上 下
34 / 44

34

しおりを挟む
秘密の話し合いが未だに続いている。

ハロルドは昔から国民全員を支配下に置く計画を実行したかった。代償を払う抜け道を独自で見つけたからか実行しようとしているのはすぐにわかった。

最近、宮殿に家族全員で訪れる皇帝派が多くみられつい先日レオナード家にもお呼び出しがかかった。

「陛下と出会った貴族たちはより一層忠誠心が高くなったと聞きます。きっと我々は洗脳されるでしょう。しかし過去は上書きしないはずです。いつでも構いません。我々の洗脳を解いていただきたい。そして今後かけられるであろう貴族派の当主たちもオリビア様の手で解放してほしいのです。本当に信用の出来るものを厳選し洗脳の話をしていますのでそこは御安心ください。」

「それは私しかできないことですわ。私には公爵の…いえ、皆様の力が必要なのです。必ず洗脳を解きます。」

そして話し合いは幕を閉じた。

仕事が当たり前にやってきても訪問するお客様を皇太子の妻として出迎えなければならない。本来なら皇后がする仕事も全部オリビアの仕事。疲労で倒れそうなほどの仕事の量だった。でも弱音を吐けばお人形ではなくなり何か勘づかれるかもしれない。常に気を張っているオリビアの限界が近かった。

ハロルドの命で仲睦まじい姿を国民に示せと言われエスコートされながら町をまわる。この視察で困ることはフレデリックの独占欲。最近独占欲というなの狂った愛情が故に監視が日に日に増してきた。少し町の男性と話すだけでフレデリックはその住民に怒りをぶつける。

「貴様っ!私のオリビアと話していいと本気で思っているのか?今後一切我々の前に現れるな」という様子。このやり取りを何回見ただろうか。

急に叫ぶフレデリックに驚いたものの以前なら気に食わぬことがあれば蹴り飛ばしたり牢に居れたりともっとひどいことをしていただろう。従者の間では落ち着いてきて安心するという声が出てきているそう。失礼なことをしても怒るそぶりはなく「私は子供だったのだよ。」と優しく微笑む。

オリビアが絡んでなければ優しい猫かぶりのフレデリックになる。

馬車で移動中もオリビアを膝の上にのせて髪の毛を触りながら「あぁ。オリビア…愛している…。本当にひどいことをした。私は取り返しのつかないことをしたんだ。」と勝手に懺悔され囁かれる。それでもオリビアは喜ばなければならない。

大胆に愛されていたからか皇后の座を狙っていた令嬢たちも次第に諦めていくように。皇太子の前でオリビアを傷つける及び話しかける行為は御法度になりつつあった。

場所を選ばずどこでもオリビアオリビアとうるさいフレデリックにまとわりつかれオリビアは本当に怒りや喜びの感情が消えつつあった。

「本当にお人形みたいに反応できなくなってきた…」と自分で自覚するほど無理をしているのがわかる。「いつまであの皇太子を好きなふりをしなければならないんだろう。」と悩む日々。

人間に戻るのはレオナード家の皆さんや両親と話す時だけ。

そしてレオナード家が宮殿に訪問する日になった。ボロを出してはいけないと笑いもせずただ黙々と挨拶し対応する。リアムはそんなオリビアの様子にいてもたってもいられなかった。

自分が守りたいと思った人ばかりが我慢し身を削る。失敗は許されない。その重圧はきっとオリビアばかりが背負ってしまっていると。

(目の前にいるのに何もしてあげられてない。このまま君をさらって陛下の首を取ることができれば…僕にそれほどの力があれば…)

首を狙っても洗脳された従者が陛下を守るだけ。オリビアの洗脳で陛下を無力化できれば…と作戦を立てたものの賭けに近い行動は取れなかった。今は耐える時だった。

オリビアは出迎える役目を終え、執務室に帰っていく。入れ替わりでハロルドがレオナード家の元へ訪れた瞬間にレオナード家は挨拶をし頭を下げる。

ハロルドは優しい笑顔で「待たせたようですまなかった。さぁこちらへ…」と部屋に案内する。だがその不気味な笑みが洗脳以外の何かを企んでいそうな目をしていてリアムは嫌な予感がした。

確かに今からきっと洗脳される。何も不思議なことはない。なのに何故かリアムはとてつもない不安に襲われる。

洗脳以外の何かがあるような気がする。本能的に危機を察した。

「へ…陛下っ。申し訳ありません。乗ってきた馬車に提出予定の書類を忘れてしまいました。」と何故か考えるより前に言葉に出してしまっていたリアム。

ソフィアやレオナード公爵は「何を言っているんだ」という表情で訴えるも陛下は取りに行く許可をだす。リアムは「本当に申し訳ございません。僕が歩き回るのは心配でしょうしこの護衛を借りてもよろしいでしょうか?」と一人の護衛をつれてリアムは馬車に戻った。

何かあった時の為にリアムは馬車に本当に書類を忘れていたがリアムはあることを見逃さなかった。



※完結してから投稿しようと思って保留しておきましたが時間がかかるため不定期で更新していきます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜をボイコットされたお飾り妻は離婚後に正統派王子に溺愛される

きのと
恋愛
「お前を抱く気がしないだけだ」――初夜、新妻のアビゲイルにそう言い放ち、愛人のもとに出かけた夫ローマン。 それが虚しい結婚生活の始まりだった。借金返済のための政略結婚とはいえ、仲の良い夫婦になりたいと願っていたアビゲイルの思いは打ち砕かれる。 しかし、日々の孤独を紛らわすために再開したアクセサリー作りでジュエリーデザイナーとしての才能を開花させることに。粗暴な夫との離婚、そして第二王子エリオットと運命の出会いをするが……?

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...