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吸血少女と最悪な環境
ちょっと気になっていた事
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二十時に再びログインした私は、ファーストタウンの広場に降り立った。
「アク姉達のハウスは……あっちだったはず」
そこまで頻繁に行っているわけじゃないから、ちょっと心配だったけど、見覚えのある建物が見えてきて、一安心した。扉の隣に付いているインターホン的なものを押すと、扉の鍵が開いた音がした。それと同時に、扉も開いて、アク姉が出て来る。
「いらっしゃい。入って」
アク姉に促されて中に入った。ハウスの中だから、アク姉もラフな格好をしている。私も血姫の装具の外套を外した。そのままアク姉に付いていくと、リビングで、メイティさん達全員が寛いでいた。アク姉と同じように、ラフな格好をしている。トモエさんも、美人な中身のままでいる。
「皆さん、お揃いで……もしかして、用事があった?」
アク姉は空いていると言っていたけど、実は、皆で寛ぐ予定だったのではと思い、アク姉に確認する。
「ううん。ハクちゃんの事を話したら、どうせだから、皆集まるって話になったって感じ。本当は、二人きりが良かったのにねぇ?」
「迷惑じゃなかったなら、私は、どっちでも良い」
「もう、照れ屋さんなんだから」
アク姉が私を持ち上げて抱きしめてくる。照れているとか全くないのだけど、まぁいいや。
アク姉は、私を抱えたままソファの前に座って、足の間に私を座らせる。私は、アク姉を背もたれにして、寛ぐ。
「それで、ハクちゃんが、アクアに訊きたい事って何ですの?」
カティさんが、すぐに本題を切り出してくれた。このままだとアク姉に可愛がられて終わるかもしれないと思ったのかもしれない。確かに、その可能性は十分にあった。
「昨日の夜に、砂漠を探索していたら、遠くの空にでっかい竜を見つけたんです。何か知りませんか?」
私が訊くと、皆が難しい顔になった。
「う~ん……正直なところ、私達も分からないんだよね。遭遇頻度が夜霧の執行者よりも低いんだ。私達も遠目一回見ただけだし」
アク姉が、捻り出すようにそう言った。交戦経験がないから、ちゃんとした事は分からないみたい。ただ、一つ分からない事があった。
「夜霧の執行者って、どのくらい?」
「そこら辺のレアモンスターよりも格段に低いわよ。未だに、討伐者は少ないもの。私達もスキルが欲しいんだけど」
アメスさんが教えてくれながら、私の頬を突っついてくる。私が、一番に倒してスキルも獲得しているからだと思う。
「話を戻しましょう。件の竜は、北東から南東に掛けて現れます」
「北東から南東……私が見た時には、南東にいたって感じですか?」
「砂漠で見たのであれば、そうでしょう」
基本的に東側に出現するモンスターみたい。目撃情報が東側に偏っているって感じかな。
「強さは?」
「確か……魔法職が魔法を撃ったが、当たる前に、雲や炎に弾かれたという話があったはずだ。その後、雷が落ちて倒れたらしい。そこから、自動反撃モードなのではという話になってる」
「自動反撃モード? 向こうの意志じゃないんですか?」
普通は、ただ反撃されたってなるはず。でも、サツキさんが言った言葉は、確かに自動反撃だった。
「話を聞く限り、向こうは、こっちを認識していないって感じなの。だから、自動反撃って言われてるんだ」
メイティさんが、すぐに補足してくれた。向こうが、こっちの事を一切気に留めていないのだとしたら、確かに自動反撃モードになっていると思うかもしれない。
「結局のところ、何も分かっていないという感じですわね。さっきも言いましたけれど、一方的に攻撃して、雷の反撃を受けるという事しか出来ていないのですわ。まともな戦闘記録があれば、詳しく話せるのですけど」
「まぁ、エリアを越えて活動しているから、エンカウントボスであることは確実かな。取り敢えず、魔法くらいの遠距離攻撃を持っていないと、喧嘩を売る事も出来ないだろうから、しばらくはハクちゃんも関係ないと思うよ」
「でも、見る度に、あんなぞわぞわするのは嫌だなぁ」
私がそう言うと、アク姉達は、私が何を言っているのか分からないという風な反応をしていた。
「見た時に、ぞわぞわして身体が凍り付くような感じがしたんだけど、アク姉達は、そんな事なかったの?」
「全然無かったよ。でっか! って思ったくらい」
「アクアは、口に出てたわよ。私も同じで、そんな事なかったわ。ただ大きいだけで、ハクちゃんがビビるって事もないだろうし、何か原因がありそうね」
「確かに、ハクちゃんは、身長の三倍以上はあるフェンリルをテイムしていたしね」
メイティさんが言っているのは、テイマーズオンラインでの話だ。
「そういえば、ハクちゃんは、霊峰の支配竜からスキルを獲っていなかったか?」
「【竜血】ですね。この身体の血液に、竜の血が混ざるってスキルです」
「その竜の血が反応していたと考えられると思う。私達とハクちゃんの大きな違いは、そのスキルだから」
サツキさんの考察は、的を射ている気がする。アク姉達が持っていないスキルで考えると、【吸血鬼】か【竜血】が怪しくなる。他のスキルは、身体そのものをスキルじゃないから。
「私の中の竜の血が、恐怖を覚えたって事ですか?」
「多分」
「ハクちゃんの中に流れる竜の血が、霊峰の支配竜の血だとしたら、霊峰の支配竜とは格の違う竜って事かな。まぁ、あんな巨大だと、向こうの方が強いよね。でも、ハクちゃんが、ぞわぞわしなくなったら、向こうと同格になったって証拠になるんじゃないかな?」
「確かに、アク姉の言う通りかも。レベル上げ頑張らないと」
私のスキルレベルが上がれば、あの竜を見ても大丈夫になるはず。多分、【竜血】のスキルを上げるのが、そこに関係してくると思う。
「そういえば、砂漠の攻略は、どんな感じですの?」
「順調と言えば、順調です。夜だけ……」
「まぁ、そのための修行をしていたわけですしね。今度は、私も修行に参加しましょうか?」
「それなら、私も参加するわよ? 色々と学べる方が良いでしょ」
「なら、私も」
アク姉のパーティーが総出で修行に参加すると言いだした。六対一の修行って、他の人から見たら、いじめの現場にしか見えないのではと思ってしまう。いや、そもそもそれ以前の問題もある。
「さすがに、私、手も足も出ないと思うんですけど……」
「まぁ、だろうね。あっ、そうだ。良い事考えた」
アク姉がそう言って、メニューを操作し始めた。キーボードを打つ的な指の動かし方から、メッセージを送っているものだと思う。
「おっ、大丈夫そう。明日は、トモエとメイティは、修行をしないで良いよ」
「どういう事?」
アク姉の中でだけで進められた事なので、メイティさんも少し困惑していた。
「姉さんに連絡したら、明日は仕事が休みになったから、修行に行けるって。あの修行も良いと思うけど、同じ戦い方が出来る人とやってみるのも良いでしょ?」
「まぁ、確かに。でも、それなら、フレイさんじゃなくて、ゲルダさんが良いんじゃない?」
「ゲルちゃんは、ログインしてないんだもん」
「それじゃあ、仕方ないか。でも、確かにフレイさんは適役かもね」
何か明日の修行は、フレ姉が担当する事になったみたい。アク姉達の話の中で、私にもメッセージが届いた。
『明日の十四時に、私とゲルダが行く』
簡潔にそれだけ書かれていた。フレ姉らしい。
「ゲルダさんも来るって」
「そうなの? 姉さん、態々ログアウトしてゲルちゃんに訊いたね」
「それじゃあ、明日は、アク姉達は来ないって事?」
「暇だから行くかも」
アク姉がそう言うと、他の皆も頷いた。皆来てもする事ないのに来るみたい。
「それじゃあ、私は行くね」
「えぇ~!? もっと一緒にいたいのに!!」
アク姉が思いっきり抱きしめてくる。完全に動けない。
「今日は、師範のところに行くつもりなの。素手での戦闘も重要だけど、双剣も育てたいんだから」
「むぅ……まぁ、仕方ないか。それじゃあ、また明日ね」
アク姉に解放されて、皆に手を振ってから、双刀の隠れ里へと向かった。
「アク姉達のハウスは……あっちだったはず」
そこまで頻繁に行っているわけじゃないから、ちょっと心配だったけど、見覚えのある建物が見えてきて、一安心した。扉の隣に付いているインターホン的なものを押すと、扉の鍵が開いた音がした。それと同時に、扉も開いて、アク姉が出て来る。
「いらっしゃい。入って」
アク姉に促されて中に入った。ハウスの中だから、アク姉もラフな格好をしている。私も血姫の装具の外套を外した。そのままアク姉に付いていくと、リビングで、メイティさん達全員が寛いでいた。アク姉と同じように、ラフな格好をしている。トモエさんも、美人な中身のままでいる。
「皆さん、お揃いで……もしかして、用事があった?」
アク姉は空いていると言っていたけど、実は、皆で寛ぐ予定だったのではと思い、アク姉に確認する。
「ううん。ハクちゃんの事を話したら、どうせだから、皆集まるって話になったって感じ。本当は、二人きりが良かったのにねぇ?」
「迷惑じゃなかったなら、私は、どっちでも良い」
「もう、照れ屋さんなんだから」
アク姉が私を持ち上げて抱きしめてくる。照れているとか全くないのだけど、まぁいいや。
アク姉は、私を抱えたままソファの前に座って、足の間に私を座らせる。私は、アク姉を背もたれにして、寛ぐ。
「それで、ハクちゃんが、アクアに訊きたい事って何ですの?」
カティさんが、すぐに本題を切り出してくれた。このままだとアク姉に可愛がられて終わるかもしれないと思ったのかもしれない。確かに、その可能性は十分にあった。
「昨日の夜に、砂漠を探索していたら、遠くの空にでっかい竜を見つけたんです。何か知りませんか?」
私が訊くと、皆が難しい顔になった。
「う~ん……正直なところ、私達も分からないんだよね。遭遇頻度が夜霧の執行者よりも低いんだ。私達も遠目一回見ただけだし」
アク姉が、捻り出すようにそう言った。交戦経験がないから、ちゃんとした事は分からないみたい。ただ、一つ分からない事があった。
「夜霧の執行者って、どのくらい?」
「そこら辺のレアモンスターよりも格段に低いわよ。未だに、討伐者は少ないもの。私達もスキルが欲しいんだけど」
アメスさんが教えてくれながら、私の頬を突っついてくる。私が、一番に倒してスキルも獲得しているからだと思う。
「話を戻しましょう。件の竜は、北東から南東に掛けて現れます」
「北東から南東……私が見た時には、南東にいたって感じですか?」
「砂漠で見たのであれば、そうでしょう」
基本的に東側に出現するモンスターみたい。目撃情報が東側に偏っているって感じかな。
「強さは?」
「確か……魔法職が魔法を撃ったが、当たる前に、雲や炎に弾かれたという話があったはずだ。その後、雷が落ちて倒れたらしい。そこから、自動反撃モードなのではという話になってる」
「自動反撃モード? 向こうの意志じゃないんですか?」
普通は、ただ反撃されたってなるはず。でも、サツキさんが言った言葉は、確かに自動反撃だった。
「話を聞く限り、向こうは、こっちを認識していないって感じなの。だから、自動反撃って言われてるんだ」
メイティさんが、すぐに補足してくれた。向こうが、こっちの事を一切気に留めていないのだとしたら、確かに自動反撃モードになっていると思うかもしれない。
「結局のところ、何も分かっていないという感じですわね。さっきも言いましたけれど、一方的に攻撃して、雷の反撃を受けるという事しか出来ていないのですわ。まともな戦闘記録があれば、詳しく話せるのですけど」
「まぁ、エリアを越えて活動しているから、エンカウントボスであることは確実かな。取り敢えず、魔法くらいの遠距離攻撃を持っていないと、喧嘩を売る事も出来ないだろうから、しばらくはハクちゃんも関係ないと思うよ」
「でも、見る度に、あんなぞわぞわするのは嫌だなぁ」
私がそう言うと、アク姉達は、私が何を言っているのか分からないという風な反応をしていた。
「見た時に、ぞわぞわして身体が凍り付くような感じがしたんだけど、アク姉達は、そんな事なかったの?」
「全然無かったよ。でっか! って思ったくらい」
「アクアは、口に出てたわよ。私も同じで、そんな事なかったわ。ただ大きいだけで、ハクちゃんがビビるって事もないだろうし、何か原因がありそうね」
「確かに、ハクちゃんは、身長の三倍以上はあるフェンリルをテイムしていたしね」
メイティさんが言っているのは、テイマーズオンラインでの話だ。
「そういえば、ハクちゃんは、霊峰の支配竜からスキルを獲っていなかったか?」
「【竜血】ですね。この身体の血液に、竜の血が混ざるってスキルです」
「その竜の血が反応していたと考えられると思う。私達とハクちゃんの大きな違いは、そのスキルだから」
サツキさんの考察は、的を射ている気がする。アク姉達が持っていないスキルで考えると、【吸血鬼】か【竜血】が怪しくなる。他のスキルは、身体そのものをスキルじゃないから。
「私の中の竜の血が、恐怖を覚えたって事ですか?」
「多分」
「ハクちゃんの中に流れる竜の血が、霊峰の支配竜の血だとしたら、霊峰の支配竜とは格の違う竜って事かな。まぁ、あんな巨大だと、向こうの方が強いよね。でも、ハクちゃんが、ぞわぞわしなくなったら、向こうと同格になったって証拠になるんじゃないかな?」
「確かに、アク姉の言う通りかも。レベル上げ頑張らないと」
私のスキルレベルが上がれば、あの竜を見ても大丈夫になるはず。多分、【竜血】のスキルを上げるのが、そこに関係してくると思う。
「そういえば、砂漠の攻略は、どんな感じですの?」
「順調と言えば、順調です。夜だけ……」
「まぁ、そのための修行をしていたわけですしね。今度は、私も修行に参加しましょうか?」
「それなら、私も参加するわよ? 色々と学べる方が良いでしょ」
「なら、私も」
アク姉のパーティーが総出で修行に参加すると言いだした。六対一の修行って、他の人から見たら、いじめの現場にしか見えないのではと思ってしまう。いや、そもそもそれ以前の問題もある。
「さすがに、私、手も足も出ないと思うんですけど……」
「まぁ、だろうね。あっ、そうだ。良い事考えた」
アク姉がそう言って、メニューを操作し始めた。キーボードを打つ的な指の動かし方から、メッセージを送っているものだと思う。
「おっ、大丈夫そう。明日は、トモエとメイティは、修行をしないで良いよ」
「どういう事?」
アク姉の中でだけで進められた事なので、メイティさんも少し困惑していた。
「姉さんに連絡したら、明日は仕事が休みになったから、修行に行けるって。あの修行も良いと思うけど、同じ戦い方が出来る人とやってみるのも良いでしょ?」
「まぁ、確かに。でも、それなら、フレイさんじゃなくて、ゲルダさんが良いんじゃない?」
「ゲルちゃんは、ログインしてないんだもん」
「それじゃあ、仕方ないか。でも、確かにフレイさんは適役かもね」
何か明日の修行は、フレ姉が担当する事になったみたい。アク姉達の話の中で、私にもメッセージが届いた。
『明日の十四時に、私とゲルダが行く』
簡潔にそれだけ書かれていた。フレ姉らしい。
「ゲルダさんも来るって」
「そうなの? 姉さん、態々ログアウトしてゲルちゃんに訊いたね」
「それじゃあ、明日は、アク姉達は来ないって事?」
「暇だから行くかも」
アク姉がそう言うと、他の皆も頷いた。皆来てもする事ないのに来るみたい。
「それじゃあ、私は行くね」
「えぇ~!? もっと一緒にいたいのに!!」
アク姉が思いっきり抱きしめてくる。完全に動けない。
「今日は、師範のところに行くつもりなの。素手での戦闘も重要だけど、双剣も育てたいんだから」
「むぅ……まぁ、仕方ないか。それじゃあ、また明日ね」
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