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因縁に決着をつける吸血少女
ちょっとした嫉妬
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アルラウネが身を捩り、急に地面に沈んでいった。完全にくっついているから、私も一緒に沈むものだと思ったけど、地上に取り残される事になった。
「えっ!?」
拘束は完全だったし、生半可な力では引き千切れる筈がない。今までは、このまま吸い続ける事が出来ていたのだから。つまり、行動パターンが変わる際に、確定で拘束が外れるようになっていたという事だ。
そして、すぐに嫌な予感がした。皆の元に退こうとした瞬間に、地面が割れて中から大きな茎のようなものが大量に生えてくる。その茎に巻き込まれて飲み込まれる。【影渡り】や【夜霧の執行者】で抜けだそうとしたけど、スキルが使えない。
これも強制的なものみたいだ。もしかしたら、ステージの移動とかかもしれない。初めての経験に、少し焦ったけど、そう考えたら落ち着ける。このまま身体が動かせるようになるまで待つ。
その時は、すぐに訪れた。急に私の身体が投げ出される。【大天使翼】を使って、空を飛び状況を確認する。
「でかい……植物?」
私の目の前には、私を巻き込んだ茎が織りなす巨大な植物があった。植物の頂上には、円形のフィールドのようなものが出来ていた。大きさは、ボスエリアよりも広い。上に広がるようにして伸びているからだ。そこの中央に、アルラウネが生えてくる。
そして、私の他にもこのフィールドに飛ばされている人達がいた。アカリ、トモエさん、サツキさんの三人だ。他の七人と一匹は、下に取り残されているみたい。
「アカリ、大丈夫?」
アカリ達の元に降りて無事か確認する。
「うん。急に茎に身体を持ち上げられて、ここまで運ばれちゃった」
「恐らく、近接攻撃を主体とするプレイヤーと遠距離攻撃を主体とするプレイヤーで分断させられたな」
「レイドだというのに、厳しい事をしてくれますね。ハクちゃん、下から皆を引き上げられますか?」
「スノウを喚べば大丈夫だと思います。私だと一人ずつしか運べないので」
「お願いします」
「はい」
全員で合流した方が安全なので、トモエさんの指示通りに下に降りようとしたら、周囲から蔓が伸びてきて、私達のフィールドを覆うようなにドーム状の屋根になった。一応、【夜霧の執行者】や【影渡り】で通り抜けようとしたけど、上手くいかない。そういったスキルの効果が阻害されているみたいだ。
諦めてトモエさんの元に戻る。
「無理でした」
「仕方ありません。ここは、私達だけで戦うしかなさそうですね。ですが、ハクちゃんがいるから大丈夫でしょう」
「だな」
「はい。そうですね」
皆からの過剰な期待が凄い。色々出来るのは事実だけど、そこまで期待されると困る。
「下は大丈夫かな?」
【索敵】の効果で、下の方に大量のモンスターが来ている事が分かる。それとアク姉達が戦っている事も。
「エアリー達がいるから大丈夫でしょ。前衛とはいかないけど、相手を近づけさせない事は出来るし。それに、アク姉には召喚獣がいるから」
「う~ん……まぁ、そうなのかな」
「ハクちゃんに同意です。下は大丈夫だと信じましょう。それよりも、もう動きますよ」
今まで沈黙していたアルラウネが顔を上げた。
「ハクちゃん、双血剣は?」
私の手元を見たアカリが訊いてくる。
「さっきの茎に飲まれた時に落とした。片方だけでもあれば、呼び寄せられるんだけど」
茎に飲まれた際にもみくちゃにされた関係で、双血剣を落とした。それでも、私には隠密双刀があるから問題はない。
「【プリセット・属性】」
スキルを牙主体から属性攻撃主体に変える。血液で隠密双刀を刀に変えて、【電光石火】で一気に突っ込む。
「【解放・陽光】」
攻撃力と防御力を上昇させて、なるべく早くHPを削る。さすがに、三段目のHPを削り切れば、アク姉達と合流出来るはずだからだ。さすがに、分断された状態で最後まで戦うというレイドはないだろうし。
二刀で斬り掛かる私をアルラウネは蔓で縛る。身体の動きを止められるけど、その内右腕を縛る蔓の一部を虚無で破壊。右手に握った月影に影、闇、風を纏わせて、アルラウネに影と闇を乗せた風の刃を放つ。それは幾重にも重ねられた蔓に防がれる。そうして視界が塞がったところにサツキさんが突きを入れる。
私が傷を付けた蔓を斬り裂いて、大剣がアルラウネに迫る。それも蔓が巻き付くけど、私の刀とは重さが違う。蔓を引き千切って、アルラウネに命中する。途端に、アルラウネの身体から花粉が撒き散らされる。咄嗟に、【暴風武装】で花粉を押し流す。気休めにしかならないけど、やらないよりはマシだ。
サツキさんが、花粉爆発に巻き込まれる。HPが二割削れていたけど、まだ大丈夫そうだ。すぐにサツキさんと一緒に後ろに下がって、トモエさんの背後で集まる。
「ヤバいな」
「攻撃を受けると花粉を出すみたいだ」
「私が先頭で突っ込みます。攻撃したら、私の背後に回って下さい。ハクちゃんは、風をお願いします」
「分かりました」
「では、行きます」
トモエさんを先頭にアルラウネに突っ込む。タンクであるトモエさんの後ろなら、花粉爆発もある程度マシなはず。襲い掛かってくる蔓を私が斬り裂いていく。【二刀流】と速度がある私がこの対処に向いている。アルラウネを倒すという意識を捨てて、蔓にだけ対処すれば、このくらい捌ける。【心眼開放】と【超反応】もあるからね。
蔓による妨害を抜けて、トモエさんがアルラウネに接近する。
「【シールドバッシュ】」
盾の叩きつけによって、アルラウネが気絶状態になる。そこに、サツキさんが上段から振り下ろした大剣が命中する。【加重闘法】を使っているのか結構良い一撃になった。その分花粉が出て来るので、風で押し流す。同時にサツキさんが下がってトモエさんが前に出る。私とアカリもトモエさんの後ろに隠れて花粉爆発をやり過ごす。
その間に私達を襲ってくる蔓を斬り裂いていく。そして、爆発が終わったところで、アカリがアルラウネに細剣を突き刺す。再び状態異常がアルラウネを襲う。アカリの攻撃では微量の花粉しか出ないので、私はそのまま突っ込んで二刀でアルラウネを突き刺す。
アルラウネの身体を縫い付けて、さらに影で縛る。押し倒す形のまま、再び噛み付いて吸血を始める。アカリの状態異常攻撃で動きを止められるのは、本当に助かる。吸血をする事で花粉が散るけど、これだけでは、そこまでの花粉は散らない。普通に風で散らせる。アカリが何度も麻痺薬を投げてくれるので、アルラウネが動けなくなっていた。私も麻痺になるのだけど、噛み付いたまま固まるから吸血は続けられる。何だかアカリの目が怖い気がするけど気のせいだろう。
「えっ!?」
拘束は完全だったし、生半可な力では引き千切れる筈がない。今までは、このまま吸い続ける事が出来ていたのだから。つまり、行動パターンが変わる際に、確定で拘束が外れるようになっていたという事だ。
そして、すぐに嫌な予感がした。皆の元に退こうとした瞬間に、地面が割れて中から大きな茎のようなものが大量に生えてくる。その茎に巻き込まれて飲み込まれる。【影渡り】や【夜霧の執行者】で抜けだそうとしたけど、スキルが使えない。
これも強制的なものみたいだ。もしかしたら、ステージの移動とかかもしれない。初めての経験に、少し焦ったけど、そう考えたら落ち着ける。このまま身体が動かせるようになるまで待つ。
その時は、すぐに訪れた。急に私の身体が投げ出される。【大天使翼】を使って、空を飛び状況を確認する。
「でかい……植物?」
私の目の前には、私を巻き込んだ茎が織りなす巨大な植物があった。植物の頂上には、円形のフィールドのようなものが出来ていた。大きさは、ボスエリアよりも広い。上に広がるようにして伸びているからだ。そこの中央に、アルラウネが生えてくる。
そして、私の他にもこのフィールドに飛ばされている人達がいた。アカリ、トモエさん、サツキさんの三人だ。他の七人と一匹は、下に取り残されているみたい。
「アカリ、大丈夫?」
アカリ達の元に降りて無事か確認する。
「うん。急に茎に身体を持ち上げられて、ここまで運ばれちゃった」
「恐らく、近接攻撃を主体とするプレイヤーと遠距離攻撃を主体とするプレイヤーで分断させられたな」
「レイドだというのに、厳しい事をしてくれますね。ハクちゃん、下から皆を引き上げられますか?」
「スノウを喚べば大丈夫だと思います。私だと一人ずつしか運べないので」
「お願いします」
「はい」
全員で合流した方が安全なので、トモエさんの指示通りに下に降りようとしたら、周囲から蔓が伸びてきて、私達のフィールドを覆うようなにドーム状の屋根になった。一応、【夜霧の執行者】や【影渡り】で通り抜けようとしたけど、上手くいかない。そういったスキルの効果が阻害されているみたいだ。
諦めてトモエさんの元に戻る。
「無理でした」
「仕方ありません。ここは、私達だけで戦うしかなさそうですね。ですが、ハクちゃんがいるから大丈夫でしょう」
「だな」
「はい。そうですね」
皆からの過剰な期待が凄い。色々出来るのは事実だけど、そこまで期待されると困る。
「下は大丈夫かな?」
【索敵】の効果で、下の方に大量のモンスターが来ている事が分かる。それとアク姉達が戦っている事も。
「エアリー達がいるから大丈夫でしょ。前衛とはいかないけど、相手を近づけさせない事は出来るし。それに、アク姉には召喚獣がいるから」
「う~ん……まぁ、そうなのかな」
「ハクちゃんに同意です。下は大丈夫だと信じましょう。それよりも、もう動きますよ」
今まで沈黙していたアルラウネが顔を上げた。
「ハクちゃん、双血剣は?」
私の手元を見たアカリが訊いてくる。
「さっきの茎に飲まれた時に落とした。片方だけでもあれば、呼び寄せられるんだけど」
茎に飲まれた際にもみくちゃにされた関係で、双血剣を落とした。それでも、私には隠密双刀があるから問題はない。
「【プリセット・属性】」
スキルを牙主体から属性攻撃主体に変える。血液で隠密双刀を刀に変えて、【電光石火】で一気に突っ込む。
「【解放・陽光】」
攻撃力と防御力を上昇させて、なるべく早くHPを削る。さすがに、三段目のHPを削り切れば、アク姉達と合流出来るはずだからだ。さすがに、分断された状態で最後まで戦うというレイドはないだろうし。
二刀で斬り掛かる私をアルラウネは蔓で縛る。身体の動きを止められるけど、その内右腕を縛る蔓の一部を虚無で破壊。右手に握った月影に影、闇、風を纏わせて、アルラウネに影と闇を乗せた風の刃を放つ。それは幾重にも重ねられた蔓に防がれる。そうして視界が塞がったところにサツキさんが突きを入れる。
私が傷を付けた蔓を斬り裂いて、大剣がアルラウネに迫る。それも蔓が巻き付くけど、私の刀とは重さが違う。蔓を引き千切って、アルラウネに命中する。途端に、アルラウネの身体から花粉が撒き散らされる。咄嗟に、【暴風武装】で花粉を押し流す。気休めにしかならないけど、やらないよりはマシだ。
サツキさんが、花粉爆発に巻き込まれる。HPが二割削れていたけど、まだ大丈夫そうだ。すぐにサツキさんと一緒に後ろに下がって、トモエさんの背後で集まる。
「ヤバいな」
「攻撃を受けると花粉を出すみたいだ」
「私が先頭で突っ込みます。攻撃したら、私の背後に回って下さい。ハクちゃんは、風をお願いします」
「分かりました」
「では、行きます」
トモエさんを先頭にアルラウネに突っ込む。タンクであるトモエさんの後ろなら、花粉爆発もある程度マシなはず。襲い掛かってくる蔓を私が斬り裂いていく。【二刀流】と速度がある私がこの対処に向いている。アルラウネを倒すという意識を捨てて、蔓にだけ対処すれば、このくらい捌ける。【心眼開放】と【超反応】もあるからね。
蔓による妨害を抜けて、トモエさんがアルラウネに接近する。
「【シールドバッシュ】」
盾の叩きつけによって、アルラウネが気絶状態になる。そこに、サツキさんが上段から振り下ろした大剣が命中する。【加重闘法】を使っているのか結構良い一撃になった。その分花粉が出て来るので、風で押し流す。同時にサツキさんが下がってトモエさんが前に出る。私とアカリもトモエさんの後ろに隠れて花粉爆発をやり過ごす。
その間に私達を襲ってくる蔓を斬り裂いていく。そして、爆発が終わったところで、アカリがアルラウネに細剣を突き刺す。再び状態異常がアルラウネを襲う。アカリの攻撃では微量の花粉しか出ないので、私はそのまま突っ込んで二刀でアルラウネを突き刺す。
アルラウネの身体を縫い付けて、さらに影で縛る。押し倒す形のまま、再び噛み付いて吸血を始める。アカリの状態異常攻撃で動きを止められるのは、本当に助かる。吸血をする事で花粉が散るけど、これだけでは、そこまでの花粉は散らない。普通に風で散らせる。アカリが何度も麻痺薬を投げてくれるので、アルラウネが動けなくなっていた。私も麻痺になるのだけど、噛み付いたまま固まるから吸血は続けられる。何だかアカリの目が怖い気がするけど気のせいだろう。
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