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一周年の吸血少女

適当な操作

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 更に階段を降りていくと、また廊下に出た。廊下の向こうにも上り階段がある事から、私が来た道と対称になっているのだと予想出来る。そして、向こうの階段と私達が降りてきた階段の中間の壁に扉が付いている。

「エアリー、あの扉の奥は大丈夫?」
『はい。特にモンスターがいるという事はありません。罠の可能性はありますが、私に感知出来るものはありません』
「オッケー。それじゃあ、ソイル、慎重に扉を開けてくれる?」
『うん……』

 ソイルに扉を開けて貰いつつ、私は何かあった時に対応出来るように構えておく。幸い、ここに罠が仕掛けられているという事はなく、扉が開いた。扉の中はコントロールルームのような沢山のパソコンが並んでいた。

「うわぁ……キーボードにどんなキーかくらい書いて欲しいよ」

 キーボードには、何も書かれておらず、どうやって操作をしていたのか謎だった。どう考えても、普通の人に操作が出来ないようになっている。

「こんなのどうやって操作するんだろう? 適当に押すか」

 キーボードを適当に押していると、画面が点いた。

「電気は通ってる……何で?」

 ここまでの扉には通電していなかった。なので、ここだけ通電している事に違和感を覚える。

「ここだけは常に電気が通ってるって事かな、他を無視してもそうなっているのは、それだけ重要な施設って事かな?」
『この場所を管理するための場所と考えれば、重要な場所と考えられるかと』
「だよね。取り敢えず、この画面に映ってるのが何か調べないと」

 スキルを入れ替えて、言語学系のスキルにする。そして、画面に映っている文字を読む。

「う~ん……アクセス権限が必要かぁ……扉のパネルも同じように権限が必要そうだし……ここかな?」

 この状態でもUSBメモリを挿して効果があるか分からないけど、取り敢えず、近くのUSBポートにメモリを挿す。一つ挿しただけでは何も変わらない。USBポートは全部で六つ並んでいる。そして、USBメモリも六つある。

「全部使わないといけないのかな」

 USBメモリも全て挿すと、アクセス許可が出た。六つ全てのUSBメモリを集めないと、アクセス出来ないようになっているらしい。画面がどんどんと切り替わっていき、最終的に出て来たのは、変な文字の羅列だった。一応、言語学系スキルは限界まで育てているのだけど、この文字は読めない。
 それを理解しつつ、何とか解読出来ないかと思って見ていると、画面の上部が開いて、赤い光が目をスキャンしてきた。そして、画面が切り替わる。切り替わった後に書かれている文字も読めない。

「エアリー、ソイル、二人は読める?」
『いえ、読めません』
『私も……』
「だよね。さっきのスキャンが虹彩認証とかだったとして、私の目をスキャンしても意味が無いはず。逆に認証するんじゃなくて、登録するものだったのかな?」

 そう考えれば、今の画面は登録情報になる。でも、書かれている文字は、登録情報と考えるには少なすぎる。眉を寄せていると、画面とは別にウィンドウが出て来た。この施設ではなく、ゲームシステムのものだ。

『条件を達成。【言語学】【現代言語学】【古代言語学】を統合し、【総合言語学】を会得しました』

 SPの消費なしで新しいスキルを得る事が出来た。何が条件なのか分からないけど、これはちょうど良いかもしれない。

────────────────────

【総合言語学】:あらゆる言語を理解する事が出来るようになる。控えでも効果を発揮する。

────────────────────

 【総合言語学】のおかげで、画面の文字も読めるようになった。

「えっと……『権限を確認。アクセスを許可します』か。どのみち操作が出来ないんだよね」

 仕方ないので、適当にキーボードを押していく。すると、画面が切り替わり、何らかの設計図らしきものが沢山出て来た。

「う~ん……この設計図は、戦闘アンドロイド達のものかな。アカリがいないと分からない……」

 設計図に詳しい訳では無いので、確証はないけれど、描かれているものは戦闘アンドロイドの姿に似ている。だから、廃都市エリアのモンスターの設計図と考えられた。そのまま適当にキーボードを弄っていると、近くの印刷機らしきものが稼働して、設計図を吐き出してくる。エアリーとソイルがそれを拾ってくれているので、私はそのままキーボード弄っていく。

「キーボード操作だけで、色々と出て来るものだなぁ……これはメールボックスかな。えっと……基本的に報告ばかり……てか、報告しかないか。稼働率の報告だから、試験的に運用していたとかっていうのもあるのかな。後は……ん? これは、地下施設の地図か。エアリー、ソイル、この地図って正確かな?」

 この地下空間を感知出来る二人に見てもらって、地図の正確性を確かめる。この地図を作った頃から、増築している可能性も否定できないしね。

『はい。間違いはないかと』
『正確だと……思うよ……』
「そっか。それじゃあ、このコントロールルームよりも地下があると。取り敢えず、ここで調べられる事は、このくらいかな」

 キーボードを弄っているけど、他に何かが出て来る事もないので、USBメモリを抜いて、更に地下へと進む事にする。地下への道は、コントロールルームの別の出入口から通じている廊下にあった。

「エアリー、ここの二つの上り階段は、私達が来たところと似てる?」
『形は同じです。先程の地図からも分かる通り、別の出入口かと』
「だよね。じゃあ、調べるのは、また今度でいいや。このまま地下に行こう。ソイル、お願いね」
『うん……!』

 ソイルに扉を開いて貰いながら、更に地下へと下っていく。また廊下があり、今度は沢山の扉があった。半開きになっていたり、完全に開いていたり、閉まっているものある。ソイルには、閉まっている扉をお願いしつつ、私は開いている扉から中を確認する。

「う~ん……これは倉庫かな?」
『そのようですね。ですが、中には何もありません』
「だね。他の場所は?」
『私が確認出来る限りでは、何もありません』
「じゃあ、【心眼開放】で見えるものがないかだけ確認しようか」

 ソイルが開いてくれた部屋も含めて、全部中を確認したけど、結局何も発見する事は出来なかった。まぁ、そんな都合良く何でも見つかるとは思っていなかったから、特に何とも思わない。
 そのまま、また地下へと続く階段を下りていく。

「どこまで続いてるんだろう?」
『後……二つ……階段が……あるよ……』
「おぅ……まだそんなに続くのか……」
『ですが、一番下の空間は、かなり広い場所になっています。何かがある可能性は高いかと』
「そういえば、あの地図もそんな感じだったね。まぁ、ひとまず頑張りますか」

 この下の階にも似たような倉庫的な部屋があったけど、特に何もなかった。そして、一番下の階へと下りていく。
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