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吸血少女の歩む道

四人で談笑

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 フレ姉の家の前に来たら、アカリが駆け寄ってきた。

「おかえり」

 フレ姉とアク姉は、駆け寄ってきたアカリの頭を撫でる。そして、何故か私の頭も撫でてきた。アカリに嫉妬するとでも思ったのかな。全く気にしてなかったけど。
 アカリと横に並んでフレ姉達に付いていく。

「湿地帯のボスを倒したの?」
「うん。フレ姉とアク姉がいたから楽だったかな。戦い方もある程度分かったし」
「それなら良かったね。あそこのボスは、攻撃が面倒くさいから。私も苦労したし」
「だよね。近接系の人は、ヒットアンドアウェイが基本かな」
「そうだね。背面は酸、正面は毒と舌だから、フォレストリザードと似たような感じで動くのが良いかもしれないよ。ただ、避ける時は大きく避けないといけないけど」

 私とアカリが話している間に、フレ姉が手続きをしてくれて中に入る事が出来た。

「今日も全員出払ってるみてぇだな。まぁ、休日はレベル上げ時だから、当たり前か。帰って来る前に部屋に移動するぞ」
「うん」

 フレ姉の部屋に移動して、置かれているソファに二人ずつ座る。私とアカリ、アク姉とフレ姉という組み合わせだ。

「ソファなんてあったっけ?」
「いや、お前達が遊びに来るだろうから、用意しておいた。あった方が寛げるだろ」
「うん」
「あっ、そうだ。お菓子とかお茶とか持ってきましたよ」

 そう言って、アカリがケーキなどを出していく。私達が街に戻っている間に、買っていたみたい。

「おお。助かる。お茶請けなんて、煎餅くらいしかねぇからな」
「歳か……痛っ!?」

 アク姉がいらない事を言って、頭を叩かれていた。

「はい。ハクちゃん。チョコケーキだよ」

 いつも通りのやり取りだからか、アカリは、一切動揺せずにケーキを取り分けて、私に渡した。そのままお茶も入れてくれる。

「ありがとう」
「どういたしまして。そういえば、アクアさん達は、ゴールデンウィークに戻ってくるんですか?」
「ううん。平日には、普通に講義あるから帰らないかな」
「私は休日もねぇからな」
「わぁ……大変ですね……」

 アク姉達は、ゴールデンウィークに帰る事はないらしい。私も初耳だったけど、そこまで驚きはなかった。フレ姉が現実で忙しいのは知っているし、大学が高校までとは違う場所だというのも、フレ姉で知っているからだ。

「そういや、高校はどうだ? 私達が通っていたところにしたんだろ?」

 私とアカリが通っている高校は、アク姉とフレ姉が通っていた学校だ。二人が通っていたから選んだ訳ではなく、私達が通える高校の中で一番偏差値が高い場所だったからだ。家からも近いし。

「分かりにくい構造だから、慣れるまで道に迷うかもね」
「お前が方向音痴なだけだろ」
「違いますぅ! 一ヶ月くらいで慣れました!」
「一ヶ月も掛かってんじゃねぇか」
「まぁ、複雑ですもんね」

 アカリがフォローする。私は基本放置しているけど、アカリは、二人が喧嘩すると念のためフォローするようにしていた。家族と友人の違いかな。私は日常茶飯事だから、うるさくならない限りやらせている。どうせ、お母さんの雷が落ちるし。

「これ美味しい」
「本当? 良かった。新作みたいだから、買ってみたんだ。ハクちゃんも好きそうだったし」
「うん。結構好き。はい、あ~ん」
「あ~ん……うん! 美味しい!」
「でしょ」
「じゃあ、私の方も、あ~ん」
「あ~ん」

 アカリのフルーツケーキを貰う。甘酸っぱい味わいで、チョコケーキの少しくどめの甘さが緩和される。食べ合わせ的には、結構良い。

「良いなぁ……」

 アク姉が物欲しそうに、こっちを見ているけど、少し遠いから手を伸ばすのも怠いので、放っておく。

「食うか?」
「えぇ……姉さんか……」
「顔面にパイを叩きつけてやろうか……!」
「ハクちゃんからだったら!」
「私がやるに決まってんだろ」
「姉さんは加減を知らないから嫌だ!!」
「本気でやってやろうか」
「姉さんの馬鹿力でやられたら、頭吹き飛んでじゃう!」
「吹き飛ばしてやるよ!」
「ああ! お二人とも、こっちのケーキも美味しそうですよ!」

 アカリが、新しいケーキを切り分けて二人に渡していた。アカリが間に入った事で、二人の喧嘩が中断される。

「アカリもよくやるね」
「ハクちゃんも止めなよ」
「面倒くさい。それより、このアップルパイ、この前のお店と違う味がするよ。林檎が強調されてて、さっきのフルーツケーキみたいな感じ。はい」
「……本当だ。砂糖控えめで、美味しい。あまり煮詰めてないのかな。林檎の食感もしっかりとしてるね」
「ね。これもプレイヤーメイド?」
「うん。全部そうだよ」

 プレイヤーメイドだと、工程の間で色々と工夫が出来るみたい。ここら辺の違いを楽しむために色々なお店を回るのも有りかもしれない。

「そういや、アカリはどこまで行ったんだ?」

 フレ姉がそう切り出した。さっきまで喧嘩していたとは思えないくらい、仲良くアク姉と並んで美味しそうにケーキを食べている。

「西の攻略を始めたところです。南の先のエリアはクリアしました」
「そうか。最初は豪雨だったな」
「何も見えないので、攻略が難しいですね」
「だな。最初は難しいだろうな」

 どうやら西のエリアは豪雨のエリアみたい。まだ南の先のエリアが残っているので、私が向かうのは、もう少し先になりそうだ。

「魔法があれば、ちょっとマシになるよ。水魔法で上に傘を差す感じ」
「ふ~ん……じゃあ、アカリは普通に傘を差せば良いんじゃない?」
「一応作ったけど、台風みたいで役に立たないんだよね」
「あ、そうなんだ。私も行ってみようかな」

 話を聞いていたら、興味が出て来てしまった。

「やめとけ。モンスターの数は少ないが、強力な上、豪雨で視界が確保出来ねぇぞ。ハクの予感だって、万能じゃねぇだろ?」
「まぁ、そうだけど。そんなに危ない?」
「一撃で、一割削れるかな」
「アカリの防具って、私のより強い?」
「う~ん……どっこいどっこい! ハクちゃんのは特別製だからね」

 私の防具には、夜霧の鎧が編み込まれているので、防御力自体は結構高いみたい。それでも一割削れるって事は、昼間に行ったら三割削れそう。

「あっ! でも、日が出てないから、ハクちゃんは本領を発揮した状態でいられるかもね」
「ああ!! そうだった!!」

 すっかり忘れていたけど、天候でも【吸血鬼】のステータス半減に影響を及ぼす事になるのは当然だ。だって、日が出ていないのだから。

「先に行くべきかな?」
「やめとけ。せめて、南の先のエリアをクリアしてからにしておけ」
「は~い。怒られた」
「まぁ、それくらい危険と言えば危険だからね。【感知】のスキルがあると良いかもね」
「アカリも持ってるの?」

 フレ姉とアク姉が持っているのは知っているけど、アカリが持っているかどうかは知らない。そもそも収得条件が分かっていないしね。

「持ってるよ。最近スキル欄に出て来たよ。そう考えたら、ハクちゃんは、もう少し先かな」
「う~ん……便利そうなんだけどなぁ」
「まぁ、何が条件か分かってねぇんだ。気長にやるしかねぇな」
「だね。でも、早くスキルが欲しいからって、夜更かしは駄目だよ? 睡眠は大事! ちゃんと成長したハクちゃんが見たいし」
「アカリも同じだからな。まぁ、ハクと違って、アカリは聞き分けが良いからな。服以外に関しては」

 ジロッとフレ姉に睨まれて、アカリはサッと目を逸らして私の方を見ていた。絶対に心当たりがある人の様子だ。

「また服作ってんの? この間、沢山着たばっかじゃん」
「おかげで、創作意欲が湧きました」
「あぁ……」

 生産職の性か。現実でも似たような事になっているのは、ちょっと面白いかも。まぁ、それで生活が乱れるのは良くないけど。

「ねぇねぇ、着替えた時の写真は?」
「撮ってないですよ。ハクちゃんは嫌がりますので」
「アカリが楽しむ分には良いけど、写真に撮ったら、アク姉がうるさいから」
「まぁ、アクアはうるせぇな。だから、私にだけ見せれば良いと思うぞ」
「あっ!? フレ姉だけズルい!」
「いや撮るなんて言ってないから。絶対に撮らない。もうアカリにしか見せないって決めた」
「ちっ……アクアめ……」
「私のせいじゃないし! フレ姉の日頃の行いでしょ!」
「これ程までに見事なブーメランを、私は知らない」

 呆れたような目で、フレ姉がアク姉を見ていた。実際、日頃の行い云々は、アク姉の方は悪い。
 そこから他愛のない話が続いていった。お盆には、現実で同じように出来るかな。ちょっと楽しみだ。
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