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吸血少女の歩む道

装備の修理

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「一応倒せたけど、もう少し楽に倒せるようになりたいなぁ。最後は、ダメージ覚悟だったし……」

 ため息をつきながら、自分の身体を見下ろす。特に壊れているような雰囲気はないけど、装備欄を確認すると、耐久値がかなり下がっていた。

「……アカリとラングさんのところ行こっと」

 ボスエリアの先に向かうと、ウィンドウが現れる。

『現在、ここより先のエリアは解放されていません』

 ここから先のエリアは、次のアップデートを待つ必要がある。前にも確認したけど、やっぱり変わらないみたい。元来た道を戻って、ウェットタウンまで向かってから、ファーストタウンに転移する。
 そして、すぐにアカリエに向かった。今日は、受付にアカリがいたので、話が早く済みそうだ。

「アカリ、服直して」
「ん? もしかして、ジャイアントトードと戦って、酸攻撃でも受けたの?」
「うん。最後の方で、避けるよりも削った方が良いと思ったから」
「全くもう……あっ、丁度いいや。裏に来てくれる?」
「何々?」

 丁度いいって言う事は、何か私に用事があるという事だ。新しい装備でもあるのかな。そう思いながら付いていく。

「じゃん!!」

 にっこにこの笑顔でアカリが取り出したのは、赤色の下着と黒色の下着だった。

「何これ?」
「新しい下着。前に色訊いたでしょ?」
「結局二色作ってるし、そもそも作る意味」
「せっかくだから、二つ作りたくなったのと内側からちゃんと着飾って欲しいなぁって」
「派手じゃない?」

 色も派手だけど、装飾的なものが派手な気がする。綺麗だとも思えるけど、自分で身に着けるものとしては、ちょっとなという感じだ。

「だって、ハクちゃんって、白とか薄い色ばかり着けるでしょ? ゲームでくらいこういうのも着けて良いと思うんだ」
「大きなお世話なんだけど……これって、このまま着替えられる?」
「ゲームだから出来るよ」

 せっかく作って貰ったものを着けないのも悪いので、アカリが作った下着を着ける事にする。どうせ、装備に隠れて見えないものだし。ついでに、防具も脱いで、別の服に着替える。そこで気付いた事があった。

「これ……何気に防御力高いのね。てか、血姫の装具の一つになってるし」
「ないよりマシ程度のものだよ。ガチ勢の女性は、下着に金属を仕込んで心臓のクリティカル判定を逸らしたりするしね。一応、血姫の装具と合わせて使うように調整したから、名前も統一したよ。下着には、唯一例外で、追加効果一つしか付けられないから、【吸血強化】だけ付けておいたよ」
「へぇ~、重そうだから、このままでいいや。ありがとう。助かる」
「オッケー。どういたしまして」

 二つの事を同時に会話していたので、話題がごちゃ混ぜになっていたけど、二人の間では伝わっているから、問題はない。脱ぎ終わった血姫の装具をアカリに渡す。

「うわっ!? めっちゃ下がってるじゃん! これから、酸攻撃は避ける事! 良い!?」
「は~い。ラングさんのところにも寄らないと」
「本格的な補修ついでに、ちょっと強化もしてあげる。お金はあるよね?」
「あるよ。それで、どのくらい掛かる?」
「二日かな。他の仕事もあるから。困る?」
「ううん。それなら、それで平原でいつものするから大丈夫」
「ん~了解。それじゃあ、二日で完成させるね。金額は、五十万くらい。もしあれだったら、値下げもしてあげるよ」
「条件は?」

 友達価格でって言ってくれそうなアカリだけど、こういう場面では、ちゃんと条件を出してくるので、先に訊いておく。

「さっきの下着姿見せてくれたら、十万は負けてあげる」
「えぇ~……まぁ、そのくらいならいいけど、言ってる事、結構危ないよ?」
「そりゃあ、知らない人に言ったら危ないけど、ハクちゃんだもん。私が作ったのを着た姿をちゃんと見たいしね」
「仕方ないなぁ。裏って、誰も来ないよね?」
「許可を出しているのは、フレイさんとアクアさんとハクちゃんだけだから、普通は来ないよ」
「なら、良いか」

 下着以外の装備を全部外すと、赤い下着姿になる。普段着る事のない色なので、ゲームの中とはいえ、ちょっと違和感がある。

「う~ん……ちょっと濃くし過ぎたかな? 吸血鬼をイメージして、黒か赤って思ったんだけどなぁ……もう少し鮮やかな方が良いかも? 黒の方に変えてみてくれる?」
「オッケー」

 アカリに言われて、着替える。この時に、身体が光に包まれたので、完全にそこら辺は見えないようにされているみたいだ。

「黒は、有りかな。ちょっと装飾が華美になりすぎている感もあるけど……このくらいなら許容範囲内かな。これならガーターベルトも有りか……その場合、下着の追加パーツになるのか、腰の追加パーツになるのか……」

 アカリは真剣な顔で、下着を見てくる。多分、下心無しで生産職からの目線で見ているはず。アク姉だったら、多分、下心百で見てくると思う。妹としてどうかと思うけど。

「もう服着て良いよ。ちょっと改良したものを作っておくね」
「ありがとう。出来れば、派手じゃないと嬉しいかな」
「それは、約束出来ないかな」
「まぁ、私に似合うようなものだったらいいや」
「うん! いっぱい考えるね!」
「他のお客さんのもあるだろうから、程々にね。それじゃあ、ラングさんのところに行ってくる」
「オッケー。服は着てね」
「当たり前でしょ。そこまで馬鹿じゃないって」

 少し眉を寄せながら、白いブラウスと黒い長ズボンを着る。

「そうだ。今度、水着作ろうと思うんだけど、要望とかある?」
「際どくなければ良いけど、使える場所あるの?」
「まだないけど、いずれ出て来るかなって予想。結構自由度の高いゲームだし、海ステージくらい実装するでしょって思ってる」
「なるほどね。あんまり変なの作らないでよ?」
「分かってるよ。それじゃあ、またね」
「うん。またね」

 アカリエを出て、ラングさんのお店に向かった。中に入ると、ラングさんが受付に立っていた。

「ラングさん、丁度良かったです。短剣のメンテ頼んで良いですか?」
「ああ、見せてくれ」

 ラングさんに、血染めの短剣を渡す。

「結構酷使したな。ジャイアントトードか?」
「見ただけで分かるんですか?」
「一気に削れる理由は、大体ジャイアントトードだな」
「そうなんですね」

 ジャイアントトードの酸攻撃は、耐久度減らしとして有名みたいだ。真っ先に名前が上がるって事は、

「少し仕事が入って来ていてな。少し修理は後になりそうだ。二日から三日掛かるかもな」
「了解です。よろしくお願いします」
「おう。それまで武器がないが大丈夫か?」
「はい。【格闘】もあるので、最低限は戦えます」
「そうか。なら、二日後くらいに取りに来てくれ。修理費は五万Gだ」
「はい」

 ラングさんは先払いみたいなので、そのまま五万Gを渡して、お店を出て行った。

「さてと……どうしようかなぁ」

 武器も防具も弱い状態なので、攻略は出来ない。こうなったら、やれる事はアカリにも言った通りの平原でのルーティンくらいしかやる事がない。

「えっと……【操血】【硬質化】【魔法才能】【支援魔法才能】【吸血鬼】のレベル上げかな。しばらくは、何かをしても【操血】を解除しないようにする事を心掛けよう」

 身体を伸ばしつつ、いつもの平原に向かった。
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