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吸血少女と最悪な環境

霊峰の霊視鏡

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 夜にログインしてきた私は、早速霊峰の霊視鏡を掛ける。特に度が入っている訳では無いので、視界が揺らぐ事もない。

「伊達眼鏡。格好いいかな? まぁ、そんな事をどうでも良いか。さてさて、【霊視】の効果はっと……」

 周囲を見回しても、特に何か変化したところは見当たらない。

「さすがに、中央の広場に何かあるとかはないか。街中にあるとして、一番怪しい場所……」

 ファーストタウンのマップを見ながら、調べるべき場所を選定する。

「メタ的な考えなら、街の端っことかかな。路地裏とかもあり得るかも」

 まずは、街の端っこから調べて行く事にした。ゆったり調べる理由もないので、走って調べに向かう。南に行ってから、東回りで調べて行く。走りながら、周囲を見回すけど、何も変わった事は無かった。

「何かしらあってくれても良いと思うんだけどなぁ」

 一周回っても何も無かった。端っこには何もないみたい。

「走って調べるのは、効率が悪いなぁ。あそこかな」

 私の視線の先には、ファーストタウンで一番高い建物があった。街の探索とか、ほぼほぼしてないから、あれが何の建物か分からない。

「何だろう? 見張り台とかかな」

 血姫の装具はないけど、今の装備でも私の脚力に大きな影響はない。思いっきり力を込めて、空に跳び上がる。そして、その建物の壁に脚を引っ掛けて、さらに跳び上がる。そうして、中に入れる高さまで上がったところで、この建物が何か分かった。

「鐘? 昔の時計代わりかな。ん?」

 そこに入って、鐘に視線がいっていたけど、その真下に、青白い靄みたいなものがある事に気が付いた。これが、何かしらのイベントフラグでもない限り、【霊視】の効果が出ていると考えて良いと思う。
 その靄をジッと見てみると、段々靄が集まっていった。そうして、靄が完全に消えると、現れたのは一枚の紙だった。

「うわぁ……」

 私は、【言語学】を装備して、紙の中身を読もうとする。

「……読めない」

 私の【言語学】のレベルが低すぎて、一文字も読めないみたい。

「アカリに渡そうっと」

 私よりもアカリの方が、【言語学】のレベルを育てていると思うので、これはアカリに任せてみる事にする。初期スキルで持っているアク姉には、任せるだけ無駄なので、スルーだ。
 紙をアイテム欄に入れて、鐘の上にある屋根に上る。

「さてと……見えるものは分かったから、それが無いか探そう」

 屋根の上から街全体を見回す。見つけるべきものは、青白い靄。【視覚強化】もあるし、夜でも【吸血鬼】のおかげでよく見えるから、ここから見えるとすれば、すぐに見つけられるはず。

「あった」

 見つけたのは、コロシアムの上だ。観客席よりも上だし、行く人なんて誰もいないと思う。さらに、もう一つ図書館の中に見えた。窓越しに確認出来ただけなので、図書館のどこにあるのかは、完全に把握する事は難しい。大体の方角だけは覚えておく。
 鐘の上、コロシアム、図書館と見つけて、一つの共通点が導き出せた。

「一応、誰でも行けそうな場所にあるって感じかな」

 この鐘がある場所は、梯子が掛けられているし、コロシアムも上手くやれば、普通に上れる。図書館は、そもそも入れなかったら意味がない場所だから、行けるのは当たり前。
 ある程度見回して探したところで、見つけた二箇所に向かう。まずは、コロシアムだ。
 中に入って、観客席に向かう。

「えっと……あった」

 大体の方角を覚えていたので、見つけるのに時間は掛からない。コロシアムの上に跳び上がって、靄をジッと見る。すると、今度は一枚のコインになった。拾うと、私の所持金が百G増えたので、普通にお金だった。

「こういうのもあるんだ。金額は、自販機の下にあるような額だけど」

 さっきの紙は、使い道がそもそも分からないアイテムだったけど、今回は現金そのままと発見出来るものの種類は多いみたいだ。これは調べ甲斐があるかもしれない。

「図書館は、何があるかな」

 何度か通っているので、図書館の場所は、完全に把握している。だけど、それは、街の中で、どこにあるのかが分かるというだけだ。図書館の中は、また別の事。その理由は、ただ一つ。図書館が広すぎるからだ。学校の図書室や近所の小さな図書館しか行く機会がない私からしたら、広すぎって感じの施設だ。

「えっと……こっちの方角の三階。端っこから三つ目くらいの窓かな」

 さっき見た情報から、大体の当たりを付けて、その場所に向かう。図書館内という事もあって、走らずに向かった。

「あっ、発見。ここら辺の本は、私には読めない本か。そりゃ場所に心当たりがないわけだよ」

 靄をジッと見て、形をはっきりとさせる。そうして出て来たのは、一つの鍵だった。アイテム名も鍵だ。

「どこの?」

 当たり前の疑問が口から出て来るけど、答えてくれる人はいない。仕方ないので、アイテム欄に入れておく。

「場所で考えれば、図書館内で使う場所があるはずだけど」

 近くの本棚を見ていくけど、特にそれらしきものは見つからない。

「隠し扉だとしたら、外から見て違和感があるはず……そこから調べて見ても良いかも」

 まずは一階に降りて、一番奥の窓から外を見る。その後に、外に出て、一番奥の窓から中を覗く。すると、さっき確認した場所が見えた。奥行きから考えても、空間があるようには思えない。つまり、奥に何か隠し部屋があるというわけじゃないみたい。
 念のため、反対側も確認したけど、同じように隠し部屋があるような空間は発見出来なかった。

「他に考えられるのは、地下空間。後は、本に掛けられている錠を解く鍵って感じかな。次は、フィールド……の前に、ウェットタウンとオアシスタウンを調べよっと」

 ファーストタウンの探索をやめて、ウェットタウンに転移する。細かく調べるよりも、大まかに、三つの街を探索してみる方が良いかもと考えたからだ。ファーストタウンと同じように高い場所を探す。
 ウェットタウンの中で一番高い建物は、大きな屋敷の煙突くらいだった。煙突からは煙は出ていないので、上っても煙い事はない。

「う~んと……あそこか。同じ場所に二箇所って事もあるんだ。色々と勉強になるなぁ」

 街の端っこにある小さな泉の辺に二箇所も靄があった。ファーストタウンでは、離れた場所にあったけど、ウェットタウンでは近くに置かれていた。その場所に急行して、一つずつ固める。

「こっちも紙だ。それと……現金百G。どっちも確実なのかな」

 こっちの紙も読めないので、アカリに渡してみる事にする。

「この感じだと、建物内にありそうだけど、探索するのは面倒くさいし、また時間のある時にしようっと」

 今度は、オアシスタウンに向かう。オアシスタウンにある高い建物は、展望台のような場所で、街の中央にある。すぐにそこに上った。

「展望台には、何も無いと」

 あの鐘と同じように、ここにあるかもと思ったけど、特に何もなかった。すぐに切り替えて、街を見回す。

「オアシスの中央? それしかないから、ここは一箇所だけなのかな。問題は、オアシスの中ってところかな……」

 オアシス自体は、川のように流れていないので、恐らく泳げるは泳げると思う。それに、オアシスで泳いでいる人が多いから、変に目立つ事もないというのは有り難い。

「厄介なのは、オアシスの中央の底って事かな。【水泳】が無くても大丈夫かな……」

 私は、目立たないように、オアシスの中に入っていく。身体から力が抜けたりする事もなく、オアシスの中には入れた。ちょっと緊張しながら、オアシスの中央に向かっていく。脚が付かなくなったところで、潜ってみる。ここでも、特に変化はない。

「よし」

 他のプレイヤーに悟られないように、ゆっくりと泳いでいき、オアシスの中央で潜る。そして、靄を固めて、アイテム欄に入れる。そして、すぐにオアシスを上がって、ファーストタウンに転移した。
 ファーストタウンに転移したのは、本当に念のためだ。誰かに見られていた可能性がゼロとは言い難いからね。手に入れたアイテムは、他の街と同じものではなく、金色のコインだった。これに関しては、現金にはならなかった。アイテム名は、王家のコインという名前だった。
 アイテム化しても、特に何もない。ちょっとした紋章が入っているだけだ。

「どこかで使えるのかな? まぁ、どう考えても使い道なんて分からないし、今日は休もっと」

 そろそろ寝る時間なので、今日はログアウトする。今日見つけたものは、明日の昼にアカリと共有しようかな。
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