上 下
203 / 365
高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

息抜きの農作業

しおりを挟む
 ギルドエリアに転移した私の元にエレクが寄り添ってきた。まだ、厩舎がないから、外に出っぱなしみたいだ。

「あっ、ハクちゃん!」

 どうしたものかと悩んでいると、屋敷の方からアカリが駆けつけてきた。

「アカリ。紹介するね。エレクだよ」
「あ、うん。アカリだよ。よろしくね」

 アカリが挨拶すると、エレクが頭を下げた。アカリを認識してくれたみたいだ。

「エレクの厩舎なんだけど、スノウと同じところになるかな?」
「そうだね。スノウちゃんが良いなら、隣に建てられるけど」
「スノウ」

 スノウの名前を呼ぶと、厩舎から飛び出してくる。スノウは、私の隣にいるエレクを見て、首を傾げる。アク姉達の時と同じような感じだ。

「スノウ、新しい仲間のエレクだよ。エレク、こっちは先輩のスノウ。二人とも仲良くしてね」
『ガァ!』
『ブルル』

 二人とも仲良くやってくれそうだ。そこに、レインも駆け寄って来た。

「レイン、今、大丈夫?」
『うん。その子は?』
「エレク。新しい子だよ。こっちは、レイン。レインとも仲良くしてね」
『ブルル』
『よろしくね』

 レインとも仲良く出来そうだ。これなら、スノウの隣に厩舎を建てても平気だろう。レインに関しては、泉に住んでいるから、あまり関係ないかもだけど。

「大丈夫そう」
「だね。それじゃあ、スノウちゃんの家の隣に建てるね」

 アカリが、エレクの厩舎を建ててくれる。そこにエレクを案内すると、エレクは迷わず自分の厩舎の中に入った。そして、寝藁の上で座る。まぁ、そこそこ気に入ってくれたみたいだ。

「色々と訊きたい事があるんだけど、アカリは時間ある?」
「うん。大丈夫」
「そうだ。レイン。これ空いている畑に植えておいて」

 レインに向日葵と彼岸花とランダムの花の種を渡す。

『うん。分かった』

 レインが畑に向かって、スノウも自分の厩舎に戻ったのを見てから、屋敷の共有部屋に入った。二人で椅子に座ってから話を始める。

「ライトニングホースをテイムしたっていう話って聞く?」
「ううん。やっぱり、テイムモンスターの情報は、全然ないよ。連れているのを見ても、ホワイトラビットとかコボルトとかかな。エレクちゃんは、またイベント?」

 スノウとレインがイベントで仲間になっているので、エレクも同じようなイベントで仲間にしたと思われたみたいだ。

「違う……と思う。スノウ達みたいなイベントは起こってないし、戦って倒したら、ポリゴンにならないで起き上がった」
「それ戦闘勝利後のテイムだね。掲示板に載っていたのを見た事あるよ」
「じゃあ、ランダムでのテイム?」
「どうだろう? エンカウントボスもボスって扱いだろうし、さすがに、ランダム要素だけでテイム出来るとは思えないけど。何か特別な事しなかった?」
「う~ん……乗馬?」
「それだ。今までも背中に乗ったみたいな話はあるけど、どれも継続ダメージと麻痺で降りる事になったみたいだし、乗り続けた人は振り落とされたって」

 これまでライトニングホースと戦ったプレイヤー達が掲示板で書いたであろう情報を、アカリが調べてくれた。

「あ~、なるほど。私は血を手綱にしたし、影で身体を固定してたから。後、【防影】のおかげで、継続ダメージは無効化出来たし。その後は、落雷も【夜霧化】と【蓄積】で耐えられたから、最後まで乗り続けられたから、条件を達成したって事なのかな」
「それはあり得そう。後は、乗馬で御する事が出来たかとか」
「乗っている時に進路を変えさせたから、それはあるかもね。単純なランダムテイムよりも、そっちの方が納得出来そう。まぁ、テイム出来た話は、これくらいにして、もう一つ確認したいんだよね。ライトニングホースを倒したのって、私が最初?」
「ううん。それよりも前に一度倒されてるよ」
「えっ、一度?」

 さっき色々な情報が出て来ていたから、割と倒されている可能性もあるかと思ったけど、たったの一度だけだったらしい。

「じゃあ、あの初回討伐報酬は、全員に与えられるものって事か」
「そうだね。フレイさんが、この前ようやく夜霧の執行者を倒せて、スキルを手に入れたって言ってたし」
「えっ……私聞いてない」
「そりゃ、お店に来た時に言ってた事だしね」
「う~ん……まぁいいや。それじゃあ、私の他に【雷足】を持っている人がいるのか」
「どんなスキル?」

 アカリに訊かれたので、【雷足】の説明を出して見せる。

────────────────────────

【雷足】:足に雷を纏わせて、高速で移動する事が出来る。控えでも効果を発揮する。

────────────────────────

「これってどのくらいの速さ?」
「まだ使ってないから分からないけど、さすがに、雷と同じ速さにはならないんじゃないかな。制御しきれないだろうし」
「でも、控えで発動出来るのは良いね。使いやすいし」
「まぁね」

 これから高速移動にバリエーションが増えるって考えれば、私にとってかなり良いスキルだ。

「後は、エレクちゃん……そういえば、またちゃんって付けちゃったけど、女の子?」
「え~っと……ん? テイムモンスターの情報に性別が追加されてる。皆、女の子だって」

 いつの間にかアップデートで増えていたらしい。特に確認する事があるわけじゃないので、今まで気付かなかった。スノウも女の子だという事が分かった。レインは見た目から女の子だけど。

「ハーレムだね」
「まぁ、そうなるのかな」
「それで、エレクちゃんに関してだけど、いつでも放牧出来るようにしておく?」
「そうだね。馬だし、いつでも走れるようにした方がのびのびと出来るだろうしね。何か設定出来るの?」
「一応ね。エレクちゃんの行動範囲を何もない場所とかに設定出来るの。畑とかに入っちゃったら困るでしょ?」

 確かに、そんな事にならないとは思うけど、エレクが間違って畑を荒らしちゃったら困る。そこを規制する事が出来るのはありがたい。

「それなら、スノウも畑に入らないようにしておいて。これまで何ともなかったから、大丈夫だと思うけど、一応ね」
「了解。それと、家畜用の牧場を建てておいたから。場所は、畑の奥で、レインちゃんの泉の隣だよ。後で確認しておいて」
「了解。そうだ。ダンジョンでオルトロスの素材を沢山集めたから、共有ストレージにある程度入れておくね」
「ありがとう」
「後、これいる?」

 私は、ダンジョンの宝箱から手に入れた鋼鉄の大剣を取り出す。

「いる。実験に使えそう。ありがとう」

 そう言って、アカリが鋼鉄の大剣分のお金をくれる。普段、私が無理矢理お金を貰わせているので、ここで貰わないわけにもいかない。金欠だし、有り難く受け取る。

「さてと、私は畑仕事をしてくるね。種が増えたから、多分、今空いている畑だけじゃ足りないだろうし」
「うん。そうだ。色々と試作品で作ったアイテムがあるから、共同倉庫を見ていって」
「外のやつ?」
「うん。アクアさん達にも使って貰いたいからね。ハクちゃんが使えそうなアイテムがあれば、自由に持っていって」
「了解。じゃあね」
「うん。またね」

 アカリと別れて、共有ストレージにある程度素材を入れた後、外にある共有倉庫に向かった。そこに試作品という看板が掛かったストレージが置かれていた。

「こんな事も出来るんだ。えっと……うわぁ……レインのおかげで、聖属性のアイテム多……回復系も多いなぁ。聖属性が、そういうものになりやすいのかな。適当に持っていこうかな。回復系も変な事に使えるかもだし」

 面白そうと判断したアイテムを貰っていく。そして、畑の方に行くと、水を撒いているレインの姿があった。

「レイン、畝は足りた?」
『ううん。種が余ったよ』
「やっぱりね。畑を増やすから、準備が出来たら種まき手伝ってね」
『うん!』

 装備を農業用に変更して、【大地操作】で土を耕してから、堆肥を混ぜる。鍬無しでも出来るので、便利だ。これでも【農作】のレベル上げは出来るし。畑の準備が出来たら、レインと一緒に種を蒔いていってから、レインの水撒きを見守りつつ、収穫出来るものを収穫していく。
 レインは几帳面な性格のようで、畑に蒔かれた種は種類毎に固められていた。肥料も使っておいたので、生長は早いはず。

「さてと、このくらいかな。それで、向こうが牧場か。もう厩舎も建てられてる。あれが牛。あっちが豚。向こうが鶏。最後のが羊かな? 購入画面と見比べただけだから、ちゃんとは分からないけど。世話をするのに、スキルがあった方が良いから、もう少し世話を続けよ」

 それから、夕飯の時間まで畑の世話を続けた。ちょっと無駄に畑を広げすぎた感じがするけど。まぁ、広い場所だし土地を無駄にするよりはいいはず。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

トロイメア・オンライン! 〜ブラコンでロリ巨乳の私は、クソザコステータス『HP極振り』と残念魔法『自爆魔法』で、最強で快眠な女子になります〜

早見羽流
SF
不眠症治療のための医療用VRデバイス『トロイメギア』を病院で処方された女子高生――小見心凪。 彼女が『トロイメギア』でプレイするのはサービス開始したばかりのフルダイブ型VRMMOの『トロイメア・オンライン』だった! よく分からずとりあえずキャラエディットで胸を盛ってしまった心凪。 無自覚のうちで編み出した戦法は、脱衣からの自爆魔法という誰も見向きもしなかったかつ凶悪千万なもの! 見た目はロリっ子、中身はハイテンションJKの心凪が、今日も元気に敵と仲間を巻き込みながら自爆するよ! 迷惑極まりないね! 心凪は果たして自爆魔法で最強になれるのか! そして不眠症は治るの? そんなに全裸になって大丈夫なの!? 超弩級のスピード感と爽快感で読者のストレスをも吹き飛ばす。ちょいエロなVRバトルコメディー! ※表紙、挿絵はリック様(Twitter→@Licloud28)に描いていただきました。

【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ
SF
 昔は政府の諜報機関を司っていた名家に生まれ、お嬢様として育った風間奏音(かざまかのん)はしかし、充実感の無い日常に苛立ちを覚えていた。  そんなある日、高校で再会した幼馴染に気分転換にとVRMMOゲームを勧められる。この誘いが、後に世界一有名で、世界一恐れられる"最恐"プレイヤーを世に生み出す事となった。  奏音はゲームを通して抑圧されていた自分の本音に気がつき、その心と向き合い始める。    彼女の行動はやがて周囲へ知れ渡り「1人だけ無双ゲームやってる人」「妖怪頭潰し」「PKの権化」「勝利への執念が反則」と言われて有名になっていく。  恐怖の料理で周囲を戦慄させたり、裏でPKクランを運営して悪逆の限りを尽くしたり、レイドイベントで全体指揮をとったり、楽しく爽快にゲームをプレイ! 《Inequality And Fair》公平で不平等と銘打たれた電脳の世界で、風間奏音改め、アニー・キャノンの活躍が始まる!

超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
★お気に入り登録ポチリお願いします! 2024/3/4 男性向けホトラン1位獲得  難病で動くこともできず、食事も食べられない俺はただ死を待つだけだった。  次に生まれ変わったら元気な体に生まれ変わりたい。  そんな希望を持った俺は知らない世界の子どもの体に転生した。  見た目は浮浪者みたいだが、ある飲食店の店舗前で倒れていたおかげで、店主であるバビットが助けてくれた。  そんなバビットの店の手伝いを始めながら、住み込みでの生活が始まった。  元気に走れる体。  食事を摂取できる体。  前世ではできなかったことを俺は堪能する。  そんな俺に対して、周囲の人達は優しかった。  みんなが俺を多才だと褒めてくれる。  その結果、俺を弟子にしたいと言ってくれるようにもなった。  何でも弟子としてギルドに登録させると、お互いに特典があって一石二鳥らしい。  ただ、俺は決められた仕事をするのではなく、たくさんの職業体験をしてから仕事を決めたかった。  そんな俺にはデイリークエストという謎の特典が付いていた。  それをクリアするとステータスポイントがもらえるらしい。  ステータスポイントを振り分けると、効率よく動けることがわかった。  よし、たくさん職業体験をしよう!  世界で爆発的に売れたVRMMO。  一般職、戦闘職、生産職の中から二つの職業を選べるシステム。  様々なスキルで冒険をするのもよし!  まったりスローライフをするのもよし!  できなかったお仕事ライフをするのもよし!  自由度が高いそのゲームはすぐに大ヒットとなった。  一方、職業体験で様々な職業別デイリークエストをクリアして最強になっていく主人公。  そんな主人公は爆発的にヒットしたVRMMOのNPCプレイヤーキャラクターだった。  なぜかNPCなのにプレイヤーだし、めちゃくちゃ強い。  あいつは何だと話題にならないはずがない。  当の本人はただただ職場体験をして、将来を悩むただの若者だった。  そんなことを知らない主人公の妹は、友達の勧めでゲームを始める。  最強で元気になった兄と前世の妹が繰り広げるファンタジー作品。 ※スローライフベースの作品になっています。 ※カクヨムで先行投稿してます。 文字数の関係上、タイトルが短くなっています。 元のタイトル 超リアルなVRMMOのNPCに転生してデイリークエストをクリアしまくったら、いつの間にか最強になってました~年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれています〜

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン
SF
とある社会人の男性、児玉 光太郎。 彼は「Fantasy World Online」というVRMMOのゲームを他のプレイヤーの様々な嫌がらせをきっかけに引退。 新しくオフラインのゲーム「のんびり牧場ファンタジー」をはじめる。 「のんびり牧場ファンタジー」のコンセプトは、魔法やモンスターがいるがファンタジー世界で スローライフをおくる。魔王や勇者、戦争など物騒なことは無縁な世界で自由気ままに生活しよう! 「次こそはのんびり自由にゲームをするぞ!」 そうしてゲームを始めた主人公は畑作業、釣り、もふもふとの交流など自由気ままに好きなことをして過ごす。 一方、とあるVRMMOでは様々な事件が発生するようになっていた。 主人公と関わりのあったNPCの暗躍によって。 ※ゲームの世界よりスローライフが主軸となっています。 ※是非感想いただけると幸いです。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥
SF
スキル制VRMMORPG<Life Game> それは自らの行動が、スキルとして反映されるゲーム。 そこに初めてログインした少年アキは……、少女になっていた!? 路地裏で精霊シルフと出会い、とある事から生産職への道を歩き始める。 ゲームで出会った仲間たちと冒険に出たり、お家でアイテムをグツグツ煮込んだり。 そんなアキのプレイは、ちょっと人と違うみたいで……? ------------------------------------- ※当作品は小説家になろう・カクヨムで先行掲載しております。

『ライフで受けてライフで殴る』これぞ私の必勝法

こまるん
SF
『すべてライフで受けちゃえば、ゲーム上手くなくてもなんとかなるんじゃない?』 「Infinite Creation」 株式会社トライアングルが手掛ける、最新のVRMMOである。 無限の創造性という謡い文句に違わず、プレイヤーたちを待ち受けるのはもう一つの世界。 この自由度の高いオープンワールドで、主人公「桐谷深雪(PNユキ)」は、ある突飛な遊び方を思いついた。 配信者デビューしたユキが、賑やかなコメント欄と共にマイペースにゲームを楽しんでいくほんわかストーリー。今ここに始まる。 何をどう間違ったのか。ただいま聖女として歩く災害爆進中!!

私たちだけ24時間オンライン生産生活

滝川 海老郎
SF
VR技術が一般化される直前の世界。予備校生だった女子の私は、友人2人と、軽い気持ちで応募した医療実験の2か月間24時間連続ダイブの被験者に当選していた。それは世界初のVRMMORPGのオープンベータ開始に合わせて行われ、ゲーム内で過ごすことだった。一般ユーザーは1日8時間制限があるため、睡眠時間を除けば私たちは2倍以上プレイできる。運動があまり得意でない私は戦闘もしつつ生産中心で生活する予定だ。

処理中です...