247 / 467
高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女
あの頃からの成長
しおりを挟む
夜霧の執行者を見た私とスノウは空を飛んで、アク姉達の元に戻ってきた。そして、すぐにアク姉達に報告する。
「夜霧の執行者が混じってた」
「げっ……滅茶硬で有名なやつじゃない。ハクちゃんの吸血でどうにかならない?」
私が【吸血】を使って倒した事を知っているアメスさんがそう訊いてくる。
「出来るとは思いますけど、時間が掛かるかもしれないです。なので、一つやりたい事があるのですが」
「もしかして、その口の中が光っているのと関係あるのかしら?」
アメスさんが指摘する通り、私の口の中は、今青く光っている。【蒼天】のチャージをしている際の現象だ。これを私は空を飛びながら、ずっと溜めていた。
「はい。一度、【蒼天】で吹き飛ばせるか試してみたいと思います。デメリットも自分で解決出来ますし、沈黙状態は、そこまで問題になりませんから。もし、これで倒せないのであれば、【始祖の吸血鬼】で倒します。その時は、ソイルに援護を任せるね」
『うん……』
声的には自信なさげだけど、その顔には任せて欲しいという意志を感じる。相手が地面にいるのであれば、ソイルはかなり強い。それに、水を出さないといけないレインよりも、夜霧の執行者の足止めに向いていると判断した。エアリーによる風の拘束とかでも良いけど、土とかによる物理的な拘束の方が夜霧の執行者への拘束に向いているかもという風に考えた。
そうこう言っている間に、喉が熱くなってきた。【蒼天】が最低限までチャージ出来た合図だ。皆よりも前に出て、夜霧の執行者がいる場所目掛けて【蒼天】を放つ。
強力な熱線が地を走り、夜霧の執行者を飲み込む。その前にいたフォレストリザードや黒帝ゴリラ、ジャイアントトードは、三秒も保たずに消滅した。さらに、熱線の周囲にいるモンスター達も余波でダメージを受けている。
ただ、夜霧の執行者を倒せた感じがしない。夜霧の執行者の奥にいるモンスターの一部は倒せているのだけど、真後ろにいるモンスターに関しては、まだ倒れてもいなかった。【蒼天】が終わった後、その姿を肉眼でも確認出来た。HPも三割程しか削れていない。
夜霧の執行者は、両手剣を地面に突き刺して盾のようにし、さらに両手を交差させていた。たったこれだけで、【蒼天】に耐えたという事実に驚きを隠せない。
でも、行動には移す。【電光石火】で一気に夜霧の執行者の背後に移動する。そのまま【疾風迅雷】で溜めた雷を【雷電武装】で拳に集中させ、【武闘気】で強化し、夜霧の執行者を殴る。雷が夜霧の執行者の身体に流れて、麻痺状態になる。その隙を突いて、背中に飛び乗り鎧に魔力の牙を立てる。一度味わったあの味が帰ってくる。しかも、今の私は感覚を強化されているので、さらに不味さが上がっていた。これならマッドパペットを飲んでいた方がマシなくらいだ。
でも、嬉しい事が一つだけあった。それは、夜霧の執行者のHPの減る速度がかなり上がっていた事だ。この調子なら五分もしないで倒せる。最初期からいるモンスターで、異常な硬さを誇る夜霧の執行者だけど、【始祖の吸血鬼】による吸血には耐えきれないらしい。
そして、周囲にいたモンスター達は、群がってくる事なく倒されていった。その理由は簡単で、ソイルが地面の操り、地下へと叩き落として、そのまま地面を元の状態に戻すことで圧殺していたからだ。さらに、夜霧の執行者の手足を地面に埋めている。四つん這いの状態になっている夜霧の執行者に、私がおんぶされているかのような格好だ。
ソイルの活躍で、ボスモンスター達は軒並み倒され、残るは夜霧の執行者。その夜霧の執行者も、身動きが取れずに吸い殺された。そうして手に入れたスキルは、【大剣】だった。既に【武芸千般】に統合されているので、経験値にしかならない。
「やっぱり夜霧の執行者から新しいスキルは手に入らないか」
夜霧の執行者に関する本を見つけて読んだ時に、私が持っているスキルしか書かれていなかったから、あまり期待していなかったから、そこまでショックはない。寧ろ、それだけのスキルで、その頑丈さなのと思わされた程だし。
「これで三波もクリア」
一旦、空を飛んで地面と距離を取る。そして、すぐに四波が始まる。次に出て来たのは、さっきよりも少ない数だった。全部で三体。でも、その全てが夜霧の執行者だった。
「うわぁ……さすがにないでしょ……」
普通に戦えば、かなり苦戦する夜霧の執行者が三体もいるという事実に、運営の意地悪を感じる。【吸血】の扱いとかもそうだけど、割とそういう事がある気がする。
「レイン! ソイル! エアリー! ライ!」
四人の名前を呼んで、私は一旦後ろに退く。私が離れた瞬間に夜霧の執行者達と中心として、天変地異が発生した。空から雷が降り注ぎ、地面が反旗を翻して夜霧の執行者を飲み込み、その地面ごと完全に凍結させ、真空の刃が氷と地面ごと粉々に砕く。それだけで、夜霧の執行者はあっさりと倒された。
「……まぁ、こっちもないか」
さっき運営の手腕にちょっとした苛つきを覚えたけど、レイン達が異次元過ぎる事が改めて思い知らされ、心の中で謝罪しておく。
アク姉達の元に戻ってきたのと同時に、五波が始まった。モンスターは、多種に渡るモンスター達。全部で百体以上どころか千体近くいるようにも見える。今度の波は、ボスモンスターはいないけど、物量で攻める形らしい。それも精霊達で全滅した。やっぱり、レイン達がいる事が圧倒的なアドバンテージになっている。
ただ、精霊の力が絶対ではないという事も私は知っている。過信はしていられない。
「アク姉」
「分かってるよ。こっちも準備は整ってるから、安心して」
アク姉達は魔法を溜め込むスキルを持っている。だから、レイン達が倒している間に、それを頼もうと思っていたけど、すでにやっていた。さすがは、アク姉だ。
六波、七波も数が多くなっただけで、物量での攻めで来ていた。なので、レイン達であっさりと倒す事が出来た。
「本当に凄いですね。精霊が、ここまでの力を持っているとは思いませんでした」
鎧に身を包んだ籠もった声で、トモエさんが言っていた。確かに、実際のレイン達の戦いを見るのは初めてのはずなので、トモエさんが驚くのも無理は無い。
レイン達が倒してくれたおかげで、そのまま八波まで進んでいく。レイン達がいなかった事を考えると、結構戦っている事になるはず。それでも終わる気配はない。
「これって、後どのくらい続くのかな?」
「う~ん、メタ的に考えると十かな。でも、ここのイベントって、結構長いから二十とかもあり得るかな」
メイティさんの答えに、ちょっと納得してしまった。確かに、ワンオンのイベントは、時間的に結構長めが多いので、二十くらいあってもおかしくない。そう考えると、まだ半分も進んでいないという事になる。
もしかしたら、ここから本番という可能性も否定しきれない。気を引き締めないと。
「夜霧の執行者が混じってた」
「げっ……滅茶硬で有名なやつじゃない。ハクちゃんの吸血でどうにかならない?」
私が【吸血】を使って倒した事を知っているアメスさんがそう訊いてくる。
「出来るとは思いますけど、時間が掛かるかもしれないです。なので、一つやりたい事があるのですが」
「もしかして、その口の中が光っているのと関係あるのかしら?」
アメスさんが指摘する通り、私の口の中は、今青く光っている。【蒼天】のチャージをしている際の現象だ。これを私は空を飛びながら、ずっと溜めていた。
「はい。一度、【蒼天】で吹き飛ばせるか試してみたいと思います。デメリットも自分で解決出来ますし、沈黙状態は、そこまで問題になりませんから。もし、これで倒せないのであれば、【始祖の吸血鬼】で倒します。その時は、ソイルに援護を任せるね」
『うん……』
声的には自信なさげだけど、その顔には任せて欲しいという意志を感じる。相手が地面にいるのであれば、ソイルはかなり強い。それに、水を出さないといけないレインよりも、夜霧の執行者の足止めに向いていると判断した。エアリーによる風の拘束とかでも良いけど、土とかによる物理的な拘束の方が夜霧の執行者への拘束に向いているかもという風に考えた。
そうこう言っている間に、喉が熱くなってきた。【蒼天】が最低限までチャージ出来た合図だ。皆よりも前に出て、夜霧の執行者がいる場所目掛けて【蒼天】を放つ。
強力な熱線が地を走り、夜霧の執行者を飲み込む。その前にいたフォレストリザードや黒帝ゴリラ、ジャイアントトードは、三秒も保たずに消滅した。さらに、熱線の周囲にいるモンスター達も余波でダメージを受けている。
ただ、夜霧の執行者を倒せた感じがしない。夜霧の執行者の奥にいるモンスターの一部は倒せているのだけど、真後ろにいるモンスターに関しては、まだ倒れてもいなかった。【蒼天】が終わった後、その姿を肉眼でも確認出来た。HPも三割程しか削れていない。
夜霧の執行者は、両手剣を地面に突き刺して盾のようにし、さらに両手を交差させていた。たったこれだけで、【蒼天】に耐えたという事実に驚きを隠せない。
でも、行動には移す。【電光石火】で一気に夜霧の執行者の背後に移動する。そのまま【疾風迅雷】で溜めた雷を【雷電武装】で拳に集中させ、【武闘気】で強化し、夜霧の執行者を殴る。雷が夜霧の執行者の身体に流れて、麻痺状態になる。その隙を突いて、背中に飛び乗り鎧に魔力の牙を立てる。一度味わったあの味が帰ってくる。しかも、今の私は感覚を強化されているので、さらに不味さが上がっていた。これならマッドパペットを飲んでいた方がマシなくらいだ。
でも、嬉しい事が一つだけあった。それは、夜霧の執行者のHPの減る速度がかなり上がっていた事だ。この調子なら五分もしないで倒せる。最初期からいるモンスターで、異常な硬さを誇る夜霧の執行者だけど、【始祖の吸血鬼】による吸血には耐えきれないらしい。
そして、周囲にいたモンスター達は、群がってくる事なく倒されていった。その理由は簡単で、ソイルが地面の操り、地下へと叩き落として、そのまま地面を元の状態に戻すことで圧殺していたからだ。さらに、夜霧の執行者の手足を地面に埋めている。四つん這いの状態になっている夜霧の執行者に、私がおんぶされているかのような格好だ。
ソイルの活躍で、ボスモンスター達は軒並み倒され、残るは夜霧の執行者。その夜霧の執行者も、身動きが取れずに吸い殺された。そうして手に入れたスキルは、【大剣】だった。既に【武芸千般】に統合されているので、経験値にしかならない。
「やっぱり夜霧の執行者から新しいスキルは手に入らないか」
夜霧の執行者に関する本を見つけて読んだ時に、私が持っているスキルしか書かれていなかったから、あまり期待していなかったから、そこまでショックはない。寧ろ、それだけのスキルで、その頑丈さなのと思わされた程だし。
「これで三波もクリア」
一旦、空を飛んで地面と距離を取る。そして、すぐに四波が始まる。次に出て来たのは、さっきよりも少ない数だった。全部で三体。でも、その全てが夜霧の執行者だった。
「うわぁ……さすがにないでしょ……」
普通に戦えば、かなり苦戦する夜霧の執行者が三体もいるという事実に、運営の意地悪を感じる。【吸血】の扱いとかもそうだけど、割とそういう事がある気がする。
「レイン! ソイル! エアリー! ライ!」
四人の名前を呼んで、私は一旦後ろに退く。私が離れた瞬間に夜霧の執行者達と中心として、天変地異が発生した。空から雷が降り注ぎ、地面が反旗を翻して夜霧の執行者を飲み込み、その地面ごと完全に凍結させ、真空の刃が氷と地面ごと粉々に砕く。それだけで、夜霧の執行者はあっさりと倒された。
「……まぁ、こっちもないか」
さっき運営の手腕にちょっとした苛つきを覚えたけど、レイン達が異次元過ぎる事が改めて思い知らされ、心の中で謝罪しておく。
アク姉達の元に戻ってきたのと同時に、五波が始まった。モンスターは、多種に渡るモンスター達。全部で百体以上どころか千体近くいるようにも見える。今度の波は、ボスモンスターはいないけど、物量で攻める形らしい。それも精霊達で全滅した。やっぱり、レイン達がいる事が圧倒的なアドバンテージになっている。
ただ、精霊の力が絶対ではないという事も私は知っている。過信はしていられない。
「アク姉」
「分かってるよ。こっちも準備は整ってるから、安心して」
アク姉達は魔法を溜め込むスキルを持っている。だから、レイン達が倒している間に、それを頼もうと思っていたけど、すでにやっていた。さすがは、アク姉だ。
六波、七波も数が多くなっただけで、物量での攻めで来ていた。なので、レイン達であっさりと倒す事が出来た。
「本当に凄いですね。精霊が、ここまでの力を持っているとは思いませんでした」
鎧に身を包んだ籠もった声で、トモエさんが言っていた。確かに、実際のレイン達の戦いを見るのは初めてのはずなので、トモエさんが驚くのも無理は無い。
レイン達が倒してくれたおかげで、そのまま八波まで進んでいく。レイン達がいなかった事を考えると、結構戦っている事になるはず。それでも終わる気配はない。
「これって、後どのくらい続くのかな?」
「う~ん、メタ的に考えると十かな。でも、ここのイベントって、結構長いから二十とかもあり得るかな」
メイティさんの答えに、ちょっと納得してしまった。確かに、ワンオンのイベントは、時間的に結構長めが多いので、二十くらいあってもおかしくない。そう考えると、まだ半分も進んでいないという事になる。
もしかしたら、ここから本番という可能性も否定しきれない。気を引き締めないと。
21
お気に入りに追加
172
あなたにおすすめの小説
吸血少女 設定資料集(おまけ付き)
月輪林檎
SF
『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。
さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。
基本的に不定期更新です。
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~
滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。
島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる