない」
「痩せたな楓」

やっぱり分かるか。

 学校を卒業してから自分でいうのもなんだけど結構頑張っていた。

「前に私の姫は太ったほうが良いと言ったはずだが?」

 こっ恥ずかしいセリフを吐き少し起き上がったルークさんが私の頬に触れてきた。

「っ」

 頬にあった大きな手は鎖骨をたどりブカブカの服の衿元に下がる。

思わず身体が揺れた。

「俺が今、何を考えているか分かるか?」

青い目が私を強く見つめる。

なんか……ギラギラしてます?

 彼の手は止まらず下がっていきボタンが外されていく。

「できるなら、屋敷に閉じ込め誰にも会わせず誰にも見せたくない」

 えっ…そんな人だったんですか?

「自分がこんなにも独占欲が強いとは思ってもいなかった」
「あっ」

 胸元に湿った感覚のあと鈍い痛みがきた。 

「虫除け」

 そう言いルークさんは、私のシャツのボタンを上までキッチリ留めなおしベッドから立つと、私にタオルケットのような物を掛けてくれた。

「俺は、もう少し片付けてから寝るから先に休め」

そう言い頭を撫でられた。

 つい離れていくその手が寂しくて手をひっぱってしまった。

「ご、ごめんなさい、つい」

 あー、なにやってんだ私。慌てて離すも、ルークさんにため息をつかれた。

これは絶対にウザガラレタ。

と、へこんでいたら違った。

「これでも我慢しているから煽あおらないでくれ」

 おでこに一つ落とされた。

「お休み」
「…お休みなさい」

駄目だ。
破壊力があり過ぎる!

 私はタオルケットを頭までかぶり見悶えた。




「この状況で寝れるわけがない」


 ルークは椅子に座り、肘をつきながら爆睡している楓を眺めながら呟いた。



*~*~*


「快晴だぁ」

 あんな刺激的な夜だったのにも関わらず、いつの間にか寝てしまった私は、爽やかな朝をむかえた現在、馬に似た動物にラウさんと乗っている。

 そして、お尻が痛くなってきて愚痴りそうになった頃。

「見えてきたよー」

 背後にいるラウさんが教えてくれた。だがしかし、そのお城は、以前と違っていた。

「何、あれは」

 お城は、蛇のようなドス黒い物が巻きついていた。

鳥肌が立ち、背中がゾワゾワしてくる。その不快感さがお城に近づくにつれ増していくのだ。

 私はラウさんにたまらず話しかけた。

「ラウさん!」
「ん?」
「お城に巻きついているの何ですか?」
「何も見えないよ?」
「え?!」

私が変なのか?

 そう思ったら、ラウさんの話はまだ続いていた。

「ただ、嫌な感じはするし、こいつが珍しく怯えている」

 馬に似た私達が乗っている子を指差す。

「……お城に着いたら一度寝てもよいですか? できるだけ早く会わないといけない気がします」
「──了解」

 それだけでラウさんには通じた。

 とりあえず皆にそれぞれ強い防御の膜を張る。

ヴィラに会わないと。

 鳥肌がたっている腕をさすりながら既に私の頭の中ではガンガンと警報が鳴っていた。

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