3 / 5
3
しおりを挟む
扉を開けて部屋に入るとそこには胸元が大きく開いた真っ赤なドレスを着たきれいな紫色の少女がいた。
もしや…と期待を膨らませ面会を始める。しかし聞けば聞くほど噂のような生活を送っているらしく服の自慢やかかった費用などの話ばかり。女神様かもしれないと期待を抱いた自分が愚かだったと1時間もかからない面会は終わりを迎えた。
どのような女性でもエスコートをするのが皇太子のモットーだった。エスコートをするために差し出した手。それにこたえるようにおろしていた髪を耳にかけ手をそえる。立ち上がった彼女の方に目を向けると見覚えのあるピアスが目に入った。
「女神様…。」フィズケルは無意識にその言葉が口から出てしまった。
もしかしたら片方の耳にも同じものがついているのかもしれない。ただ似ているだけかもしれない。だが、紫色の髪に紫色の瞳。共通点が多すぎてただの偶然とは割り切れなかった。
女神様と言われ困惑しながら固まるにフィズケル「どうしました…?」と声をかける。
「ヴァイオレッタ公爵令嬢…正直に答えてください。貴方は本当に噂されるような人なのですか…?」
「噂がどういうものかは知りませんけど間違ってはいないのでは?」
「聞き方を変えます。貴方のお金の使い道は本当に私欲に使ったのですか?もし嘘と発覚した場合それ相応の対応を…よく考えて答えてください。」
「なっ…。職権乱用ですってば…。知ってたんですか?その聞き方はもう把握されているようですけど…」
「そうだね。今君の正体に気が付いたというのが正しい。そのピアスが目に入ったから…」
「ピアス…?」
フィズケルはいつ会えてもいいように持ち歩いていたピアスをポケットの中から取り出す。
「無くしたと思っていたんです。あの時私に声をかけたのは殿下だったんですね。母の形見なんです。ずっと前の事ですのに長い間大切に預かっててくれてありがとうございます。」
「ヴァイオレッタ公爵令嬢。まだ時間は大丈夫かい?僕は悪名高いヴァイオレッタ公爵令嬢ではなく国民から女神様と呼ばれる貴方と話がしたい。」
「わかりましたから///女神様はやめて…ください…///まさかそう呼ばれていたとは…初耳でした。」
女神様と美形の殿下に真剣に言われ照れずにはいられない。
「では単刀直入に聞く。君はなぜ悪女と呼ばれその噂に当てはまる服装できたんだい?君はだいぶ食料を分けてくれているみたいだけど自分のお金がないのでは?」
ヴァイオレッタ公爵令嬢は説明した。貧民街に通い食料を与えていると公爵に知られ恥だとお金をもらえなくなった彼女は庶子だとしても公爵令嬢。伝手を頼りに起業し今では経営をも手掛けていること。そしてこの破廉恥な服装は噂通りだと周りに誤解させるため。
「どうしてその噂を訂正しないんだい?」
元々その噂は庶子のくせに顔が整っていると姉たちにいじめられお金をもらえなくなったあたりで話が飛躍しその中で仕事柄男性と仕事について話す機会がありその現場をおそらく見られ今現在の噂になったという。そしてお金に困っている様子のないヴァイオレッタは「その男にお金をもらっているのだわ」と姉たちに言われていた。
「その方が都合が良いのです。パーティーなどに行けば私は男性たちに勘違いされ良からぬ提案をされたこともありました。しかし行かない選択をしても噂は1人歩きをし、私の都合のいいように勝手に解釈される。そして今日この格好できたのは変に目立たないため。普段着ている服で来たら殿下は疑問を抱くのでしょう。しかし噂のような雰囲気でこればこの程度の女性だと早めに判断され早めに帰れると考えました。」
そのヴァイオレッタの企みは成功していた。何が問題かを聞かれたらピアスを付けてきたからだと答えるしかない。しかしそれは母の形見であり外す選択肢がないことから気づかれるのは必然だったといえる。
もしや…と期待を膨らませ面会を始める。しかし聞けば聞くほど噂のような生活を送っているらしく服の自慢やかかった費用などの話ばかり。女神様かもしれないと期待を抱いた自分が愚かだったと1時間もかからない面会は終わりを迎えた。
どのような女性でもエスコートをするのが皇太子のモットーだった。エスコートをするために差し出した手。それにこたえるようにおろしていた髪を耳にかけ手をそえる。立ち上がった彼女の方に目を向けると見覚えのあるピアスが目に入った。
「女神様…。」フィズケルは無意識にその言葉が口から出てしまった。
もしかしたら片方の耳にも同じものがついているのかもしれない。ただ似ているだけかもしれない。だが、紫色の髪に紫色の瞳。共通点が多すぎてただの偶然とは割り切れなかった。
女神様と言われ困惑しながら固まるにフィズケル「どうしました…?」と声をかける。
「ヴァイオレッタ公爵令嬢…正直に答えてください。貴方は本当に噂されるような人なのですか…?」
「噂がどういうものかは知りませんけど間違ってはいないのでは?」
「聞き方を変えます。貴方のお金の使い道は本当に私欲に使ったのですか?もし嘘と発覚した場合それ相応の対応を…よく考えて答えてください。」
「なっ…。職権乱用ですってば…。知ってたんですか?その聞き方はもう把握されているようですけど…」
「そうだね。今君の正体に気が付いたというのが正しい。そのピアスが目に入ったから…」
「ピアス…?」
フィズケルはいつ会えてもいいように持ち歩いていたピアスをポケットの中から取り出す。
「無くしたと思っていたんです。あの時私に声をかけたのは殿下だったんですね。母の形見なんです。ずっと前の事ですのに長い間大切に預かっててくれてありがとうございます。」
「ヴァイオレッタ公爵令嬢。まだ時間は大丈夫かい?僕は悪名高いヴァイオレッタ公爵令嬢ではなく国民から女神様と呼ばれる貴方と話がしたい。」
「わかりましたから///女神様はやめて…ください…///まさかそう呼ばれていたとは…初耳でした。」
女神様と美形の殿下に真剣に言われ照れずにはいられない。
「では単刀直入に聞く。君はなぜ悪女と呼ばれその噂に当てはまる服装できたんだい?君はだいぶ食料を分けてくれているみたいだけど自分のお金がないのでは?」
ヴァイオレッタ公爵令嬢は説明した。貧民街に通い食料を与えていると公爵に知られ恥だとお金をもらえなくなった彼女は庶子だとしても公爵令嬢。伝手を頼りに起業し今では経営をも手掛けていること。そしてこの破廉恥な服装は噂通りだと周りに誤解させるため。
「どうしてその噂を訂正しないんだい?」
元々その噂は庶子のくせに顔が整っていると姉たちにいじめられお金をもらえなくなったあたりで話が飛躍しその中で仕事柄男性と仕事について話す機会がありその現場をおそらく見られ今現在の噂になったという。そしてお金に困っている様子のないヴァイオレッタは「その男にお金をもらっているのだわ」と姉たちに言われていた。
「その方が都合が良いのです。パーティーなどに行けば私は男性たちに勘違いされ良からぬ提案をされたこともありました。しかし行かない選択をしても噂は1人歩きをし、私の都合のいいように勝手に解釈される。そして今日この格好できたのは変に目立たないため。普段着ている服で来たら殿下は疑問を抱くのでしょう。しかし噂のような雰囲気でこればこの程度の女性だと早めに判断され早めに帰れると考えました。」
そのヴァイオレッタの企みは成功していた。何が問題かを聞かれたらピアスを付けてきたからだと答えるしかない。しかしそれは母の形見であり外す選択肢がないことから気づかれるのは必然だったといえる。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
【完結】幻姫と皇太子は身分を隠しお互いに惹かれ合う【全6話】
なつ
恋愛
幻姫。そう呼ばれているのは公爵家の娘カレン。幻と言われているのはただ単に社交界に顔を出さないと理由でそう呼ばれだした。
当の本人は「あんな愛想笑いの場の何が楽しいんだ」と自分のしたいことをして生きている。
襲われているカレンをたまたま皇太子が目撃し、助けようとするも自分の力で相手を倒す姿に惚れたのであった。
そう姫ではなくカレンは女帝に近いかっこいい女性。
男気が強いカレンと完全に心を奪われた皇太子との恋愛の話。
夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
【完結】婚約破棄からの絆
岡崎 剛柔
恋愛
アデリーナ=ヴァレンティーナ公爵令嬢は、王太子アルベールとの婚約者だった。
しかし、彼女には王太子の傍にはいつも可愛がる従妹のリリアがいた。
アデリーナは王太子との絆を深める一方で、従妹リリアとも強い絆を築いていた。
ある日、アデリーナは王太子から呼び出され、彼から婚約破棄を告げられる。
彼の隣にはリリアがおり、次の婚約者はリリアになると言われる。
驚きと絶望に包まれながらも、アデリーナは微笑みを絶やさずに二人の幸せを願い、従者とともに部屋を後にする。
しかし、アデリーナは勘当されるのではないか、他の貴族の後妻にされるのではないかと不安に駆られる。
婚約破棄の話は進まず、代わりに王太子から再び呼び出される。
彼との再会で、アデリーナは彼の真意を知る。
アデリーナの心は揺れ動く中、リリアが彼女を支える存在として姿を現す。
彼女の勇気と言葉に励まされ、アデリーナは再び自らの意志を取り戻し、立ち上がる覚悟を固める。
そして――。
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
性悪な友人に嘘を吹き込まれ、イケメン婚約者と婚約破棄することになりました。
ほったげな
恋愛
私は伯爵令息のマクシムと婚約した。しかし、性悪な友人のユリアが婚約者に私にいじめられたという嘘を言い、婚約破棄に……。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる