吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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真冬と真夏の吸血少女

海エリア

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 海エリアに転移した私は、まず真夏のような日差しを感じた。

「おぅ……砂漠とは、また違った不快感……さっきまで真冬にいたから、それが顕著に感じる……」

 冬服を着ているからってのもあるのかな。

『グル?』

 スノウが心配そうにこっちを見てから、上に乗っかってきた。重いけど、ひんやりとして気持ち良い。重いけど……

「大丈夫だよ、スノウ。スノウが乗るくらいじゃ、治らないから。それより、スノウの方は大丈夫?」
『ガァ!』

 雪原のモンスターだから、この真夏感が嫌かもしれないって思って聞いたけど、特に変化はないみたい。私と違って、強い子みたいだ。スノウを撫でながら、周囲を見回す。足元は、平原チックだけど、砂が混じっている。奥の方は、砂が主体になっているので、平原から砂浜までのグラデーションみたいな感じになっている。
 砂浜の奥には、水平線が見える。

「なだらかな下り坂になってる感じかな。普通に街も見える。結構奥の方だけど」

 街は、海に面している場所にあるので、私のいる場所からは、少し遠い。まっすぐ向かっても良いけど、スノウの動きとかをもう少し見たいので、少しここら辺で戦闘をしてから向こう事にした。

「それじゃあ、行こうか」

 蝙蝠を出して、マッピング範囲を広げる。その蝙蝠にスノウが興味を持って追い掛けていた。蝙蝠は、必死に逃げている。捕食されると思っているのかな。捕食……?

「スノウ、食べちゃ駄目だよ」
『ガァ!』

 分かったって返事かな。そう思いたい。少し歩いていると、【感知】に反応があった。そっちに目をやると、でかい蟹がいた。私の身長よりもでかい。下手すると、ボスになってもおかしくないのではって思ってしまう。

「蟹。蟹かぁ……食べたいなぁ」

 高速移動を連続で使い蟹に近づいて、腹に蹴りを入れる。硬い感触がしたけど、普通に罅が入った。

「硬いけど脆い」

 ここまで近づいて、名前が見えた。名前は、そのまんまジャイアントクラブ。ジャイアントクラブは、私を切り裂こうと鋏を向けてくる。

『ガァ!』

 そこにスノウが来て、その鋏を尻尾で弾いた。図ったわけじゃないと思うけど、それがパリィになってジャイアントクラブの動きが止まる。その隙に、双血剣を抜いて、鋏の付け根に突き刺して、鋏を斬り落とす。

「関節も弱い。このまま解体する!」

 鋏が残っている方の身体を、スノウがブレスで凍らせる。身動きが取れなくなったジャイアントクラブの脚を、次々と斬り落とし、半身の脚と鋏を無くした。その間に、スノウも脚を一つずつ破壊していった。

「【震転脚】」

 最後に真上から踵落としを決めて倒した。落ちたのは、ジャイアントクラブの鋏、蟹肉、蟹味噌、ジャイアントクラブの血だった。

「スノウ、蟹肉食べてみる?」
『ガァ?』

 肉って言葉に反応はしたみたいだけど、蟹肉は初めてだからか首を傾げている。なので、蟹肉を取りだして、スノウに近づける。取り出した蟹肉は、ジャイアントクラブのものなので、かなり大きい。通常の何十倍もある。
 スノウは、少し匂いを嗅いでから、蟹肉を食べた。

『ガァ! ガァァ!!』

 気に入ったのか、スノウは大喜びだった。

「良かった。好きみたいだね。というか、割と楽に倒せたかも。スノウがいるのが大きいかな。動きの阻害が簡単だったし。ん? 動きの阻害……本当に、スノウと私って相性が良い?」

 【操影】でも動きを封じる事が出来るけど、影は強度が足りない。でも、スノウが凍らせてくれれば、私も【操氷】で形を変えたり出来るし、今のところ壊されないから、結構理想の拘束方法かもしれない。

「魔法を育てる意味が無くなったなぁ……まぁ、何かになるかもだし、暇な時に育てるくらいかな」

 やり始めた時に取っていた魔法も、今はもう使っていない。必要ないっていうよりも、他に優先するスキルが増えたって感じだった。でも、スノウが仲間になったことで、それも必要なくなったと言って良いかもしれない。

「さてと、マップ的には、どうなってる……ん?」

 どのくらいマッピングされているか確認してみると、少しおかしい事に気付いた。蝙蝠に探索を頼んでいる時よりも広くマッピングされている。何でだろうかと思ったけど、すぐに心当たりに気付いた。

「スノウ、空高くを自由に移動して。私が呼んだら、戻ってきて」
『ガァ!!』

 凄い勢いで飛び立ったスノウは、姿が分からないくらい上空で飛び回る。それと同時に、スノウが通った場所がマッピングされていく。

「あはは……蝙蝠の比じゃないくらいマッピングが楽になった……まぁ、自分で歩かないと分からない事も多いし、マップが至急必要になったとかじゃない限りは、やって貰わなくてもいいかな。後は、マッピングが困難な時か。スノウ、戻っておいで」

 戻ってきたスノウと一緒に、探索を進めていく。段々と砂に埋もれていく草原に、砂漠を歩いた事を思い出しつつ進むと、街の全貌が見えてきた。

「おぉ、結構広い街だ。スノウ。私が呼ぶまで、空で待機……いや、空なら自由に動き回っていて良いよ。でも、あまり離れない事と呼ぶまでは地上に降りない事。約束出来る?」
『ガァ!』
「よし。じゃあ、良い子でね」

 最後に蟹肉をあげてから、街の方に向かう。街の名前は、フレ姉から聞いた通り、ポートタウン。砂浜に広がっているけど、地面は石畳になっている。港にするために、埋め立てとかもした感じかな。
 ポートタウンは、スノータウンと違って、結構賑わっていた。その理由は、恐らくギルドにあると思う。ギルド設立のために集まっているのと、勧誘をしている感じだ。高校に入った時に、部活の勧誘を受けたけど、それの比じゃないくらいの人が勧誘をしていた。ただただ迷惑だとしか思えない。

「これだから、孤立するんだよね。まぁ、そっちの方が人間関係が面倒くさくなくて良いけど」

 ギルドに関しての説明をNPCから聞きたいところだけど、その前に、この街にある庭付きの家を探す事から始める。理由は、ただ一つ。大きな通りには、勧誘をしている人達がいっぱいだから、裏に入りたい。

「なるべく目立たない家が良いなぁ。まぁ、そんなの難しいだろうけど。そういえば、私がログアウトしている時って、スノウはどうなるんだろう? こっちに残り続けるのかな? でも、そうすると、モンスターと間違えて攻撃してくる人も出て来るよね」

 テイムモンスターの見た目は、大きく変わったりしないみたいで、スノウも身体の大きさと首輪があるってだけだ。首輪が目立てば良いけど、人によっては首輪に気付かないという事もあり得る。テイムモンスターが、一緒に消えないとすれば、ここが一番気になる。

「私に付属している感じだから、一緒にログアウトするって感じかな。テイマーズ・オンラインだと、最初から自分の牧場的なものが貰えたから、そこら辺を悩まずにログアウト出来たんだよね。その他のゲームだと、そもそもテイムなんてしないしなぁ。まぁ、明日ログインした時に確かめる感じで良いかな。ちょっと心配だけど」

 こればかりは、確かめようもない。スノウに訊いても、首をかしげられるだけだと思う。もう少しテイムモンスターについて説明してくれるNPCとかがいると良いのだけど、牧場的な場所が追加されないと難しいかな。それも序盤の街に欲しいけど。

「それにしても、結構庭付きの家があるなぁ、広い街って事もあって、区画を大きく使っているのかな。結構広々と良い感じの場所が多い。空き家も結構あるから、ある程度までは選び放題かな。でも、スノウを遊ばせられるかって言ったら、そこまでの大きさの家は少ないなぁ」

 庭付きと言っても、日本にもよくあるようなちょっとした庭が多く、広々とした庭が付いている家は少ない。小さなテイムモンスターなら、十分だろうけど、スノウが遊ぶとなったら、もう少し広い方が良いのではと思ってしまう。

「まぁ、最悪これだけでも良いんだけど、ギルドエリアについて訊いてから決めよ。そういえば、スノウは大丈夫かな」

 マップを見てみると、もう半分近くがマッピングされていた。スノウが、縦横無尽に飛び回っている事がよく分かる。

「犬の散歩みたいに、ストレス発散になってると良いんだけど」

 スノウの事を考えつつ、ギルドの設立に必要な何かを知るために、街の中央に向かっていった。
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