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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

成果の戦闘

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 スノウも合流して、蒼天竜との空中戦闘が始まる。ずっとしがみついて、【始祖の吸血鬼】を使うという方法が一番楽な戦闘なのだけど、そこに至るまでが難しい。やっぱり、【第六感】持ちというのが、かなり難易度を上げている。蒼天竜を消耗させて、隙を生じさせるしかない。
 そのためには、距離を開かせず、常に攻勢に出る必要がある。攻撃のリーチと攻撃力、速度を考えて、攻撃方法は【二刀流】を中心に行う。【暴風武装】で風を操り、【圧縮】で形を整えつつ密度を上げる事で、空中に風の刃を複数作り出す。これを放って、攻撃の密度も上げていた。攻撃力は、かなり低いけど、蒼天竜からしたら鬱陶しい攻撃だ。だって、これも立派な攻撃だから【第六感】が反応する。ここに、スノウの攻撃も加わるのだから、余計に鬱陶しいだろう。
 これが、蒼天竜対策の戦い方。【第六感】の反応を増やし、キャパオーバーさせる。そうして出来上がった隙を突いて、【始祖の吸血鬼】でHPを削る。【竜騎】を持つ私は、そう簡単に蒼天竜の背中から落ちる事はないし、双血剣か隠密双刀を突き刺して、影で身体を固定すれば、さらに落ちなくなるだろう。
 そこに繋げられるまでは、ひたすら攻撃あるのみ。向こうの攻撃は、この前の戦いで完全に見抜いているから、パリィの成功率も上昇している。さらに、空中戦闘の経験が積まれているから、普通に回避の精度も上がっている。【第六感】と【予測】が同時発動出来るのが大きい。
 蒼天竜が硬いので、【始祖の吸血鬼】が使えるまでは長い道のりになる。その間、下の戦闘は、皆に任せるしかない。氷炎竜と氷雷竜もいるけど、レイン達がいるから問題はないはず。気がかりなのは、見た事のないモンスター達。一度も遭遇していないという点から、血を飲みたいという欲が出て来るけど、今は蒼天竜を片付けないといけない。
 蒼天竜は、相変わらず、私から距離を取ろうとする。行動AI的に、距離を取ってからじゃないと【蒼天】を使えない。そして、私を脅威と感じているからこそ、【蒼天】を使用したいと思っているはず。追い込めている。だから、さらに攻撃の密度を上げて、蒼天竜の処理能力をキャパオーバーまで、さらに追い込む。
 私の攻撃が届き始め、蒼天竜が目に見えてダメージを負っていく。どんどんと攻撃速度と【暴風武装】による攻撃の密度を上げていき、蒼天竜の背後を突く。ここで、ようやく蒼天竜の身体にしがみつく事が出来た。隠密双刀を背中に突き刺し、影で身体を蒼天竜に縛り付ける。

「スノウは、下の援護に向かって!」

 スノウの援護があった方が安心だけど、それは下の方も同じ。ここでしがみつけた以上、後は時間の問題という事もあるので、下を優先して貰う。
 そして、その身体に牙を突き立てて、吸血を始める。蒼天竜が、背中を攻撃しようと尻尾を振う。それは、密度を上げた影でパリィする。でも、こっちの影も千切れていたので、上手くパリィ出来なければ、攻撃が命中してしまう。防影も意味ないはず。
 なので、身体から血液を出していく。私の血液は、私の影よりも頑丈なはず。それに、血液なら操れる量が桁違いだ。血液は垂れ流しにして、常に防御に回す。【第六感】と【予測】で攻撃タイミングは認識出来る。後は時間まで耐えれば良い。
 血液で攻撃を弾き続け、蒼天竜の血を吸い尽くすのに、三十分近く掛かった。蒼天竜がポリゴンに変わったのと同時に地上へと飛ぶ。
 まだ戦闘音がしているので、戦闘は続いているはず。蒼天竜との戦闘に夢中で、気付かなかったけど雲が戻ってきている。いや、違う。これは、レインかアク姉が天候魔法を使用したのかな。さすがに、地面が見えなくなる程の雲が、いきなり集まってくるなんて事は、そうそうない。雲を突き抜けて、地面が見えてくると、コーラルタートルが真っ先に見えてくる。巨体だから仕方ない。大分、モンスターは減っているみたいだけど、何故か最初よりも数が増えている気がする。

「後から追加してくるタイプか……蒼天竜が追加されていないだけマシかな」

 増えているモンスターは、蒼天竜以外のモンスターだけだった。どんなモンスターでも倒した先から追加されてくるタイプなら、蒼天竜も復活している可能性があったけど、現状、その兆候は見られない。地面に着地して、即座に黒いスライムを掴んで吸う。
 手のひらが、かなり痛む。即座に血液で手を防護して吸い続ける。ドブ以上の何かを飲んでいるかのような感じで、吐き気が凄まじい。さらに、喉を焦がすような感覚がする。この黒蝕スライムっていうのは、普通のスライムよりも強酸なのかもしれない。でも、スライムである以上、私の敵では無い。全てを飲み干し、後ろから襲ってきた赤兎に裏拳を当てる。ただ、赤兎が持っていた大槌の柄で防がれた。
 そこに、白鴉が上から突撃してくる。見覚えのある戦法なので、即座に首を掴んで身体に噛み付いて、そのまま血を吸う。顎の力が強くなっているので、暴れたところで放してしまうことはない。そのままの状態で、襲い掛かってくる赤兎の攻撃を防ぐ。赤兎は、速度が異常に速い。でも、この速さは覚えがある。というか、自分自身で味わったもの。【神脚】による移動だ。それに、【空力】も持っているらしい。空中での加速をしていたから、間違いない。白鴉の血を吸い尽くして、赤兎の攻撃を防ぎ、首を掴んで項に噛み付いて血を飲み干す。

「小さい相手なら、エンカウントボスみたいなのでも飲み干せる。顎の力が上がったのが大きいかな」

 速度で攻めてくる赤兎をあしらいながら、ちゃんと成長しているという事を実感する。赤兎、白鴉、黒蝕スライムを倒して回っていると、夜霧の執行者と戦っているアカリを見つける。攻撃力が不足しているアカリでは、夜霧の執行者の足止めは出来ても、倒しきる事は出来ない。

「アカリ!」

 【武闘気】を纏い、双血剣を大槌に変えて真横から叩きつける。夜霧の執行者は、少しだけ吹っ飛んでいった。さすがに重い相手だから、これは仕方ない。レインは、雨男に対応していて、こっちに来られない。ライとエレクは、アク姉達と一緒にコーラルタートルなどと戦っている。ソイルは、ジャイアントサンドマンとサンドワームを倒している。エアリーは、スノウと一緒にドラゴン系と戦っている。元々エアリーが戦っていたけど、そこにスノウが加わったって感じかな。
 吹っ飛んだ夜霧の執行者に、さらに大槌をぶつける。それを両手剣で防いできたところで、影で脚を掴んで引っ張り、極端に圧縮した風をぶつけて、夜霧の執行者を蹌踉めかせる。ここを利用して、力一杯ぶん殴り夜霧の執行者を転がす。うつ伏せになった夜霧の執行者に、スパイクを着けた大槌で、何度もぶつけていく。両手剣で防ごうとしていたけど、それは間に合わず、私の連続スタンプで、夜霧の執行者は、どんどんとHPを減らしていく。
 さらに、【影武装】を付ける事で、鎧を削いでいく。防御力が下がっていくので、ダメージ量も増えていく。さらに、【竜王息吹】を吐きかけて、ダメージ量を稼いでいく。おかげで、三分程で倒せた。
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