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吸血少女の始まり
アカリエ
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日が出てきて、私は街に戻ってきた。入口に街の名前が書かれており、ここで、初めて私はこの街の名前を知る。
「『ファーストタウン』。名前の通り、最初の街だからか。それにしても、ステータスの三割ダウンって、こんなに来るんだ」
身体に怠さを感じながら、街の中に入っていく。戦えないくらい怠いわけではないので、この状態でも戦えるようにはなっておいた方が良いかもしれない。
取り敢えず、今は、さっき手に入れた素材を売って、どのくらいの稼ぎになるのかを確かめたい。早く初心者装備から脱却したいし。どこかに適当な換金所がないかと探して歩いていると、一つの店が目に付いた。
そこの看板には、『服飾屋アカリエ』と書かれていた。その店名に、私は心当たりがあった。迷わずに、そのまま店内に入っていく。扉を開けて閉めると、お客さんが来た事を知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
奥から金髪を背中まで伸ばした碧眼のエルフが出て来た。その姿を見て、私は自分の考えが正しかった事を確信する。
「あっ、やっぱり、アカリでしょ?」
「ん? ああ、ハクって事は、白ちゃんか」
営業スマイルだった金髪エルフは、すぐに柔らかな笑みになった。このエルフは、私の幼馴染みの西島光のアバターであるアカリだ。いつも金髪エルフのアバターにしているので、名前と姿である程度予測出来る。それでも人違いだった可能性はあるけど。
「今日から?」
「そう。かー姉が買ってくれたんだ」
「そうなんだ。良かったね。態々お店に入ってきたって事は、換金か何か?」
アカリは、すぐに私の目的を察する。
「正解。ここは、何を売れるの?」
「基本何でも受け付けてるよ。皮とか布とか以外でも、強化に使えたりするし、鉱石を使って作ったりもするからね。結構無駄はないよ」
「おっ、それじゃあ、これお願い」
私は、手に入れた全部の素材を、売却メニューに移していく。
「うん、うん、うん?」
急にアカリが首を傾げる。
「どうしたの?」
「スライムの核多すぎだなって。結構レアって言われてるんだけど」
「そう? スライムを飲んだら、簡単に手に入るけど?」
「……なんて?」
「スライムを飲んだら、簡単に手に入るけどって」
アカリは、呆れたような表情になる。
「あ~……やっぱり、あまり飲まない感じ?」
「飲んだことある人の方が少ないと思う。取り敢えず、今の相場だとこんな感じかな」
「えっと……三万Gか。高いのか安いのか分からないんだけど」
ワンオンの通貨単位はGとなっている。因みに、初期資金としては、一万Gが入っている。そこに三万プラスされて、今の私の資金は四万Gになったという事だ。
「東の森で狩りをしたにしては高いよ。スライムの核が特に高いからね」
「ふ~ん、使い道は?」
「追加効果で、【弾性上昇】が付くって感じ。軽い攻撃が弾けるくらいかな。後は、私は持ってないけど、【合成】だか【錬金】だかで、召喚獣を作るみたいな使い道かな」
「へぇ~、そんなスキルもあるのか。まだまだ全然知らないスキルが多いなぁ」
「始めたばかりで、全てのスキルを網羅されていても怖いけど。そういえば、ハクちゃんの初期スキルはなんだったの?」
「ああ、これ」
アカリに訊かれたので、私のスキルをアカリに見せる。
────────────────────────
ハク:【剣Lv4】【吸血Lv6】【脚力強化Lv1】
控え:なし
SP:1
────────────────────────
あれだけ【吸血】を使ったので、スキルレベルが上がって、SPが増えた。これで、ランク1のスキルは収得出来る。強化系を取っても良いかもしれない。
そう思っていると、アカリが何とも言えない表情をしていた。
「あの掲示板は、ハクちゃんか……」
「掲示板?」
「そう。ホワイトラビットに噛み付いて、スライムを食べている少女がいたって、騒がれてたの。一体、何してたの?」
「ホワイトラビットのスキルを取ろうと思ってね。スライムで、口直ししてた。味はないけど、アイテムも手に入れられて、一石二鳥って感じ」
アカリは、信じられないものを見るような目で、こっちを見てくる。スライムで口直しは、さすがにあり得ない行動だったみたいだ。
「まぁ、真の口直しは、この林檎だけどね」
「ああ、甘酸林檎ね。料理したら、アップルパイとかに出来るけど」
「料理か……スキルにある?」
「あるけど、特に美味しい物を作るくらいしか使い道はないから、取らないでも良いよ。近くの飲食店で、食べられるし」
「そうなんだ。後で案内して」
「良いよ」
アカリは、即答で返事をしてくれる。
「そうだ。ところでさ、この【脚力強化】って、どのランクにあるスキルなの? 後、この範囲ってどこまで?」
私が手に入れたスキルである【脚力強化】は、ランク1の強化系スキルの中には見当たらなかった。ちなみに、【脚力強化】は、こんな効果だった。
────────────────────────
【脚力強化】:脚を使った行動を強化する。
────────────────────────
短く簡潔に書かれていた。脚を使った行動というのが、どこまでの範囲なのか分からないので、私よりも大分先輩のアカリに話を訊く。
「それは、モンスターが持つスキルだから、スキル収得欄にはないよ。それと、それの範囲は、本当に脚を使った行動。走る、蹴る、ジャンプどれでもね。ただ歩きだけは強化されないみたい」
「ほ~ん。なるほどね。それも【吸血】のメリットって事か」
「まぁ、普通の人は吐くから、手に入れるのも難しいけどね。ハクちゃんは……水波さんか……」
「生ゴミ上等みたいな感じ。ただ、ゴブリンとかが出て来たら、吸血するか悩むんだよね」
「ああ、気持ちは分かる。こっちのゴブリンも他のゲームと同じで緑色の肌をしているんだけど、見た目が汚らしいんだけどね。やるんだったら、洗った後にした方が良いと思う」
アカリの話を聞いて、余計にゴブリンへの吸血を躊躇いそう。ただ、魔物限定スキルの魅力は強い。その時になったら、多分悩む事になるんだろうな。
「さてと、せっかくハクちゃんが来た事だし、さっき言ったお店に行こうか」
「お店は良いの?」
「大丈夫。店番頼むから」
どうやら、NPCに店番を任せる事が出来るみたい。まぁ、そうじゃないと店に張り付きになるから当たり前か。店番の設定をしてきたアカリと一緒に外に出る。
「それじゃあ行こうか」
アカリに連れられて、街を歩き出した。
「『ファーストタウン』。名前の通り、最初の街だからか。それにしても、ステータスの三割ダウンって、こんなに来るんだ」
身体に怠さを感じながら、街の中に入っていく。戦えないくらい怠いわけではないので、この状態でも戦えるようにはなっておいた方が良いかもしれない。
取り敢えず、今は、さっき手に入れた素材を売って、どのくらいの稼ぎになるのかを確かめたい。早く初心者装備から脱却したいし。どこかに適当な換金所がないかと探して歩いていると、一つの店が目に付いた。
そこの看板には、『服飾屋アカリエ』と書かれていた。その店名に、私は心当たりがあった。迷わずに、そのまま店内に入っていく。扉を開けて閉めると、お客さんが来た事を知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
奥から金髪を背中まで伸ばした碧眼のエルフが出て来た。その姿を見て、私は自分の考えが正しかった事を確信する。
「あっ、やっぱり、アカリでしょ?」
「ん? ああ、ハクって事は、白ちゃんか」
営業スマイルだった金髪エルフは、すぐに柔らかな笑みになった。このエルフは、私の幼馴染みの西島光のアバターであるアカリだ。いつも金髪エルフのアバターにしているので、名前と姿である程度予測出来る。それでも人違いだった可能性はあるけど。
「今日から?」
「そう。かー姉が買ってくれたんだ」
「そうなんだ。良かったね。態々お店に入ってきたって事は、換金か何か?」
アカリは、すぐに私の目的を察する。
「正解。ここは、何を売れるの?」
「基本何でも受け付けてるよ。皮とか布とか以外でも、強化に使えたりするし、鉱石を使って作ったりもするからね。結構無駄はないよ」
「おっ、それじゃあ、これお願い」
私は、手に入れた全部の素材を、売却メニューに移していく。
「うん、うん、うん?」
急にアカリが首を傾げる。
「どうしたの?」
「スライムの核多すぎだなって。結構レアって言われてるんだけど」
「そう? スライムを飲んだら、簡単に手に入るけど?」
「……なんて?」
「スライムを飲んだら、簡単に手に入るけどって」
アカリは、呆れたような表情になる。
「あ~……やっぱり、あまり飲まない感じ?」
「飲んだことある人の方が少ないと思う。取り敢えず、今の相場だとこんな感じかな」
「えっと……三万Gか。高いのか安いのか分からないんだけど」
ワンオンの通貨単位はGとなっている。因みに、初期資金としては、一万Gが入っている。そこに三万プラスされて、今の私の資金は四万Gになったという事だ。
「東の森で狩りをしたにしては高いよ。スライムの核が特に高いからね」
「ふ~ん、使い道は?」
「追加効果で、【弾性上昇】が付くって感じ。軽い攻撃が弾けるくらいかな。後は、私は持ってないけど、【合成】だか【錬金】だかで、召喚獣を作るみたいな使い道かな」
「へぇ~、そんなスキルもあるのか。まだまだ全然知らないスキルが多いなぁ」
「始めたばかりで、全てのスキルを網羅されていても怖いけど。そういえば、ハクちゃんの初期スキルはなんだったの?」
「ああ、これ」
アカリに訊かれたので、私のスキルをアカリに見せる。
────────────────────────
ハク:【剣Lv4】【吸血Lv6】【脚力強化Lv1】
控え:なし
SP:1
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あれだけ【吸血】を使ったので、スキルレベルが上がって、SPが増えた。これで、ランク1のスキルは収得出来る。強化系を取っても良いかもしれない。
そう思っていると、アカリが何とも言えない表情をしていた。
「あの掲示板は、ハクちゃんか……」
「掲示板?」
「そう。ホワイトラビットに噛み付いて、スライムを食べている少女がいたって、騒がれてたの。一体、何してたの?」
「ホワイトラビットのスキルを取ろうと思ってね。スライムで、口直ししてた。味はないけど、アイテムも手に入れられて、一石二鳥って感じ」
アカリは、信じられないものを見るような目で、こっちを見てくる。スライムで口直しは、さすがにあり得ない行動だったみたいだ。
「まぁ、真の口直しは、この林檎だけどね」
「ああ、甘酸林檎ね。料理したら、アップルパイとかに出来るけど」
「料理か……スキルにある?」
「あるけど、特に美味しい物を作るくらいしか使い道はないから、取らないでも良いよ。近くの飲食店で、食べられるし」
「そうなんだ。後で案内して」
「良いよ」
アカリは、即答で返事をしてくれる。
「そうだ。ところでさ、この【脚力強化】って、どのランクにあるスキルなの? 後、この範囲ってどこまで?」
私が手に入れたスキルである【脚力強化】は、ランク1の強化系スキルの中には見当たらなかった。ちなみに、【脚力強化】は、こんな効果だった。
────────────────────────
【脚力強化】:脚を使った行動を強化する。
────────────────────────
短く簡潔に書かれていた。脚を使った行動というのが、どこまでの範囲なのか分からないので、私よりも大分先輩のアカリに話を訊く。
「それは、モンスターが持つスキルだから、スキル収得欄にはないよ。それと、それの範囲は、本当に脚を使った行動。走る、蹴る、ジャンプどれでもね。ただ歩きだけは強化されないみたい」
「ほ~ん。なるほどね。それも【吸血】のメリットって事か」
「まぁ、普通の人は吐くから、手に入れるのも難しいけどね。ハクちゃんは……水波さんか……」
「生ゴミ上等みたいな感じ。ただ、ゴブリンとかが出て来たら、吸血するか悩むんだよね」
「ああ、気持ちは分かる。こっちのゴブリンも他のゲームと同じで緑色の肌をしているんだけど、見た目が汚らしいんだけどね。やるんだったら、洗った後にした方が良いと思う」
アカリの話を聞いて、余計にゴブリンへの吸血を躊躇いそう。ただ、魔物限定スキルの魅力は強い。その時になったら、多分悩む事になるんだろうな。
「さてと、せっかくハクちゃんが来た事だし、さっき言ったお店に行こうか」
「お店は良いの?」
「大丈夫。店番頼むから」
どうやら、NPCに店番を任せる事が出来るみたい。まぁ、そうじゃないと店に張り付きになるから当たり前か。店番の設定をしてきたアカリと一緒に外に出る。
「それじゃあ行こうか」
アカリに連れられて、街を歩き出した。
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