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ハロルド・オルダーマイン。オルダー帝国の三男として生まれ皇子として育てられた。性別関係なく皇族の血筋で産まれたものは皆水晶瞳をもって生まれるが、血を分けた兄弟たちが皇族から抜けた場合産まれた子どもの瞳が水晶瞳になることはない。そんな不思議な瞳。

ハロルドは人より欲深く、生まれた順で皇太子が決定する制度に不満を抱いていた。戦争が絶えなかった当時は皇太子が指揮を取り前線で活躍していたがあっけない戦死。そのあとを追うように当時の陛下は病に倒れ意思疎通が難しい状態に…。一部しか知らない陛下の状況は末期の病として帝都中に噂として流れはじめ陛下の命も短いのではと混乱が起こった。慌てるよう次の皇太子は誰だとせかされる中、次男が不自然な死を遂げたという。意思疎通ができなくなった陛下の代わりに周りが皇太子として認めたのは三男のハロルドだった。

食事もままならず昏睡状態が続いた陛下はそのまま息を引き取りハロルドは皇帝へ。元は長男の婚約者だった隣国の王女を娶り、子を産ませた。王女は長男の事を愛しており酷く結婚に反対したそうだが国の繁栄のため子どもだけ産めば後は自由にしていいと言われ愛する人の弟と一緒になった。すべては国の為に…と王女は自分の心を殺したという。

そして国民に愛されていた優しい四男。皇帝派の人たちと結託し反乱を起こすという噂が流れハロルドは恐れた。ハロルドは四男にまだ終結していない戦争へと向かわせ戦死させようとしたが失敗。不利だったはずの戦争を終わらせたという報告が入り英雄として騒がれるのは目に見えており予想外の展開へと発展。もしかしたら皇帝の座を取られるのではないかと怯えハロルドは自ら戦場に赴き四男にとどめを刺すため剣を抜いた。

戦争帰りの兵士たちは実にやりやすかっただろう。負けたのは四男だった。

「兄様…こんなことを繰り返していれば…きっと自分に返ってくることでしょう…」

「俺は皇帝だ。この国の王だ!血を分けた兄弟など要らぬ。おとなしくしてればよかったものの…。さらばだ…。」

「こんなけがれた皇…族なら…ほろんだ方が…この国のため…だな…」

四男は最後の力を振り絞り重たい剣をハロルドを刺した。殺すまでの力は残っていなかったが剣は貫いた。ハロルドの下半身を。ハロルドは痛みにもがきその場に倒れこむ。四男はハロルドにとどめを刺されずに息絶えた。

ハロルドは緊急で宮廷に帰還したのち手術を受けるも子が産めない体に。望みは皇后の子供だけだった。

「男だ!男児を産めっ!じゃないとこの国は終わる!!くそっどうしてこんなことに!」

毎日訪ねては皇后に罵倒のようなキツイ言葉を浴びせ皇后を精神的に追い詰めていく。

「そして無事に産まれたのはオリビア…お前なんだ…。妃殿下は隣国の王女だからか珍しい銀髪だったと聞く。オリビアのその髪は妃殿下に似たんだな。今までだましていてすまなかった。」

「ちょっと待ってください。オリビア様が本当に皇族の血筋というならば皇太子殿下は誰の子なのですか…あの目は一体…まさかっ…」

「気が付きましたか…?私も金髪という事に…。そうです。フレデリック皇太子殿下は私たちの息子でした…」

「子供を入れ替えたという事ですか?!」

「なるほど…だから皇帝陛下はオリビア様との結婚を強く決定付けた。違う方との子を産めば皇族の血筋じゃないとばれるが結婚相手が本当の皇族なら誤魔化せられる。妃殿下を愛しているから側妃を向かえないと言っていたのにはそんな理由があったのですね…。妃殿下も殺されたのですか…?」

「キツイ言葉で精神的に追い詰めてられていたのにも関わらず産んだ子供が女の子でしたからね。相当辛い目にあわれていたと伺いました。出産の疲れもあってかそのまま亡くなってしまうほどに…。」

「そんなひどいことを…」

ウォールデン男爵家当主ハーマン・ウォールデンは続きを話し出す。

ハロルドは考えた。子が産めない体になり子供も娘一人。血を残せたのは幸いだがこれだと国民に示しがつかない。どうすればと打開策を考える日々。貴族派や上流階級の人間にこの話が回れば子が産めない体に…と笑われるだろう。皇族の乗っ取りもあり得る状況だった。ハロルドはとにかく情報をかき集める。そして考え続けた答えが子どもの入れ替わり。

何処からか男子を迎え生まれた娘と結婚させれば名誉に傷が入らないと考えた。しかし皇太子と結婚させるにはどこかの貴族の子供という事にしなければ皇族と結婚はできない。迎える男子を孤児院や施設などから貰うことも考えたが物心がついていない赤ん坊など居るはずもなくなにより平民ごときが皇族として育つことが許せなかった。

毎日のように何かいい案はないかと子供の情報を見ていたが急に届いた貴族の出生記録が目に入る。その出生記録こそがウォールデン男爵家の息子フレデリックの誕生だった。

男爵家という底辺でも貴族は貴族。この息子とオリビアを入れかえ神託だと言えば結婚させられる。なにより男爵家という家は力が弱すぎて思い通りに操れると考えたのだ。

ハロルドは子供の誕生を祝いたいという名目でウォールデン夫妻を呼び出し子供を取り上げたという。
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