吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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楽しく賑わう吸血少女

ちょっとした期待

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 口の火傷が治る頃に、闇霧の始祖が紙に走らせていた血を止めた。私の反応から得られる情報をメモし終えたみたい。

『なるほどな。これでよく分かった』

 闇霧の始祖は、面白そうに口角を上げながらそう言っていた。それだけだと、私には何も伝わらない。

「何が?」
『お前の体内には、属性が馴染みやすい。現状、光と闇以外の因子も流れている』
「今飲んだから?」

 私が持っているスキル的に、他の因子が流れる理由が分からないので、今やらされた事が関係あると考えた。

『それもあるが、それよりも前に持っている因子もあったな。【暴食】か何かを持っているとは思っていたが、割とえげつないものを飲んでいるみたいだな』

 確かに、これまで自分が飲んできたものを考えるとえげつないものを飲んでいるという自覚はある。夜霧、闇、泥、砂、常人が飲まないものを飲みまくっているから。てか、ついさっき炎も飲まされたばかりだし。炎を飲むという状況が、既によく分からないけど。

「まぁね。でも、何で身体に馴染みやすいの?」
『【暴食】の効果だろう。馴染み具合に違いがあるのは、お前に適した属性か否かだな。天使と悪魔であるお前には、光と闇が馴染みやすい。竜は火の因子に関わっているが、お前の中の因子が薄いから火傷をするのだろう。精霊に関しては、まだ属性が付いていないな。あるいは、それがお前の精霊としての在り方なのかもしれん』

 私が持っているスキルは、【暴飲暴食】だけど、確かにこれのおかげで何でも食べられるようにはなっている。それに、食べるものによって何か効果を得るというものもあるので、因子を取り込んでいるのと身体に馴染んでいるという事も納得出来る。

『とにかく要検証だ。ひとまず、さっきも言った通り、闇と光を中心に飲め』
「分かった」

 師範と師匠は、私に武器の使い方や指導をしてくれたけど、闇霧の始祖はスキルに関する指導をしてくれるって感じなのかな。

「もしかして、光と闇に関しての情報って、さっき教えてくれただけ?」
『いや、そんな事はない。だが、正直天使と悪魔に関しては、詳しいという訳ではないからな。実際に、どうなるかは分からん』
「えっ、それも実験させるつもり?」
『お前にも益はあるぞ。光と闇の融合については知っているか?』
「虚無でしょ?」

 これはアク姉の魔法で知っている。エアリーの【絶対真空】のように効果範囲の全てを消し去る事が出来る。命中すれば、大ダメージを与える事が可能だ。

『それを天使と悪魔の光と闇でやれば、相当な強さになるだろうな。そこで質問なんだが、お前は天使と悪魔の力をどこまで引き出せる?』
「羽が生えるくらいかな。後は、ステータスが上がるくらい」
『力を出せる訳では無いのか。因子の強化で止まっているという事か……』
「えっと、つまり、天使と悪魔の力を引き出せるようになれば、私が虚無を生み出す事が出来るって事?」
『いや、それ以上だろうな』
「それ以上!?」

 虚無だけでも強いのに、それ以上と言われると、何も想像出来ない。虚無の先って一体何なのだろうか。

『そこは憶測だけどな。だが、魔法で作れる量の虚無で収まりきらないのは確かだろう。天使と悪魔が保有する光と闇は、それくらい桁外れに多い。お前の場合は、吸血鬼である分闇の因子が多くなっている。光の要素が欲しいな』
「光の因子を強化出来るスキルってあるの?」
『そうだな……【聖人】は持っているか?』
「【聖王】になってる。【魔王】もあるよ」
『なら無理だな。俺の知らないスキルがあれば別だが』

 【大天使】と【大悪魔】、【聖王】と【魔王】で因子の量が同等になるから、【始祖の吸血鬼】分、闇の因子が多くなるみたい。

「あっ、そういえば、私【鬼】も持ってんだけど、これは関係ある?」
『【鬼】か……あれは内なる鬼を解放するものだからな。因子を出しはするが、そこまで影響はない。というよりも、因子が影響してくる可能性の方が高いはずだ』
「そうなんだ。何か、そんな感じはしなかったけど」
『まだその段階じゃないのかもな』
「ふ~ん」

 割と有益な情報が貰えた気がする。【大天使】と【大悪魔】が保有する光と闇の力を自由に使えるようになれば、より強い攻撃を使えるようになるかもしれない。それこそ、【蒼天】よりも上の攻撃が使えるかも。いや、【蒼天】以上のものになったら、扱いに困るか。

「ん? 私に闇とか飲ませて、操作系スキルを取らせようとしているのって、それをさせようとしてる?」
『ああ。操作出来るようになれば、体内の光や闇も操作出来るかもしれないしな。久しぶりに楽しくなってきたな。こっちでも調べてみるか』
「あっ、それなら邪聖教についても調べて欲しいんだけど」
『面倒だな』

 明らかに嫌そうな顔をしている。私を使った実験に直接関係ないから、気が進まないって感じかな。闇霧の始祖がどういう風に情報を手に入れるか分からないけど、情報を得られる可能性があるなら頼る。それくらい情報がないからだ。それに、こっちにも切ることが出来るカードはある。

「じゃあ、実験に協力してあげないよ」

 これを言ったら、一瞬ピクッと反応してからため息をついた。

『仕方ない。出来る限り情報は集めよう。他に必要な情報はあるか?』

 追加で情報収集もしてくれるらしい。これは、ちょっと意外だった。現状私が気になっている事を思い出す。そこから邪聖教と関連している事を思い出した。

「じゃあ、雪狼会について」

 邪聖教との繋がりがあるかもしれない雪狼会。それがなくても師匠の因縁の組織で、私がどうにかすると約束したから、こっちも調べて貰う。上手くいけば、一気に進展する可能性もある。闇霧の始祖の情報収集能力に期待だ。

『分かった。それじゃあ、今日は帰れ。ああ、そこら辺の資料は持って帰っても良いぞ。既に記憶しているものばかりだ』
「やった! 皆、紙を集めて!」

 お言葉に甘えて、全ての資料を回収して帰った。闇霧の始祖が呆れているようなため息を零していたけど、そんな事は知った事では無い。くれるというのだから貰っていくだけだ。
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