上 下
40 / 365
吸血少女の歩む道

楽しみな事

しおりを挟む
 高校生活が始まり、平日は夜しかログイン出来なくなった。そのせいで、スキルレベルは大して上がっていない。

────────────────────────

ハク:【剣Lv30】【短剣Lv26】【格闘Lv17】【魔法才能Lv15】【支援魔法才能Lv15】【吸血鬼Lv13】【夜霧Lv7】【執行者Lv26】【硬質化Lv16】
控え:【HP強化Lv25】【物理攻撃強化Lv23】【速度強化Lv26】【運強化Lv12】【脚力強化Lv34】【言語学Lv7】
SP:48

────────────────────────

 【吸血鬼】【魔法才能】【支援魔法才能】【硬質化】のスキルが大きく上がった。ボス戦のおかげで戦闘系のスキルも上がっているけど、アサルトバードと平原のホワイトラビットとスライムを吸っていたから、ジッとしている間にも使えるスキルが育った。加えて、アサルトバードから何度か【硬質化】を得られたので、他よりも【硬質化】の伸びが大きい。
 ついでに、図書館で少し本を読んで【言語学】も上げておいた。こっちでは、まだ良い情報は集まっていない。絵本とか何かしらの物語を少し読めるくらいだ。
 スキルに関しては、こんな感じで、今日は一ついつもと違う予定が入っている。それは、久しぶりに姉妹水入らずで冒険に出る事だ。そのために、スキル上げをちょっと頑張った。
 アク姉達とは、ウェットタウンの広場で待ち合わせをしている。時間的には、ちょっと早いくらいだけど先に行って待っている事にした。広場の端で待っていれば、どこから来ても分かるだろうと思っていたけど、そんな必要はなかった。

「ハクちゃ~ん!!」

 横からの突撃に耐えきれず、倒れてしまうかと思ったら、そのまま抱えられたので倒れる事はなかった。

「一週間ぶりのハクちゃんは、満たされるものがあるね!」
「そんなヤバイ成分は出てない」
「出てる! 私をメロメロにさせるフェロモンが出てるよ!」

 そのまま広場の端っこまで運ばれていく。その間、頬ずりされ続けているので、さすがに周囲の目線などが気になる。アク姉は、そんな事を気にせずに、私を愛でてくる。
 死んだ目で受け入れていると、アク姉の身体に拳が振り下ろされた。

「目立つ事してんじゃねぇ」
「いったぁ……おかげで、簡単に見つけられたくせに……」
「そんな事してねぇでも、お前達なら見つけられるわ。ハクは、あれから何もなかったか?」
「うん。何も無かったよ」
「そうか。なら、良かった」

 フレ姉はそう言って、少し乱暴に頭を撫でてくる。

「そんじゃあ、行くか。湿地帯のボスを倒しに行くんで良いんだよな?」
「うん。私は、まだ倒せてないから」
「湿地帯のボスかぁ……厄介なんだよね」
「そうなの?」

 湿地帯のボス情報は、まだ持っていないので、どんなボスなのか分かっていない。

「厄介と言えば、厄介だが、こいつがいれば大丈夫だろ。最悪、盾になる」
「任せて! ハクちゃんは、絶対に守るから!」
「私も前衛なんだけどなぁ」
「馬鹿は放っておけ」
「馬鹿じゃないもん! 良い大学行ってるもん!」
「アク姉、怒ってないで、早く外行こう? 私が戦える時間は限られてるから」

 今は夜の時間帯だけど、夜明けは、二、三時間でやってくる。そうしたら、私のステータスは半減してしまうので、なるべくなら万全の状態で行きたい。

「それもそうだね! レッツゴー!!」

 アク姉が私の手を取って街の出口に向かって行く。その後ろを、フレ姉が呆れながら付いてきていた。
 ボスの場所までは、一直線に向かって行く。

「結構離れてるの?」
「ああ。ウェットタウンは、大体湿地帯の中央にあるからな。ボスエリアまでは距離があるぞ」
「ふ~ん」
「ところで、少し気になってんだが、その手どうした?」

 フレ姉が、【硬質化】を使った私の片手を見てそう言った。もう片方の手はアク姉に繋がれているので、【硬質化】は使っていない。だから、余計に【硬質化】を使っている手との違いが分かりやすくなっていた。

「【硬質化】ってスキル。アサルトバードから獲得したスキルだよ。アサルトバードから何回か獲得出来たから、結構育ったよ」
「同じスキルを何度も獲得出来るの?」

 アク姉は、少し驚きながら訊いてきた。

「うん。重複したスキルは、そのスキルの経験値になるよ」
「なるほどな。獲得したものが無駄にならないという点に関しては嬉しいが、新たなスキルが手に入らないってのは、もどかしい感じがするな」
「基本的に新しいスキルが欲しくてやってるからね。でも、これはこれで助かってるよ」

 本心で言えば、新しいスキルが欲しい。でも、今あるスキルのレベルが上がるのは、ちょっと嬉しい。

「だろうな。そういえば、スキル獲得の条件は一体の個体に対して一つのスキルだったな?」
「うん」
「じゃあ、こいつから何回も獲得出来るわけじゃないのか?」

 フレ姉がアク姉に指を向ける。指を指されている事が嫌なのか、アク姉はフレ姉の指に噛み付こうとして、簡単に避けられていた。

「試した事ないから分かんない。でも、プレイヤーがリスポーンしたら、別の個体って言われると怖くない?」
「まぁ、そうだな。そうなると、一人のプレイヤーからは、一つのスキルだけという事か。血の吸い時に迷いそうだな」
「そう? 吸血で倒せるなら、いつでも倒すつもりだったけど」
「相手が欲しいスキルを持っているか分かってからの方が良いんじゃないか? 要らないスキルを貰っても困るだろ?」

 確かに、最初にアク姉から【魔法才能】を獲得した時には、どう扱うか迷った。だから、フレ姉の言っている事も理解は出来る。

「でも、どのみちスキルを選べるわけじゃないし、そういう博打要素も楽しいじゃん」
「まぁ、ハクは、そこら辺も楽しむタイプだったな。私からもやってみるか?」
「倒さないと駄目だろうから、普通に戦う時にやる」
「別にデスペナくらいだったら、構わないけどな」
「一方的に姉さんを倒すチャンスだよ! やっちゃおう!」
「パーティーメンバーになってるから、ダメージはねぇ事を忘れてねぇよな?」

 三人でパーティーを組んでいるので、互いの攻撃はダメージにならない。でも、攻撃の判定自体はあるので、ノックバックなどは受ける事になる。なので、やろうと思えば、フレ姉がアク姉を攻撃する事は出来る。

「ダメージがない事を良い事に妹を虐めるつもり!?」
「馬鹿な事を言わなければ良いんだよ。馬鹿」
「馬鹿って言う方が馬鹿ですぅ!」
「なら、お前も馬鹿だな」
「二人ともうるさい……」

 私を挟んで喧嘩しているので、両方から大きな声が聞こえてくる。挟まれる身にもなってほしい。

「ハクちゃん! ごめんね!」

 アク姉が、私を抱き上げて頬ずりしてくる。それをすれば許されると思っているのかと考えたけど、実際には、ただただ愛でたいだけだと思う。ここで止めると、また面倒くさいので、このままにしておく事にした。抱き上げてくれているから、移動自体は楽だし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

トロイメア・オンライン! 〜ブラコンでロリ巨乳の私は、クソザコステータス『HP極振り』と残念魔法『自爆魔法』で、最強で快眠な女子になります〜

早見羽流
SF
不眠症治療のための医療用VRデバイス『トロイメギア』を病院で処方された女子高生――小見心凪。 彼女が『トロイメギア』でプレイするのはサービス開始したばかりのフルダイブ型VRMMOの『トロイメア・オンライン』だった! よく分からずとりあえずキャラエディットで胸を盛ってしまった心凪。 無自覚のうちで編み出した戦法は、脱衣からの自爆魔法という誰も見向きもしなかったかつ凶悪千万なもの! 見た目はロリっ子、中身はハイテンションJKの心凪が、今日も元気に敵と仲間を巻き込みながら自爆するよ! 迷惑極まりないね! 心凪は果たして自爆魔法で最強になれるのか! そして不眠症は治るの? そんなに全裸になって大丈夫なの!? 超弩級のスピード感と爽快感で読者のストレスをも吹き飛ばす。ちょいエロなVRバトルコメディー! ※表紙、挿絵はリック様(Twitter→@Licloud28)に描いていただきました。

【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ
SF
 昔は政府の諜報機関を司っていた名家に生まれ、お嬢様として育った風間奏音(かざまかのん)はしかし、充実感の無い日常に苛立ちを覚えていた。  そんなある日、高校で再会した幼馴染に気分転換にとVRMMOゲームを勧められる。この誘いが、後に世界一有名で、世界一恐れられる"最恐"プレイヤーを世に生み出す事となった。  奏音はゲームを通して抑圧されていた自分の本音に気がつき、その心と向き合い始める。    彼女の行動はやがて周囲へ知れ渡り「1人だけ無双ゲームやってる人」「妖怪頭潰し」「PKの権化」「勝利への執念が反則」と言われて有名になっていく。  恐怖の料理で周囲を戦慄させたり、裏でPKクランを運営して悪逆の限りを尽くしたり、レイドイベントで全体指揮をとったり、楽しく爽快にゲームをプレイ! 《Inequality And Fair》公平で不平等と銘打たれた電脳の世界で、風間奏音改め、アニー・キャノンの活躍が始まる!

超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
★お気に入り登録ポチリお願いします! 2024/3/4 男性向けホトラン1位獲得  難病で動くこともできず、食事も食べられない俺はただ死を待つだけだった。  次に生まれ変わったら元気な体に生まれ変わりたい。  そんな希望を持った俺は知らない世界の子どもの体に転生した。  見た目は浮浪者みたいだが、ある飲食店の店舗前で倒れていたおかげで、店主であるバビットが助けてくれた。  そんなバビットの店の手伝いを始めながら、住み込みでの生活が始まった。  元気に走れる体。  食事を摂取できる体。  前世ではできなかったことを俺は堪能する。  そんな俺に対して、周囲の人達は優しかった。  みんなが俺を多才だと褒めてくれる。  その結果、俺を弟子にしたいと言ってくれるようにもなった。  何でも弟子としてギルドに登録させると、お互いに特典があって一石二鳥らしい。  ただ、俺は決められた仕事をするのではなく、たくさんの職業体験をしてから仕事を決めたかった。  そんな俺にはデイリークエストという謎の特典が付いていた。  それをクリアするとステータスポイントがもらえるらしい。  ステータスポイントを振り分けると、効率よく動けることがわかった。  よし、たくさん職業体験をしよう!  世界で爆発的に売れたVRMMO。  一般職、戦闘職、生産職の中から二つの職業を選べるシステム。  様々なスキルで冒険をするのもよし!  まったりスローライフをするのもよし!  できなかったお仕事ライフをするのもよし!  自由度が高いそのゲームはすぐに大ヒットとなった。  一方、職業体験で様々な職業別デイリークエストをクリアして最強になっていく主人公。  そんな主人公は爆発的にヒットしたVRMMOのNPCプレイヤーキャラクターだった。  なぜかNPCなのにプレイヤーだし、めちゃくちゃ強い。  あいつは何だと話題にならないはずがない。  当の本人はただただ職場体験をして、将来を悩むただの若者だった。  そんなことを知らない主人公の妹は、友達の勧めでゲームを始める。  最強で元気になった兄と前世の妹が繰り広げるファンタジー作品。 ※スローライフベースの作品になっています。 ※カクヨムで先行投稿してます。 文字数の関係上、タイトルが短くなっています。 元のタイトル 超リアルなVRMMOのNPCに転生してデイリークエストをクリアしまくったら、いつの間にか最強になってました~年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれています〜

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン
SF
とある社会人の男性、児玉 光太郎。 彼は「Fantasy World Online」というVRMMOのゲームを他のプレイヤーの様々な嫌がらせをきっかけに引退。 新しくオフラインのゲーム「のんびり牧場ファンタジー」をはじめる。 「のんびり牧場ファンタジー」のコンセプトは、魔法やモンスターがいるがファンタジー世界で スローライフをおくる。魔王や勇者、戦争など物騒なことは無縁な世界で自由気ままに生活しよう! 「次こそはのんびり自由にゲームをするぞ!」 そうしてゲームを始めた主人公は畑作業、釣り、もふもふとの交流など自由気ままに好きなことをして過ごす。 一方、とあるVRMMOでは様々な事件が発生するようになっていた。 主人公と関わりのあったNPCの暗躍によって。 ※ゲームの世界よりスローライフが主軸となっています。 ※是非感想いただけると幸いです。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥
SF
スキル制VRMMORPG<Life Game> それは自らの行動が、スキルとして反映されるゲーム。 そこに初めてログインした少年アキは……、少女になっていた!? 路地裏で精霊シルフと出会い、とある事から生産職への道を歩き始める。 ゲームで出会った仲間たちと冒険に出たり、お家でアイテムをグツグツ煮込んだり。 そんなアキのプレイは、ちょっと人と違うみたいで……? ------------------------------------- ※当作品は小説家になろう・カクヨムで先行掲載しております。

『ライフで受けてライフで殴る』これぞ私の必勝法

こまるん
SF
『すべてライフで受けちゃえば、ゲーム上手くなくてもなんとかなるんじゃない?』 「Infinite Creation」 株式会社トライアングルが手掛ける、最新のVRMMOである。 無限の創造性という謡い文句に違わず、プレイヤーたちを待ち受けるのはもう一つの世界。 この自由度の高いオープンワールドで、主人公「桐谷深雪(PNユキ)」は、ある突飛な遊び方を思いついた。 配信者デビューしたユキが、賑やかなコメント欄と共にマイペースにゲームを楽しんでいくほんわかストーリー。今ここに始まる。 何をどう間違ったのか。ただいま聖女として歩く災害爆進中!!

私たちだけ24時間オンライン生産生活

滝川 海老郎
SF
VR技術が一般化される直前の世界。予備校生だった女子の私は、友人2人と、軽い気持ちで応募した医療実験の2か月間24時間連続ダイブの被験者に当選していた。それは世界初のVRMMORPGのオープンベータ開始に合わせて行われ、ゲーム内で過ごすことだった。一般ユーザーは1日8時間制限があるため、睡眠時間を除けば私たちは2倍以上プレイできる。運動があまり得意でない私は戦闘もしつつ生産中心で生活する予定だ。

処理中です...