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吸血少女の始まり
優勝者は……
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周囲を見回すと、プレイヤーが続々と戻って来た。そして、全員が戻ってきたタイミングで、目の前にウィンドウが現れる。
『イベント終了まで決着が付かなかったため、最多プレイヤーキル数で優勝者を決めます。第一回バトルロイヤル優勝者は、五十二キルで『ソル』に決まりました。あなたは、十九キルでした。二十位以内入賞賞品として、ランダムアイテムボックスを送ります。毎日一回ランダムにアイテムが出て来る箱です。是非活用してください』
ウィンドウには、そう書かれていた。ここでランダムアイテムボックスを出すと、入賞者だとバレるので、まだ出さない。
それにしても、私が十九人を倒したのに対して、優勝者は五十二人も倒している。多分、フレ姉と戦っていた彼女だ。それくらいの力が、彼女にはある。
「よう。どうだった?」
後ろから私の頭に腕を乗せながらそう言ってきたのは、フレ姉だった。
「う~ん……良かったっちゃ良かったかな。フレ姉は、二位とかじゃないの?」
「ああ、やっぱりあいつは別格だったな。ありゃ、私達が経験した事のない戦いをやってるな。私もやってみてぇ」
「フレ姉、戦うの好きだもんね。私も、もっと強くなりたいなぁ」
「おっ、うちのギルドに入って鍛えるか?」
「ギルドは入らない。面倒くさいもん。あっ、そうだ! 私の防具……あれ?」
欠損した部分から先が、なくなっているはずだったけど、今はきちんとある。あそこ限定の欠損だったから、防具へのダメージもなしって感じかな。
「ん? ああ、欠損ダメージは、防具も元に戻るぞ。ただ、耐久度とかは減ってるから、アカリに直して貰え」
「そうなんだ。分かった。ありがとう」
「おう」
フレ姉が私の頭をポンポンと叩いた直後、私は後ろから抱きしめられた。犯人は、確認しなくても分かる。アク姉だ。
「姉さん、聞いてよ。ハクちゃんったら、私の事を吸血したんだよ?」
「おう。良かったな」
「うん! って、そうじゃない! 確かに、ちょっと気持ちよさはあったけど、身体から何かを失う喪失感的なものが凄かったんだから」
「そうだ。ちょうど良かった。アク姉に訊きたい事があったんだった」
「何々!?」
アク姉は、嬉々として顔を近づけて来る。それを押しのける。
「魔法について訊きたいの。でも、その前にアカリエに行きたいんだ。その後でね」
「じゃあ、連れて行ってあげる」
「いや、一人で歩け~るよ~!」
アク姉は、私を抱き抱えて、アカリエへと走り出した。その後ろから、ため息をつきながら、フレ姉も追ってきてくれた。多分、アク姉を叱るためだ。
アカリエに着いたところで、アク姉が降ろしてくれる。その直後に、アク姉がフレ姉から拳骨を受けた。
「うぅ……」
「馬鹿が、目立つような事すんな。ただでさえ、お前達は可愛らしい出で立ちなんだ。またナンパ受けたらどうすんだ」
「ナンパは受けた事ない……」
「ハクが受けたんだよ」
「はぁ!?」
「安心しろ。きちんと脅しはしておいた」
「駄目だよ。完膚なきまでにやらないと。今から、PvPで倒しまくってくる」
「この馬鹿は止めておくから、ハクは、アカリに防具を修復して貰ってこい」
フレ姉にそう言われたので、私はアカリエの中に入る。アカリは受付で、何かの作業をしているところだった。
「あ、ハクちゃん。イベント終わったの?」
「うん。ちょっと防具を見てくれる?」
「ああ、酷使したって事ね。こっち来て」
裏に案内されると、アカリは、私が着ている血姫の装具を触って、ジッと見ていた。
「結構減らされてるね。まだ大丈夫な範囲内だけど、一応直しておこうか。全部脱いで」
「更衣室は?」
「裏にはないよ。私達だけだし、このまま着替えて良いよ」
「ん~」
血姫の装具を脱いで、白いブラウスと黒いジーンズみたいなものに着替える。見かけだけだけど、初期装備よりはマシなので、こっちを着る。
「二十分くらい待ってて」
「オッケー。フレ姉達が外にいるから、外で待ってる」
「分かった」
アカリに防具を任せて、アカリエの外に出る。
「あっ、ハクちゃん可愛い!」
服を着替えたからか、またアク姉に捕まる。フレ姉がため息をついているところから説教は終わったみたい。
「二十分で終わるって」
「なら、中で待つか。座る場所があっただろう」
私達はアカリエの中にあるソファに座る。私は、アク姉の膝の上に座る事になる。【吸血】を使って倒した罰なので、受け入れるしかない。
「それで、私に訊きたい事って何?」
アク姉が人の髪に顔を突っ込みながら訊いてくる。
「私、アク姉を吸血して、【魔法才能】を手に入れたんだけど、魔法ってどんな感じなのかなって。場合によっては、使うかもだから」
アク姉から【魔法才能】を得たところまでは、魔法を使おうという気は全く無かった。でも、彼女……ソルさんと戦った時から、自分は、自分に出来る事を最大限やっていないのではと思い始めた。
【格闘】に関してもそうだ。あの時、自分に足りないものを考え、真っ先に【格闘】だと判断した。そもそも【脚力強化】を獲得した時に、【格闘】も取っておくべきだった。【格闘】に【脚力強化】がプラスすれば、蹴りの威力は格段に上がる。そんな事は、深く考えなくても分かった事だ。
でも、スキル収得に慎重になった方が良いという考えが先行しすぎて、すぐには必要ないだろうと取ろうという気にはならなかった。足が速くなったし、それでいいやとも思っていた。正直、あの時に【格闘】があったら良い勝負になったかと言うと、全くそうは思わないけど。
そういう事もあって、せっかく手に入れた【魔法才能】を腐らせるのは、勿体ないと考えた。そして、訊くならアク姉だとも考えていた。
「プレイヤーからもスキルを獲得出来るのか。【吸血】が、ここまで不人気になる要素を満載にされた理由が分かるな」
「スキルポイントなしで得られるってだけだったら、壊れスキルだもんね」
フレ姉とアク姉は、【吸血】の利点が大きい事を再認識したみたい。その分欠点も大きすぎて、普通は使えないけど。
「魔法についてだったね。まず、【魔法才能】について教えるね。簡単に言えば、魔法を使うために必要な基礎スキルってところかな。一応、レベルが上がるとMPが増えるよ」
────────────────────────
【魔法才能】:魔法を扱うためのスキル。装備することで、属性魔法の使用条件の一つを満たす。
────────────────────────
スキルの説明に書いてある通りだった。実際に魔法を使うアク姉が言っているので、間違いはない。つまり、魔法を上手く使うためのものではなく、魔法使うための必須スキルという事だ。
「これに【火魔法才能】とかのスキルを取って合わせて装備する事で、その属性の魔法が使えるようになるよ。だから、確実に二つのスキルスロットを使うって感じ。後は、魔法の名前を言うだけで、発動するよ」
「なるほど……集中しないといけないとかないの?」
「ないね。慌てて発動しても撃ち出せるよ。ただ、狙いを定めるって点では、集中しないと難しいかも」
確かに、しっかりと狙って撃つって考えると、近接戦の最中にするのは、結構難しいかもしれない。でも、牽制には使えると思う。
「ハクちゃんが使うなら、【支援魔法才能】とかどう?」
「【支援魔法才能】?」
「うん。バフとかデバフとかを掛ける魔法なんだけど、あまり狙う必要がないから、近接戦闘を中心にするハクちゃんでも使いやすいと思うよ」
「デバフの中には、相手の行動を制限するものあるからな。【吸血】を使う時に、重宝するかもな」
「一応、他の魔法才能系スキルでも、動きを阻害する魔法は覚えられるけど、支援魔法には劣るって聞くから、そっち目当てなら、やっぱり【支援魔法才能】が良いと思う」
二人の意見を聞いて、スキル収得画面を見る。【支援魔法才能】は、ランク1の場所にあった。今まで無かった事から、【魔法才能】の派生スキルと考える事が出来る。
「簡単に取れそう。パーティーでは使ってるの?」
「うちは回復と支援に振っている奴が、何人かいるな。戦闘が楽になる」
「私も回復メインの子が使ってるよ。姉さんの言う通り、本当に戦闘が楽になるから、便利だよ」
「ただ、あまりソロで戦う奴が取るものではないみたいだな。一人で使っている奴は見た事がない。単純に、スキルスロットが埋まるのが嫌なのかもな」
物理で攻める人達には、魔法にスキルを割こうと思う人は少ないと思う。魔法を併用して使う魔法剣士風でプレイしようとでも思わない限り、取らないだろう。私だって、こうしてアク姉から【魔法才能】を獲得しなかったら、魔法も使ってみようとは考えなかっただろうから、気持ちは分かる。
「う~ん……相手を拘束出来るのは魅力的だし、ちょっと使ってみようかな」
「ステータスの底上げも出来るからな。ハクに足りないものを補う事も出来るだろう」
「一つだけ気を付ける事は、口にしないと発動しない事。水中とか発声が出来ない状況では使えないから気を付けて。多分、この先のアップデートか、上のランクにあるスキルで対応出来るようになると思うよ」
「【魔法ストック】で解決出来ないの?」
「【魔法ストック】は、使う時に【リリース】って言葉が必要なの。そういう意味では、どこでも使えるものではないかな」
「そうなんだ」
魔法って言っても、どこでも使える便利なものとは考えない方が良さそうだ。
「でも、そんな状況になる事の方が少ないだろうし、【支援魔法才能】取ってみる」
「戦いに幅が生まれる分、下手すると器用貧乏になるかもしれねぇから、そこは気を付けろ」
「うん」
スキルに関しての話を終えて、少し駄弁っていると、アカリが裏から出て来た。
「終わったよ」
「ありがとう」
アカリから血姫の装具を受け取って、更衣室に入り着替えてから出る。
「ちょっとだけ話が聞こえてきたんだけど、ハクちゃん、【格闘】と【魔法才能】を取ったの?」
「【格闘】は取ったけど、【魔法才能】はアク姉から貰った」
「あっ、なるほど」
アカリは、すぐに【吸血】で獲得したって気付いたみたい。
「【格闘】……ハクちゃん、靴だけ預かっても良い?」
「えっ、うん。良いけど」
私は靴を履き替えて、アカリに渡す。
「ありがとう。明日には出来るようにするから」
「分かった。じゃあ、また」
「うん。フレイさんもアクアさんもおもてなし出来なくてごめんなさい」
「構わねぇさ。私達は、ハクの付き添いだからな」
「うんうん。また今度、お客さんとして来るね」
「はい。ありがとうございます」
私達は、アカリエを出て、ある場所に向かう。
『イベント終了まで決着が付かなかったため、最多プレイヤーキル数で優勝者を決めます。第一回バトルロイヤル優勝者は、五十二キルで『ソル』に決まりました。あなたは、十九キルでした。二十位以内入賞賞品として、ランダムアイテムボックスを送ります。毎日一回ランダムにアイテムが出て来る箱です。是非活用してください』
ウィンドウには、そう書かれていた。ここでランダムアイテムボックスを出すと、入賞者だとバレるので、まだ出さない。
それにしても、私が十九人を倒したのに対して、優勝者は五十二人も倒している。多分、フレ姉と戦っていた彼女だ。それくらいの力が、彼女にはある。
「よう。どうだった?」
後ろから私の頭に腕を乗せながらそう言ってきたのは、フレ姉だった。
「う~ん……良かったっちゃ良かったかな。フレ姉は、二位とかじゃないの?」
「ああ、やっぱりあいつは別格だったな。ありゃ、私達が経験した事のない戦いをやってるな。私もやってみてぇ」
「フレ姉、戦うの好きだもんね。私も、もっと強くなりたいなぁ」
「おっ、うちのギルドに入って鍛えるか?」
「ギルドは入らない。面倒くさいもん。あっ、そうだ! 私の防具……あれ?」
欠損した部分から先が、なくなっているはずだったけど、今はきちんとある。あそこ限定の欠損だったから、防具へのダメージもなしって感じかな。
「ん? ああ、欠損ダメージは、防具も元に戻るぞ。ただ、耐久度とかは減ってるから、アカリに直して貰え」
「そうなんだ。分かった。ありがとう」
「おう」
フレ姉が私の頭をポンポンと叩いた直後、私は後ろから抱きしめられた。犯人は、確認しなくても分かる。アク姉だ。
「姉さん、聞いてよ。ハクちゃんったら、私の事を吸血したんだよ?」
「おう。良かったな」
「うん! って、そうじゃない! 確かに、ちょっと気持ちよさはあったけど、身体から何かを失う喪失感的なものが凄かったんだから」
「そうだ。ちょうど良かった。アク姉に訊きたい事があったんだった」
「何々!?」
アク姉は、嬉々として顔を近づけて来る。それを押しのける。
「魔法について訊きたいの。でも、その前にアカリエに行きたいんだ。その後でね」
「じゃあ、連れて行ってあげる」
「いや、一人で歩け~るよ~!」
アク姉は、私を抱き抱えて、アカリエへと走り出した。その後ろから、ため息をつきながら、フレ姉も追ってきてくれた。多分、アク姉を叱るためだ。
アカリエに着いたところで、アク姉が降ろしてくれる。その直後に、アク姉がフレ姉から拳骨を受けた。
「うぅ……」
「馬鹿が、目立つような事すんな。ただでさえ、お前達は可愛らしい出で立ちなんだ。またナンパ受けたらどうすんだ」
「ナンパは受けた事ない……」
「ハクが受けたんだよ」
「はぁ!?」
「安心しろ。きちんと脅しはしておいた」
「駄目だよ。完膚なきまでにやらないと。今から、PvPで倒しまくってくる」
「この馬鹿は止めておくから、ハクは、アカリに防具を修復して貰ってこい」
フレ姉にそう言われたので、私はアカリエの中に入る。アカリは受付で、何かの作業をしているところだった。
「あ、ハクちゃん。イベント終わったの?」
「うん。ちょっと防具を見てくれる?」
「ああ、酷使したって事ね。こっち来て」
裏に案内されると、アカリは、私が着ている血姫の装具を触って、ジッと見ていた。
「結構減らされてるね。まだ大丈夫な範囲内だけど、一応直しておこうか。全部脱いで」
「更衣室は?」
「裏にはないよ。私達だけだし、このまま着替えて良いよ」
「ん~」
血姫の装具を脱いで、白いブラウスと黒いジーンズみたいなものに着替える。見かけだけだけど、初期装備よりはマシなので、こっちを着る。
「二十分くらい待ってて」
「オッケー。フレ姉達が外にいるから、外で待ってる」
「分かった」
アカリに防具を任せて、アカリエの外に出る。
「あっ、ハクちゃん可愛い!」
服を着替えたからか、またアク姉に捕まる。フレ姉がため息をついているところから説教は終わったみたい。
「二十分で終わるって」
「なら、中で待つか。座る場所があっただろう」
私達はアカリエの中にあるソファに座る。私は、アク姉の膝の上に座る事になる。【吸血】を使って倒した罰なので、受け入れるしかない。
「それで、私に訊きたい事って何?」
アク姉が人の髪に顔を突っ込みながら訊いてくる。
「私、アク姉を吸血して、【魔法才能】を手に入れたんだけど、魔法ってどんな感じなのかなって。場合によっては、使うかもだから」
アク姉から【魔法才能】を得たところまでは、魔法を使おうという気は全く無かった。でも、彼女……ソルさんと戦った時から、自分は、自分に出来る事を最大限やっていないのではと思い始めた。
【格闘】に関してもそうだ。あの時、自分に足りないものを考え、真っ先に【格闘】だと判断した。そもそも【脚力強化】を獲得した時に、【格闘】も取っておくべきだった。【格闘】に【脚力強化】がプラスすれば、蹴りの威力は格段に上がる。そんな事は、深く考えなくても分かった事だ。
でも、スキル収得に慎重になった方が良いという考えが先行しすぎて、すぐには必要ないだろうと取ろうという気にはならなかった。足が速くなったし、それでいいやとも思っていた。正直、あの時に【格闘】があったら良い勝負になったかと言うと、全くそうは思わないけど。
そういう事もあって、せっかく手に入れた【魔法才能】を腐らせるのは、勿体ないと考えた。そして、訊くならアク姉だとも考えていた。
「プレイヤーからもスキルを獲得出来るのか。【吸血】が、ここまで不人気になる要素を満載にされた理由が分かるな」
「スキルポイントなしで得られるってだけだったら、壊れスキルだもんね」
フレ姉とアク姉は、【吸血】の利点が大きい事を再認識したみたい。その分欠点も大きすぎて、普通は使えないけど。
「魔法についてだったね。まず、【魔法才能】について教えるね。簡単に言えば、魔法を使うために必要な基礎スキルってところかな。一応、レベルが上がるとMPが増えるよ」
────────────────────────
【魔法才能】:魔法を扱うためのスキル。装備することで、属性魔法の使用条件の一つを満たす。
────────────────────────
スキルの説明に書いてある通りだった。実際に魔法を使うアク姉が言っているので、間違いはない。つまり、魔法を上手く使うためのものではなく、魔法使うための必須スキルという事だ。
「これに【火魔法才能】とかのスキルを取って合わせて装備する事で、その属性の魔法が使えるようになるよ。だから、確実に二つのスキルスロットを使うって感じ。後は、魔法の名前を言うだけで、発動するよ」
「なるほど……集中しないといけないとかないの?」
「ないね。慌てて発動しても撃ち出せるよ。ただ、狙いを定めるって点では、集中しないと難しいかも」
確かに、しっかりと狙って撃つって考えると、近接戦の最中にするのは、結構難しいかもしれない。でも、牽制には使えると思う。
「ハクちゃんが使うなら、【支援魔法才能】とかどう?」
「【支援魔法才能】?」
「うん。バフとかデバフとかを掛ける魔法なんだけど、あまり狙う必要がないから、近接戦闘を中心にするハクちゃんでも使いやすいと思うよ」
「デバフの中には、相手の行動を制限するものあるからな。【吸血】を使う時に、重宝するかもな」
「一応、他の魔法才能系スキルでも、動きを阻害する魔法は覚えられるけど、支援魔法には劣るって聞くから、そっち目当てなら、やっぱり【支援魔法才能】が良いと思う」
二人の意見を聞いて、スキル収得画面を見る。【支援魔法才能】は、ランク1の場所にあった。今まで無かった事から、【魔法才能】の派生スキルと考える事が出来る。
「簡単に取れそう。パーティーでは使ってるの?」
「うちは回復と支援に振っている奴が、何人かいるな。戦闘が楽になる」
「私も回復メインの子が使ってるよ。姉さんの言う通り、本当に戦闘が楽になるから、便利だよ」
「ただ、あまりソロで戦う奴が取るものではないみたいだな。一人で使っている奴は見た事がない。単純に、スキルスロットが埋まるのが嫌なのかもな」
物理で攻める人達には、魔法にスキルを割こうと思う人は少ないと思う。魔法を併用して使う魔法剣士風でプレイしようとでも思わない限り、取らないだろう。私だって、こうしてアク姉から【魔法才能】を獲得しなかったら、魔法も使ってみようとは考えなかっただろうから、気持ちは分かる。
「う~ん……相手を拘束出来るのは魅力的だし、ちょっと使ってみようかな」
「ステータスの底上げも出来るからな。ハクに足りないものを補う事も出来るだろう」
「一つだけ気を付ける事は、口にしないと発動しない事。水中とか発声が出来ない状況では使えないから気を付けて。多分、この先のアップデートか、上のランクにあるスキルで対応出来るようになると思うよ」
「【魔法ストック】で解決出来ないの?」
「【魔法ストック】は、使う時に【リリース】って言葉が必要なの。そういう意味では、どこでも使えるものではないかな」
「そうなんだ」
魔法って言っても、どこでも使える便利なものとは考えない方が良さそうだ。
「でも、そんな状況になる事の方が少ないだろうし、【支援魔法才能】取ってみる」
「戦いに幅が生まれる分、下手すると器用貧乏になるかもしれねぇから、そこは気を付けろ」
「うん」
スキルに関しての話を終えて、少し駄弁っていると、アカリが裏から出て来た。
「終わったよ」
「ありがとう」
アカリから血姫の装具を受け取って、更衣室に入り着替えてから出る。
「ちょっとだけ話が聞こえてきたんだけど、ハクちゃん、【格闘】と【魔法才能】を取ったの?」
「【格闘】は取ったけど、【魔法才能】はアク姉から貰った」
「あっ、なるほど」
アカリは、すぐに【吸血】で獲得したって気付いたみたい。
「【格闘】……ハクちゃん、靴だけ預かっても良い?」
「えっ、うん。良いけど」
私は靴を履き替えて、アカリに渡す。
「ありがとう。明日には出来るようにするから」
「分かった。じゃあ、また」
「うん。フレイさんもアクアさんもおもてなし出来なくてごめんなさい」
「構わねぇさ。私達は、ハクの付き添いだからな」
「うんうん。また今度、お客さんとして来るね」
「はい。ありがとうございます」
私達は、アカリエを出て、ある場所に向かう。
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