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09.師匠のお誘い弟子は戸惑い

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 ☆いやらしい目に合うのは弟子だけです




 いつものように、夜明けと共に目覚めた。

 どうやら私は、仰向けに寝る揃えられたシューの両脚に、彼の方を向いて横になって右足を乗せている。
 右手は胸元に置かれていた。

 一体いつから…寝苦しかっただろう、早く下ろさないと。
 …と思ったけれど、胸板の厚みに今更ながらに気づいた。
 抱きしめられたことはあるけれど、その時には気に留めていなかった。
 撫でまわしながら手のひらを腹の方に移動させると、何かに当たった。

 何か…とは陰茎。勃起している。
 これは知っている。男性の生理現象だ。

 夜衣の上から指先で先端の丸みを確かめていると、僅かにシューが身じろぎをした。

「……師匠…おはようございます…」
「あ、おはよう、シュー」
「…っ、なに、を」
「……もっと触ってもいい?」
「え、は、はい……あっ、師匠っ」
「…ん?」
「その、荒々しくではなく、優しめに…」
「そういうのが好きなの?」
「え、まあ、はい」

 空は少しだけ明るくなっているものの表情まではよく見えないのを残念に感じながら、掛布の中で夜衣の裾を上げて下着の上から陰茎をまさぐった。
 そっと握って、根元から先端までを緩い力で扱くとくびれの辺りでシューが小さく声を上げたので、優しめに…を心がけながら親指で弄ってみた。

「……っ、暑いです…」

 シューが掛布をめくって、仰向けのまま下着を下ろした。
 ここまでかと手をとめたけれど、

「あの、もう少し…強くても……」
「あ、うん」

 まだ続けてもいいようだった。
 
 なんとなく、シューの両の太腿の上に跨ってみた。
 先程よりも握る指に力を込めて上下に動かしていると、下半身がびくりと震えた。

「…っ、………は、あ…っ」
  
 ――ああっ、灯りをつけてもらえばよかった…!
 悔やんでいると、シューが下着で精液を拭っているのを気配で感じた。


「夜にまた、いやらしいことしてもいい…?」

 まだ、夜明け前だけれど。

「よ、夜? いま……夜にですか…? は、はい…」

 荒い息のシューは、了承してくれた。
 その時はよく見えるように魔法の灯りをつけてもらおうと考えながら無意識に陰茎を撫でさすっていたらしく、気がついた時には手の中で再び大きくなっており、シューに腰を掴まれ少し引き寄せられた。
 股間の上に跨る位置になり、陰部が勃起した陰茎に触れている。
 私は下着をつけていないので、素肌が直接触れ合っている。感触が生々しい。

 潰してしまうかと焦り、少し腰を浮かせた。

「……腰を落として、そのまま…先程のように擦ってください…」

「ん、…あ、」

 寝台に手をついて腰を動かすと、膝くらいまで長さのある夜衣の裾が邪魔で、片方の手で胸の辺りまでたくし上げた。
 とは言え、夜目は効かないので触れ合っている部分は見えない。
 先程手のひらでしていたような動きを思い出して刺激していると、再びシューが達した。

「は……っ、し、師匠…っ」
「…ん、ふ…っ…」

 私も少し、息が上がった。
 足腰が疲れてしまって…情けない。
 シューの上から退くと、また下着で腹を拭っていた。


 上半身を起こしたシューの横に寝転んだ。本当に、もっとよく表情が見えたらよかったのに。

「どうだった…?」

 いや、射精に至ったということはきっとそれなりにはよかったのだろう。

「よかったです…でも、どうして……」
「えっと…」

 特に理由などなく…

「……興味があった…から…?」
「俺の身体にですか?」
「そう…そう……なのかな……」
「わからないですか」
「興味…なんて感じたのは初めてで、うん、よくわからない…」


 その時、窓に何かが当たったような音がした。

「…っんあ~~~師匠すみません、召集です」
「しょうしゅう?」

 優しい明るさが室内を照らした。
 面白い声を出したシューが、手のひらの上に魔法で灯りをともしている。

「学院からの呼び出しです、すぐに出ます」
「よびだし? 出る? 今から?」

 膝に顔を埋めていたシューは、がばりと起き上がり寝台を降りた。

「はい、しばらく…数日で戻ります」
「え、何か準備とかする? 食べるものは? お小遣いは?」
「支度はできてます………行ってきます、師匠」
「え、あ、うん…いってらっしゃい…」

 シューは灯りと一緒に寝室を出て行った。
 しばらく薄暗い部屋で呆然としてしまっていたが、本当にすぐなら見送りをしないと。
 
 寝室から出てシューの部屋へ向かうと、既に着替えて小さな鞄と灯りを持った見慣れない格好のシューがいた。

「師匠、見送りはいいですよ」
「ううん……気をつけてね」

 魔法に照らされていてもわかる、闇に溶けて消えてしまいそうな真っ黒な装束。
 眼鏡のようなものをつけていて、目元が見えない。
 これからいったいどこへ向かうのか―――

 敷地を出て森の開けた場所でシューは小さな笛を吹いたけれど、何も聞こえなかった。
 旋毛風が吹いたと思った瞬間、彼の前に大きな翼のある青色の竜が現れた。
 思わず声を上げそうになって、何とか堪えた。竜を驚かせてしまうところだった。

「師匠、これは蒼色二号といいます。俺の相棒です」
「かっ…かっこいいね…!」
「ありがとうございます、数日で戻ります」


 シューは慣れた様子で竜に乗り、あっという間に夜明け空の向こうに消えてしまった。



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