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42.言葉にするならハッキリと
しおりを挟む「久しぶりって、フブッ」
「あ、貴方はいつもヘラヘラして!私達が、皆がどれだけ心配したか分かっているのですか?!」
ギュナイル、身長差と力を考えてくれるかしら。このままだと圧迫死いきなんだけど。
「ギュナイル、カナが苦しそうだ」
ランクルの声がため息混じりに聞こえ呼吸は確保された。
「なんで泣いてんのよ。ほら、ハンカチ」
腕から開放され見上げれば、本気で滝の涙を流すギュナイルにちょっと驚いた。
「イケメンは泣き顔も綺麗でお得ねぇ」
「笑い事じゃないですよ!」
だってさ。
「泣くほど心配してくれる人が私にいるなんて嘘みたいなんだもの。ランクル、目がまんまるだよ」
表情に変化はないように見えるけどギュナイルの少し後ろにいる彼からは、驚きが伝わってきた。
「職種にもよるのかもしれないけど、ぼんやりと感じていたのよね」
──あぁ、私が死んだ時に泣いてくれる、本当に悲しんでくれる人なんているのかなって。
「心配や干渉されるのがもの凄く嫌だったのに」
一人は楽だから、自分の分だけ稼げばいいわと。
「私、君達やこの世界の人達の影響で特に精神が弱くなったわ」
そう思う反面、コップに水が満タンになったような違う何かが満たされ強くなったとも思う。
「我々のせい?」
「今のは忘れて。あ、最初に言っとく。病気、完全には治らなかった」
春の暖かさが一気に真冬になった。静か過ぎて風の音がいやに大きいな。
「陛下は完治したと」
ギュナイルの顔はいまや真っ青だ。まぁ予想はついていたけど。
「過保護にされるのも、まして同情されたくなかったから公には完治としたの。あ、嘘ではないのよ。今のとこは健康体よ。ちょっと!気配消して後ろからこないでよ」
ランクルに抱きかかえられそうになったので寸前で避けた。
『罰なんて与えないから。メリル様、目をそんなに釣り上げないで。美人が台無しになりますよ』
メリルちゃんの激怒した姿に震えて顔を上げられなくなった医師に先生のせいじゃないと我慢強く話しかけ、落ち着いた頃合いで尋ねた。
『ちなみにどれくらい生きられます?』
心配され過ぎるのは正直嫌だった。
だけど嘘はつきたくない。
「短くて五年、長くて十年生きられるらしいわ」
先代のお気に入りだったという小さな庭には小手毬に似た花が咲き誇り、その小さな花びらが風に舞った。花と土、お日様の香りをゆっくりと吸い込む。
「五年から十年とは、随分あいまいだな」
「うーん、この世界の病と似ているようで違うみたいよ。とりあえず、お茶をセッティングしてくれたみたいだから座って飲」
「何故そんなに冷静なんですかっ?!ランクル!貴方もです!」
拳を震わせたギュナイルは、怒りながら再び泣いていた。
「そりゃあ怖いわよ。でも、あと数ヶ月で確実にあの世行きだったのが、年単位で伸びた。しかも、ほぼ苦痛はないって言われたのよ」
充分過ぎると思うの。
「そこで我儘言って悪いけど、言ったように過保護は止めてほしいの。自由にさせてもらえる?」
哀れに見ないで。
可哀相な子じゃないのよ私は。
そんな顔させる為にこの場にいるわけじゃないの。
「条件付きでよければ、正式に二人と結婚する」
うーん、上から過ぎるか。
「ランクル、ギュナイル。君達となら一緒に暮らせる気がする。あの三人でご飯食べるのとか。またしたいな」
この気持ち、伝わる?
「私と結婚してください」
やっぱり言葉にするならストレートが一番よね!
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