会長様の受難

はる

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風紀委員長襲来

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八城に会った後は何事もなく教室に着いた俺は、ガラリと教室の扉を開けた。

「会長様がいらっしゃった!!!」
「今日もとてもとてもかっこいいです…」
「ああ……今日こそ抱いてください会長様!!」

途端にざわつく教室を一瞥してから俺は自分の席に座った。前の席の奴が振り返り、俺はそいつと目が合った。その瞬間俺の顔が盛大に顔が歪む。

「…俺に何の用だ風紀委員長様。」

こいつは柊 大我。風紀委員長であり、俺がこの世で1番嫌いだと声を大にして言える男だ。柊は俺を睨みながら口を開いた。

「……天堂。親衛隊の奴らをきちんと管理しろと何度言ったら分かる。お前が来る度に煩くて仕方ない。」

「なんでこの俺がわざわざ親衛隊の管理なんてしなきゃならないんだよ。俺が親衛隊嫌いなの知ってんだろ。」

「俺が知らないとでも思ったのか?お前が親衛隊を性欲処理に使っていることくらい知っている。都合のいいように使ってるくせに管理しないというのは無責任だろう。」

最悪だ。ほんっっとうにイライラする。何が性欲処理だよ何が!!!俺は1度たりとも親衛隊に手を出したことなんてねえよ!!と今ここで叫んでやりたい。しかしノンケであることは知られてはいけないのだ。特にこいつには1番知られたくない。
なんで今日はこうも俺の琴線に触るような奴らばっか絡んでくるんだ。

「俺は抱いて欲しいと頼まれたから抱いてやってるだけだ。そもそもお前の言うことを俺がわざわざ聞くとでも?」

そう言って俺は今日一の作り笑顔で微笑んでやった。途端に周りから歓声が上がる。もうお前と話すことなんてない。俺の視界から消えろ今すぐに。柊はそんな俺を見てため息をついた。

「お前は本当に……精神年齢が些か低すぎるな。はあ、こんなのが生徒会長だなんて先が思いやられる。」

「…は?」

俺だってやりたくて生徒会長やってる訳じゃないんだが?……いちいち癪に障る奴だ。もう付き合ってられない。
俺は勢いよく席を立って教室を出た。親衛隊の奴らが荒々しい仕草も素敵、なんて呟いていて更に気分が悪くなる。

「おい、どこに行くつもりだ。」

「お前のせいで気分悪くなったんだよ。今日は授業には出ない。着いてくるな。」

生徒会と風紀には授業免除制度というものがあって、授業に出なくても良い決まりとなっている。柊のせいでイライラした気持ちを沈めようと思って教室を出たのに、反吐が出るほど真面目な風紀委員長様は俺を追いかけてきた。

「…おい、着いてくるなって言ってるだろ。まさか聞こえなかったのか?」

「そう言ってまた問題を起こすだろうお前は。喜べ、風紀委員長の俺が直々に見張ってやる。」

「はあ?お前は俺をなんだと思ってるんだ。問題なんて起こさない。着いてくるな。」

「信用出来ない。」

なんなんだ、こいつ。

目元が引き攣るのが分かった。確かに俺は偶に、偶に問題を起こすことがあるが俺が悪くない例ばかりのはずなのに。それは柊だって理解しているはずだ。いつもは俺が柊にムカついて教室を出ても睨んでため息をつくだけで追いかけるなんてしなかったはずなのに、今日は追いかけきてやけにしつこい。なんだか嫌な予感がする。一刻も早くこの場から逃げ出したい。俺はそう思って行動に移そうとした。が、柊に手を掴まれてそれは失敗に終わった。

「っおい、その手を離せ。」

「離すと思うか?お前、逃げようとしただろ。」

どうやらバレていたらしい。俺はぐ、と言葉に詰まった。ふと柊が何か考え込むように目を伏せる。

「なぜお前は俺の言うことを全然聞いてくれないんだろうな。」

「そんなの俺がお前のこと嫌いだからに決まってるだろ。それにお前だって俺の事嫌いだろうが。」

柊に掴まれた腕に力が籠った。若干痛い。というかこいつ、力強くないか。さっきから振りほどこうと必死なのに全然振り解けない。

「……知りたいか?」

「は、何がだよ。」

「俺が、お前のことどう思ってるのか。」

柊はじっと俺の事を見つめて言った。
………なんだこの変な雰囲気は。俺はお前が嫌いで、お前も俺が嫌いで、それ以下でもそれ以上でも無いはずだろう。
無い、はずなのに。どうしてこんな嫌な予感がするんだ。本能が逃げろと俺に伝えてくる。

「い、いや嫌いだろ?嫌いだよなそうに違いない。そうに決まってる。おいもう気は済んだだろ。手を離…!?は、おい!どこに連れていくつもりだ。」

「教えてやる。俺がお前のことをどう思っているのか。」

俺の言うことなんてガン無視で、柊は俺の腕を掴んだまま歩き出した。まずいことになった。何がまずいのか分からないがこの状況はまずい。だが柊の方が力は上で、俺は逃げ出すことなど出来なかった。

柊に連行され着いたところは風紀室だった。嫌だ、入りたくない。俺の予感がここに入ってはいけないと言っている。
しかし全力の抵抗も虚しく、俺は柊に風紀室にズルズルと引っ張られていった。
ソファーと机が数個あるだけの風紀室に静寂が漂う。どうやらこの部屋には俺とこいつしかいないようだ。後ろでカチャリと鍵を閉める音が聞こえる。これで逃げ場は無くなった。
俺を無理やり連れてきたくせに柊は口を開かず、二人の間には沈黙が流れる。さっさと2人きりの空間から逃げ出したくて、俺は口を開こうとした。

だがそれは叶わなかった。視界が回る。バフ、という衝撃と共に柊が俺の上に覆いかぶさってきた。どうやらソファーに押し倒されたらしい。

「な、」


「俺がお前をどう思っているか、だったな。天堂。」

柊が顔を耳元に寄せてくる。そして微かに掠れた声で俺に告げた。

「好きだ。」

「ーーー」

何をするんだと言おうとした俺の口は、柊の言葉を聞いて声にならない悲鳴をあげた。
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