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7.私、15 歳。学生しんどい

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「ねぇ、ロイ。知ってる?陰キャは所詮、陽キャにはなれないのよ」

 帰宅した私は、気分転換も兼ねて庭のガゼボで夕日を眺めながら酒ではなく白湯を一口飲んだ。たまに飲みたくなるのよね。

「今更どうしたんすか?」

 私が言葉を教え込んだお陰で今や説明せずども理解する彼は貴重な存在である。

 たが、この私の気持ちまで理解はしきれていないようね。

「教えてあげる。集団ってホンっとメンドイ」

 授業では個別もあるものの、グループ行動も多いし食事も何人かで食べている。強制ではないけれど放課後はお菓子教室から古代語同好会などがある。

「あれもグループ、これもグループ」

 あぁ、私は集団行動が苦痛な人間だったのだ。

「お嬢、今更何を言ってるんすか?」
「ロイだって皆とキャッキャなんて向いてないでしょう? コラッ、ミミズをつつくのは止めなさい。というか、そのヤンキー座りも改善しなさいよ」

 こんなにも鬱な気持は久しぶりだけど、仕方がないよね。

「まだ入学してやっと一年」

 卒業まで何年あるのよ。しかし無駄に長い脚ね。腰も締まってるし得な骨格している。背後にいるロイをちらりと見ながら何かが引っかかる。いや閃きだ。

「ロイって飛び級しているわよね?」
「……だから何なんっすか?」

 そんなあからさまに嫌な顔をしなくてもいいじゃないの。まぁ、理解が早いのは助かるけど。

「私、飛び級する事にした」

 え?もう一回言って?と顔に書いてあるが、聞こえていたはずなので二度は口に出さない。

「本気だからね。うしッ!努力あるのみ!」

 ついに表情を作る事を放棄した彼は、同情たっぷりな視線を暫く私に送り続けた。



✻~✻✻~✻


「お嬢は、本気だったんすね」

 前期が終わり後期の試験の結果は学年一位。

「目立ちたくなかったから頑張らない生活をしてきたけれど、今回ばかりは真面目に取り組んだわ」
「そのわりに嬉しそうじゃないっすね」

1位に上りつめた気持ちはどうか。

「まさに動物園や水族館の生き物」

 クラスメイトだけではなく、隣のクラスからも視線を浴びている。

「お嬢、水を差す感になりますが、一度や二度だけで飛び級は正直キツイっすよ?」

 珍しくロイが本心から気遣いをみせているのが伝わる。

「勿論、充分理解しているわよ」

 世の中、頭の良い奴なんて幾らでもいる。その中で生き残るには、自分を売り込むやり方が重要である。

「だから面接の際に、かつての領地改革の計画書を提出したわ」

 いや、過去形ではなく現在進行系である。

「我が領土は鉱山が主だった。けれどいつかは枯渇する。それ一つに頼るのは危険すぎた」

 そう、危うすぎた。ならばどうする?

「ないなら作れば良い」

 幸いにも海に面し気候は悪くなかった。まず細々とやっていた漁業は組織を作り、海の近くには加工する為の工場を。海が駄目になった場合も想定し内側では農業を発展させていく。それに伴い先を見据えた人材確保の為の育成が必須となり学校を増やした。でも、ソレだけでは足りない。

「せっかく馬力がある子達を育てても流出しては全く意味が無い」

 このノウェールで働きたい、暮らしたいと思わせないと。

「まぁ、十年、二十年かけての計画よ」

 急ぎすぎても空回りする。慎重にかつ大胆に。

「資金は」
「うーん、ご先祖様の品々は大切に活用したとしか言えない」

 アレは代々受け継いだ宝珠、これは下賜された剣。

「まぁ、物は使うものだし?」

 ダンスホールくらいだった宝物庫は最終的に小部屋くらいになった。

「で、今日の午後に学長から渡されたのだけど」

ペラっとした一枚に書かれていたのは。

「最終学年に来年から。即ちあと一年耐えれば自由よ!」

この達成感、半端ない。

 私は、努力は必ず実るとは思っていない。それだけに今回ばかりは嬉しさが爆発である。

「あと一年っ!うしッ!」

 ただ、レイラはすっかり忘れていた。最終学年には自分の婚約者が在籍しているという事を。



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