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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

精霊女王の血瓶

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 優勝メッセージが流れたので、空から降りてフレ姉達と合流する。

「よっと、思ったよりも早く倒し終えたね。今回は、中央に向かうプレイヤーが多かったからなのかな?」
「そうだな。パーティーを組むために、より遭遇率を上げようとする考えになるからな。まぁ、正直、今回は運が良かったと考えるべきだろう。私達が揃ってパーティーを組めたわけだからな。特にソルとアクアがいるという事が大きい。物理と魔法で最強格に入るだろうからな」
「ふふん!」

 フレ姉に褒められて、アク姉が胸を張ってドヤ顔をしていた。フレ姉に向かってだけど。恐らくそれがムカついたフレ姉によって、フェイスクローを食らい、腕を叩いてタップしていた。いつもの事なので、それは放っておく。

「ソルさんも組んでくれてありがとうございました」
「ううん。こっちこそ、ありがとう。おかげで楽しいイベントになったよ。まさかの人達とも出会えたしね」

 これは、フレ姉とゲルダさんの事を言っているのだと思う。まさかの現実での同僚だし。ソルさんにお礼を言えたところで、私達も転移して広場に移された。優勝賞品として、選択式レアアイテムボックスが配られた。
 この場だと周囲がうるさいから、すぐにギルドエリアに転移する。一応、フレ姉とゲルダさんには、その旨のメッセージを送っておく。探されると悪いから。

「おかえり。どうだった?」
「ただいま、アカリ。優勝したよ。ソルさん、フレ姉、ゲルダさん、アク姉、メイティさんと組めたから」
「うわぁ……割と隙がないパーティーだね。攻撃力過多な気もするけど」

 アカリの言う通り、攻撃力過多なパーティーではあった。攻撃重視に振っているプレイヤーが、六人中四人だったから。メイティさんは支援系だし、私は色々とこんがらがったスキル構成だから、攻撃重視とは言い難い。

「圧倒的だったよ。闘技場のランキング一位の人が挑んできたけど、ソルさんが倒してくれたから」
「へぇ~、闘技場の一位の人って、確かプライドの塊みたいな人なんじゃなかったっけ?」
「よく知ってるね。本当にプライドの高い人っぽかったよ。私とかソルさんが闘技場に行かないから、このゲームの最強になれないみたいな事言ってた」
「おぉ……掲示板通りの人だね。でも、実力はある人のはずだけど。闘技場での戦いはやらせとかないみたいだからね。闘技場だと、基本的に一対一の戦いだから、一人で攻防担える人が上位に上がるみたい」

 それを言われると、アーサーが一位になった理由が分かる。圧倒的攻撃力でゴリ押しというソルさんのような方法で攻略出来る人は少ない。フレ姉なら出来るかもしれないけど。
 私もトリッキーなスキルが多いから、そこから攻めれば倒せると思うけど、私以外には取れない方法だ。【吸血】を持っていれば、出来なくはないけど。

「変なトラブルになりそう?」
「あれでトラブルになるなら、何でもトラブルになると思う。真っ正面から戦って負けている訳だし。それより、一つ気になってたんだけど、あの煙って何?」

 さっきからギルドエリアの一画で黒い煙が上がっていた。

「あぁ……えっと……実験室で色々と調合してたんだけど……ちょっとミスって吹っ飛んじゃった」
「おぅ……」
「レインちゃんに消火をして貰ったから、取り敢えず大丈夫だよ」
「ん? うん。まぁ、そうだね」

 爆発した時点で大丈夫ではないのではと思ったけど、一応頷いておいた。

「そうだ。優勝賞品も開けてみないと」

 優勝賞品である選択式レアアイテムボックスを開いてみる。出て来たアイテムは、『咎人の刻印』『煉獄の黒焔』『精霊女王の血瓶』の三つだった。アカリにも見えるようにして、一緒に選ぶ。

「一択じゃない?」
「よくお分かりで」

 この中で取りたいと思うのは、精霊女王の血瓶だった。アカリも私が選ぶものをすぐに分かったらしい。まぁ、いつも選んでいる種類だしね。
 精霊女王の血瓶を受け取り取り出すと、エアリーが飛んできた。

『私達の女王の血ですね』
「エアリー。うん。精霊女王の血瓶だよ」
『お飲みになるのですか?』
「そのつもりだけど、エアリー達からしたら嫌なのかな?」

 精霊であるエアリー達からしたら、女王の血を飲まれる事に嫌悪感を抱く可能性はある。そう思っていると、エアリーはきょとんとしていた。

『いえ、特に何も思いませんので、お気になさらないで下さい。それに、お姉様のお身体には既に女王の血が含まれていらっしゃいますので』
「……へ?」
「ハクちゃんのスキルに、精霊女王の血みたいなのがあるって事?」
『いえ、過去にお飲みになったのではないでしょうか?』

 私とアカリは顔を見合わせる。

「あれじゃない? イベントの宝箱で拾ったやつ」
「だよね。あれだけ???の血瓶で名前が分からなかったけど、それが精霊女王の血瓶だったのなら、納得がいく。という事は、これを飲んでも意味がない?」
『いえ、女王の血ですので意味がないとはならないと思います』
「そう? じゃあ、飲も」

 精霊女王の血瓶を飲むと、身体に温かいものが流れていく感覚がしていった。全然痛みとかはないから、ちょっと新鮮な感じだ。

「本当にもう慣れたんだなぁ」
「良かったね。そうだ。これも飲んでみる?」

 そう言って、アカリが赤黒い液体の入ったフラスコを渡してきた。

「何これ? うわっ……血の臭い……」
「超濃縮血液。適当に濃縮していたら出来たんだ」
『身体に悪そうですね』
「私にとっては良いかもしれないけどね……えっ、これ飲み物?」
「いや、素材だよ。でも、ハクちゃんには飲み物でしょ?」

 まぁ、確かに飲み物だけど、この濃度の血液は、ちょっとどうかと思う。

「何事も挑戦か」

 私は一気に飲む。味が濃厚過ぎる。普段の鉄の味を百倍にしたような感じだ。さらに、血の臭さが強すぎる。いつも以上の吐き気に襲われながら飲み干した。

「大丈夫? 顔青いけど……」
「ここでも青くなるのか……うわっ、回復量えぐっ……【貯蔵】が一気に埋まった」
「おぉ……持ってく?」
「……持ってく」

 アカリから超濃縮血液を百本貰う。これで、緊急で回復したい時に使える。使いたくないけど。

「はぁ……良し! 家畜の世話してくる」
「いってらっしゃい。私は実験室を建て直してくる」
『お姉様、お手伝いします』
「ありがとう」

 エアリーと一緒に家畜の世話をしていく。ただやるといってもブラシで擦ってあげたり牛乳を搾ったりするくらいで、餌や水、厩舎の掃除はエアリー達がやってくれていた。畑の方に関しては、もう精霊達だけで完結している。私がやる事はない。

「よし。これで終わり。肥料とかはソイルが作ってくれてるんだよね?」
『はい。羊の毛刈りも済ませてあります』
「ありがとうね」
『いえ、お気になさらず。私達も好きでやっていますから』

 家畜の世話を済ませた後、時間が余ったので、平原に向かって弓の練習をする。イベントで使った事を機に戦法に組み込もうと考えたからだ。スライムの核を正確に射貫くのは、結構練習になる。
 夕飯になるまで練習を続けて、夜は空中戦闘の練習をするために、山脈エリアでレッサーワイバーンと戦った。人相手とレッサーワイバーン相手では、やっぱり大きさが違う。レッサーワイバーンの方が大きいから攻撃が当たりやすく、戦いやすい。【捕縛糸】を使った戦い方は、人相手の方が効果的だという事も分かった。レッサーワイバーンの身体には、【捕縛糸】の強度が足りない。【強靭糸】を上手く絡める方が効果的だ。
 因みに、レッサーワイバーンに弓は結構使えた。でも、普通に斬った方が早い。これは、何にでも変わらないかな。私のメインの戦い方だし。
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