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第一章 異世界の獣人女性

魔法の練習と勉強

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 基本の魔法書を読んでわかった事は、大きく分けて、生活魔法、付与魔法、攻撃魔法、探索魔法、無種魔法の5種類があり、高度な魔法ほど魔力と鍛練が必要という事。

 生活魔法は、魔法名を唱えるだけで発動するが、便利な魔法ほど魔力消費が大きく、基礎魔力が少なければ使えない。

 付与魔法は、魔法の効果を物に付与できるが、かなり魔力消費が多く、詠唱も長く難しい。

 攻撃魔法は、使える魔法の種類が、火・水・風・土・光 の5種類あり、使える魔法種は1人1種類だけ。
 過去には2種類使った人もいたらしい。 詠唱と魔法のイメージが必要で、かなり修行を積まないと使えない。

 探索魔法は、物や人を探す魔法で、詠唱が必要だが基礎魔力が多いほど広範囲で探索できる。

 無種魔法は、どれにも当てはまらない魔法で、いろんな魔法があり、基礎魔力がかなり多い、修行を積んだエルフの魔法使いや、特殊な魔導師などしか使えない。

 せっかく広い場所に来ているので、探索魔法、攻撃魔法、無種魔法を試してみる。
 魔力を集中し、本に書いてある詠唱を唱えてみるが、やはり発動しない。
「探索魔法」と念じると森全体からユナの家、ギルドから街も含めた、かなり広範囲な地図が頭に浮かびあがり、「対象指定」という日本語の文字が出る。
「ユナ」と念じると今いる場所から少し離れた森の中に赤い点が見える。これがユナか。さらに赤い点に意識を集中させると、木の実を取っているユナの姿が見えた。ここまで見えるのか!
 これ覗きとかできそうだなとスケベな考えが浮かんだが、ユナなら裸見せてと言ったら見せてくれるだろう、などと考えていると地図が消えてしまった。集中しないと消えてしまうらしい。
 試しに「魔物」を探してみると、離れた所に黄色い点がポツポツとあるのが見える。
「ガイズベアー」と指定すると、かなり離れた洞穴に黄色い点が4つ見えた。

 探索魔法は理解したので、次は攻撃魔法だな。まずは俺が使える魔法種が何かだが、1種類づつ試してみるしかない。
 各魔法種の魔法書の初歩魔法、「スピア」の魔法を試してみる。槍だな。
 手を前にかざし、「火を集え!貫く槍となりて敵を打て!ファイヤースピア!」⋯⋯やっぱり発動しない。
 恥ずかしいよ⋯。鏡を見ないでも顔が赤くなっているのがわかる。火魔法が使えない可能性もあるが、俺の場合はたぶん念じるんだろうな。

「ファイヤースピア!」「燃える槍!」「燃える弓矢!」「火炎槍!」「火矢!」「火よ飛んでけ~!」思い付く言葉を念じてみるが、種火すら出ない。
 イメージは「火の槍」だから⋯⋯。かざした手の前に1メートルくらいの長細い火が現れた。「火の槍」かよ! 手を振りかぶり投げるようにすると、真っ直ぐ叢の方まで飛んでいったので火事になると思い、反射的に手を右に動かすと、細長い火も右に反れて岩に刺さった。
 刺さったまま燃えている。誘導できるみたいだ。魔法名を日本語で念じればいいだけなのか。

 それから何発か試したが、集中しないと誘導できなかった。集中が途切れると火の槍は落ちてしまった。
「火の槍」と念じた数だけ手の前に現れ、一気に投げる事もできた。 練習すれば2本別々に誘導できそうだ。
 それからファイヤーボールは「火の玉」、ファイヤーウォールは「火の壁」といろいろ試して、水、土、風、と初歩の攻撃魔法を使って練習した。
 俺は魔法種が複数使えるようだ。さすが女神のチート。

 最後に光の魔法だが、「光の槍」はあるが攻撃魔法が少なく、治癒魔法が主と書いてある。
「エクソシズム」という幽霊などを成仏させる光魔法もあると書いてあり、幽霊がいるのか? と怖くなったが、異世界で亜人や魔物がいるなら、アンデッドやゾンビがいても不思議ではない。
 今度、魔物や多種族の本も探してみようかな。

「治癒魔法」か⋯どうやって試すかな。自分の手をちょっとくらい切ってみてもいいが⋯。
 魔法名は切り傷などを治す「ヒーリング」「キュアヒーリング」「コンプリートキュア」、病気を治す「キュアディジーズ」、毒を治す「デトックス」など、いろいろ役に立ちそうな物があった。

 チート武器の仕込み刀があるので、攻撃魔法よりこっちをマスターしたい。

 仕込み刀は切れ過ぎて怖いので、「氷の槍」を出して指先を少し刺し、「治癒」と念じると「対象指定」と出たので「指先の傷」と念じると指先の傷が逆再生のように治った。
「対象指定」は自分が思っているイメージで良いみたいだ。「自分の指」でも「自分の手」でも、自分がここだと思っていれば、指定した言葉は適当でも大丈夫なようだ。

 治癒魔法の場合、「対象指定」が出るので、指を刺さなくても良かったな。「対象指定」が出るまでいろんな言葉を念じればいいんだ。「病気の治癒」で「対象指定」が出た。
 他にも、毒の治癒は「解毒」、呪いの治癒は「解呪」だった。
 いつか役に立つだろう。

 無種魔法は数が多いので、じっくり読んで役に立ちそうな物を探した方が良さそうだ。
 イメージした場所に転移できる「トランスファー」、空を飛べる「フライト」などもあるが、確実に目立つ。
 一応使ってみるが、この世界で目立つのはなるべく避けたい。
「転移」と念じると「対象指定」と出たので「自分」と念じユナの家の庭をイメージすると、目の前の景色が昨日、本を読んでいた庭になった。成功した。もう1度転移してさっきの森に帰る。

 次に「飛行」と念じ「対象指定」で「自分」と念じると、ふわりと身体が浮かんだ。近くの木の高さくらいをイメージすると、木と同じ高さまで浮かんだ。
 初めて空を飛んで嬉しいが、正直怖い。集中が切れたら落ちる。近くの木の上まで行くイメージをすると、身体がふわふわと木の方へ向かった。
 これはコントロールが難しい。イメージだけで操作するには練習が必要だ。しばらく右に飛んだり左に飛んだり、空に向かって飛んだりして、だいたいコツは掴んだ。目立つからあまり使えないけど。

 森の広場に着地すると、目を見開いてポカーンと口を開けたままのユナが居た。
 いつから見てたんだろう? ユナに近づくが固まったままだ。

「お~い、ユナ!⋯ユナちゃ~ん!」

 ダメだ、反応がない。乳首をつついてみるがダメなので、摘まんで軽く引っ張った。

「やっああんっ♡♡」

「ユナ~? 大丈夫か?」

 我に返ったユナは、まだ目を見開いたまま

「た、た、タカシさん! あ、えぇぇぇ!! い、今、空を⋯飛んで⋯飛んで?⋯飛んでました??」

「ああ、魔法書に載ってた魔法を試してたんだ」

「いや、ええぇぇ!! 空を飛ぶ魔法なんてあるんですか? 聞いた事ないですよ!」

「いや、ここに載ってるよ」

 無種魔法の本を開いて見せる。

「た、確かに載ってますが⋯。無種魔法なんて使える人、王都の王宮の魔道師くらいですよ。それに空を飛ぶ魔法なんて⋯」

「そうなの? 何個か使ってみたけど⋯使えたよ」

「私は魔法に詳しくないのですが、無種魔法は習得が難しく、エルフのような長寿種が何百年か鍛練して、やっと1つ使えると昔聞いた事がありますよ」

 え? そうなの?チート過ぎるな俺。

「でも使えたから⋯。目立つだろうから、一応あまり人に言わないでくれ。ユナと俺の秘密だ」

「は、はい。もちろんです。2人だけの⋯秘密♡」

 ユナが顔を赤くしてモジモジしだした。

「ここで試したかった魔法の練習はだいたい終わったから、まだ早いけどそろそろ帰ろうか? 薬草採取は終わった?」

「はい。木の実もこんなに」

 袋にいっぱい入った木の実や山菜を見せながら嬉しそうに言う。
 袋が重たそうだったので収納魔法で収納して、ユナの手を恋人繋ぎで握り、「対象指定」を俺とユナにしてユナの家のリビングに転移した。

「あれ? え? え?」

 ユナがまた混乱している。

「これも無種魔法の本に載ってた。転移魔法だ!」

「はあぁぁぁ?? 転移魔法ってなんですか? 森から一瞬で移動したんですか?」

「そうだ! 便利だろ?」

「もう⋯驚き過ぎて頭がついていかないですよ⋯」

「ごめん。これから変な魔法をたくさん使うかも知れないが、俺はそういう人間だと思っててくれ」

「よくわかりませんが、わかりました」

 ユナは、かなり動揺しているようだが納得してくれた。

「魔物の種類や倒した後に剥ぎ取る部位なんかがわかる本ってないかな?」

「そういった本はギルドの資料室で読めますよ。魔物の内臓から作る薬の勉強に必要なので私も持ってます。高価なのでギルドほどありませんが、寝室の隣の薬を精製する部屋にあるので、好きに見てもらっていいですよ」

「ありがとう」

 木の実の入った袋を出してユナに渡してから、寝室の隣の部屋に向かった。
 部屋の中には大きな本棚と薬草を擦り潰す為なのか、薬研やフラスコ、綺麗な色の宝石やガラスのビンがたくさんあった。魔法屋と似てるな。
 本棚を見ると、ほとんどが薬草や薬の本だった。中から魔物図鑑と書かれた本を取り出し、部屋の椅子に座って読み始める。

 魔物は、魔力が蓄積した木の実を食べすぎた動物で、狂暴になり身体も大きく変化し、爪や牙が延び力も強くなるらしい。中には魔法を使う種もいると書いてある。
 魔力が蓄積された木の実の挿し絵があり、キラキラした水晶のような木の実の絵だった。森のどこかで見た記憶がある。魔物の絵がたくさん載っていて、剥ぎ取る部位がそれぞれ説明してある。ほとんど爪や牙や目玉だが、魔物によっては尻尾も剥ぎり部位らしい。
 魔物は全てが金になるとも書いてあるが、ユナが言っていたように「※持ち帰るのは大変なので、小さい部位だけにしましょう」と忠告まで書いてあった。

 しばらく読んでいると部屋のドアが開き、さっきの木の実の皮を剥いて、一口サイズに切った物を皿に乗せたユナが入ってきた。

「これ、美味しいので良かったらどうぞ」

「ああ、ありがとう」

 添えてあったフォークで刺して食べる。シャリシャリしてリンゴみたいな食感だが、味は蜜柑だった。

「甘くて美味しいよ。何ていう木の実なの?」

「ファプールといって、今が食べ頃なんです。あまり生ってないので、私も久しぶりに食べます」

 シャリシャリと二人で食べていると、ユナがフォークで刺した物を差し出して、

「あ~~ん♡」

 と言ってきたので、俺が「あ~ん」と口を大きく開けて食べると、

「人間の男性にあ~んしちゃった♡ してみたかったんです♡」

 かわいい狐さんだ。俺もユナも顔が赤い。俺もお返しにユナに「あ~ん」をしてイチャイチャしているとファプールが無くなっていた。
 食べ終わったので、本をまた読みだすとユナが薬の精製を始めた。

 本を読みながらユナを見ていると、薬草を煮たり擦り潰したり、いろいろ混ぜたり大変そうだったが、本人は手際良くこなしていた。
 できた液体に、綺麗な宝石のような物を浸している。
 邪魔したら悪いかと思ったが気になったので聞くと、宝石のような物は魔石といって、色によって特殊な効果がある物で、ここにある物は薬の効果を上げる物らしい。
 魔石にはいろいろ種類があって、攻撃魔法の威力を上げる物や魔力を貯めておける物などがあるらしい。

 魔物図鑑を一通り読んだので、今度は薬草図鑑を読んでみる。
 かなりの種類があるようで、挿し絵と説明が書かれている。何個かは森で見た事があるな。
 貴重な薬草のページになって読んでいると、幻の薬草と書かれた物が何種類か載っていた。その中に「精霊草」という名前の見た記憶がある薬草が1つあった。どこで見たっけな? う~ん⋯。

「どうしたんですか?」

 考え込んでいる俺にユナが声をかけてきた。俺はその薬草のページを指差してユナの前に差し出した。

「いや、この薬草をどこかで見た記憶があるんだけど、どこだったかな~って思って⋯」

 するとユナがビックリして、

「それ、精霊草ですよ! 幻の薬草! どこで見たんですか?」

 ユナが凄い顔で迫ってくる。どこだったかな⋯。森なんだが⋯⋯ん?

「あっ! 河童、いやタミールか。タミールの居た滝だ。滝の崖にたくさん生えてた」

「なるほど! 精霊の滝ですか。精霊草だから⋯。これは貴重な薬草で私も見た事がありません。煎じて飲めば精霊の力が宿り、薬の精製時に混ぜると物凄い効果があると言われていて、王都の貴族などが欲しがって高値で取引されるとか」

「そうなんだ。でもあそこに行くと、また相撲をとらされるな」

「タカシさんなら勝てるから大丈夫なのでは?」

「確かにそうなんだけど、あまり関わりたくない奴らだったよ。 ユナがどうしても欲しいなら行くけど。尻を撫でまわされるから、ユナは行ったらダメだぞ!」

「いえ、タカシさんに迷惑をかけてまで欲しい訳ではないので大丈夫です。それより⋯私がお尻撫でまわされたら嫌ですか?」

「うん。ユナのお尻を撫でるのは俺だけにして欲しい」

「⋯⋯はい♡」

 そんな会話をしていたせいで、二人とも欲情してしまい、まだ夕方なのにそのまま寝室へ向かうのであった。
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