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一連の説明を受け皆何も発言せずに静かに考えた。その中でリアムは聞く。

「制限はどういうものなのですか…。」

「それは能力を使えば書き換えた分だけの時間、能力を使用した者の寿命が縮まるのだ。そして瞳を直接見ない限り洗脳はかけれないという制限。」

今までは声自体に洗脳の能力があったが実際に水晶瞳の瞳を見なければ洗脳がかからない条件を作った。今後能力を悪用させないために自らにかけた呪い。強い意志の元、かけられた呪いのような制限は水晶瞳で制限を無くそうとしても決して消えない枷。能力自体を消したいとも考えたらしいが能力を失ってしまうと実りの雫の儀式が行えなくなるため制限をかけることにしたという。

その起きた出来事を繰り返されないために能力を知るものは陛下と皇位を継ぐ皇太子、そしてレオナード公爵と長男のゲルマ・レオナードの4人しか知らない能力だった。ほか2つの公爵家は昔の出来事を把握しているものの能力の詳細までは伝えられていない。

能力を授けるのは皇帝陛下のタイミングによるが成人してからが多い傾向がある。自身の能力を把握するにはある程度精神が成長していないと受け入れられないからだ。能力を受け継ぐ際に起こった事件の説明をして皇太子に能力を与える。能力を悪用しないために自身の寿命が減ることもしっかり説明され後継の儀は終了する。

この儀式に関しては皇帝と皇太子の重要機密の為、レオナード公爵も詳しくは知らない。だが現皇帝のハロルドが何らかの方法で能力を横取りし今の地位にいることは確かだった。その際何か説明を受けているはずもなくハロルドは能力の代償を知らぬまま洗脳を繰り返していたのだろう。

リアムたちが疑問だった点はオリビアは洗脳を受けていてフレデリックが洗脳されていなかったこと。仮にフレデリックが洗脳されているとすれば離縁宣言なんて公に発表なんかしない。離縁宣言はハロルドにとって予想外でありそれは洗脳していなかった事実とつながる。

その違和感を説明するようにレオナード公爵は続けた。

「急に陛下がお老けになったことがあったんだ。周りには疲れが出たとだけ説明していたが明らかにお老けになった。私は代償の事を知っていたからすぐに能力の代償だと思ったよ。おそらくだが皇女様を洗脳した代償。私はそう考えています。確か今から五年ほど前にだったはずです。皇女様…何か心当たりがありますでしょうか?」

「はい…。私が記憶を書き換えられたのはおそらく13歳の時です。私は今18になるので辻褄があいます。」

「やはりそうだったか…。皇女様…水晶瞳ということを私が信じる理由は今話した内容の通りです。書き換えられた記憶の量が寿命と代償になる。皇女様が皇太子殿下の事を考えている時だけの時間と考えたらいいでしょう。10年分とはいきませんが明らかな老けは陛下も焦ったのでしょう。その時に初めて代償の事をお調べになり老けの理由を知ったんだと思います。でないと皇太子殿下が行動起こすわけがありません。皇帝陛下は詳しい条件までを把握できていない様子。老けを恐れて能力が使えていないのが救いでしょう。」

しかし代償には欠点があった。過去を変えようとすれば代償が必要だが未来、例えばオリビアの瞳の色や皇太子の瞳の色が現在進行形でそう見えるようにしているだけなので代償は発生しないのだ。

「もし洗脳の内容が"今時点から皇帝は命を捧げるほどの尊き存在"と言えば簡単に洗脳できてしまう。しかし皇女様のようにかけられた洗脳を解くのも代償がいりません。洗脳が解けたと知られたら代償を払ってでもまた洗脳しようとするはず。皇女様の能力で我々の洗脳は解けますが皇女様が洗脳されれば私たちは何とかして洗脳を解けるように思い出を話すなどして記憶の蓋をこじ開けなければいけません。」

「レオナード家が貴族派…。皇帝陛下と真逆の立場になったのは今申し上げたのが経緯となります。確かに民を優先しない政治には不満がありましたし何とかしてあげたいと思うのは本心でした。ですが根本的な理由は公爵家に与えられた命令を全うするため。他の皇族派の者たちも同じ考えを持っていたり、ある貴族は国の異変に気が付き我々と共に戦ってくれると言ってくれた。して皇女様今日は上手く護衛をまいてきましたか?能力を使ってしまうのは仕方がないことですが内容によっては寿命が縮んでしまうこともあります。今後は気をつけて頂きたい。」

「あ、あの…実は…」

オリビアはどうやって抜け出そうか考えた時にレオナード家に言われた外出許可は絶対におりないと思った。本当に外出する理由が思い浮かばないし何か起こすと思われ密かに護衛という名の見張りをかけられる可能性が高い。目を見て直接洗脳しなければいけない能力は隠れている者たちまで洗脳できないと考えた。外出許可自体をもらわずにこっそり抜け出す方法の方が上手くいく確率は高いと判断し洗脳を繰り返して公爵家にたどり着いたという。
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