20 / 34
第2章 過労死した俺、リリアが顔を隠してる理由に迫る。
第20話
しおりを挟む
悠斗とリリーナは、色褪せた地図の指し示す方向へと足を進めた。森の奥深くへ向かうほどに、空気は冷たく重くなり、不気味な静寂が二人を包み込む。木々が不自然にうねり、日差しすら届かないその場所は、まさに「闇の回廊」という名にふさわしい異様な雰囲気を漂わせていた。
「ここが、闇の回廊ってことなの……」
リリーナが震える声で呟いた。視線の先には、古い石の門が見え、その先へと続く暗い道が口を開けている。門の先には、洋館が立っている。その様相はとても不気味なもので、悠斗が元いた世界であったら明らかに心霊スポットになっているだろう。二人が門に近づくと、無数の刻印が石に掘り込まれていることに気づいた。
「なんの刻印だろう……?」
悠斗は呟きながら、慎重に門の内側へと足を踏み入れた。重苦しい雰囲気に飲まれそうになるのを振り払い、悠斗とリリーナは奥へ進む決意を固めた。
「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……」
二人は互いに頷き合い、館の中へと進もうとした瞬間、道の奥から微かに光が見えた。誘われるように進んでいく。石造りの道の中央には古い祭壇のようなものが置かれており、その上に黒い布に包まれたものが置かれていた。
「なんだこれ。祭壇?」
「なんかすごく物騒な感じだね……」
二人は祭壇を見てそれぞれ感想を述べていると背後に何かの気配を感じて振り返った。
「誰かいるのか……?」
悠斗の呼びかけに応えるように、広間の暗がりから先ほどの仮面の影使いが姿を現した。相変わらず冷ややかな雰囲気を纏い、仮面の向こうから鋭い視線を悠斗たちに注いでいる。
「待っていた」
「お前、さっきの……!お前は、リリアさんを狙ってるあの男と同じ一族なのか?」
悠斗の問いかけに、仮面の影使いはゆっくりと頷いた。
「影の一族とは、その名前の通り生まれ持った『影の力』を操る者たちだ。例外を除いて全員家族というわけだ。なぜだか、影の力はその一族からしか発生しないものだとされていた。そして一族はリリアを裏切り者と呼び抹殺することを企んでいる」
悠斗は息を呑んだ。リリアが「影の一族」に関わる存在であることは理解できたが、なぜ彼女が裏切り者と呼ばれるのか、そこまではわからなかった。
「裏切り者、か……。彼女が一族を裏切った理由はなんだ?」
悠斗が問いかけると、仮面の男は一瞬、言葉を探すように沈黙した。しかし、やがて静かな声で語り始めた。
「彼女はもともと、一族の人間ではない。しかし、リリアは影の力を持っていた。ちょうど君と同じようにね」
仮面の男は、悠斗を指差しながら言葉を続ける。
「なので、僕たち一族は彼女を仲間に引き入れた。しかしリリアは我々の掟に逆らった。ゆえに……一族から追放され、裏切り者になったんだ」
「掟に逆らった……?」
悠斗が眉をひそめると、仮面の男は口元をわずかに歪め、静かに頷いた。
「そうだ。影の一族は代々、ファルディアの地下社会に根を張り、ファルディアの表も裏も支配してきた。その掟のもとに、影の力を悪用し、さまざまな工作活動を行ってきたんだ。だが、リリアはそれに反発した。おそらく彼女は……」
仮面の男は一瞬言葉を区切り、視線を彷徨わせた後、鋭い口調で続けた。
「彼女は、その力を不正や悪事に使いたくなかった。だが、影の一族にとって掟とは絶対。どんな犠牲を払っても、命令に従わぬ者は処罰される。そして、彼女は影の使い手たちから追われる身となった」
悠斗は驚きと共にリリアの覚悟を思い返し、彼女がこの過酷な状況で影の一族と対峙する決断をしていたことに胸を打たれた。
「じゃあ、あの男を筆頭に影の一族はその掟を守ろうとして、リリアさんを追ってるってことか……だけどあんたはなんでこんなこと教えてくれるんだ?あんたも影の一族じゃないのか?」
悠斗が疑問をぶつけると、仮面の男は一瞬沈黙し、目の奥で冷たい光が揺らめいた。
「僕の名はイザーク。影の一族に潜入している、王国の密偵だ」
リリーナが息を呑んで男を見つめ、慎重に尋ねた。
「潜入している……つまり、影の一族を追い詰めるために?」
「その通り。王国にとって、影の一族の存在は長年の懸念事項だった。奴らが王国の秩序を崩し、政治に悪影響を与えてきたことは言うまでもない。王国は影の一族を壊滅させるため、僕を送り込んだ。僕は一族ではないが影の力を使える例外だ。だから奴らに溶け込みチャンスを伺っていた。そんな時、同じく一族ではないのに影の力が使えるリリアが現れた」
イザークは淡々とした口調で語ったが、そこにはどこか厳しい決意の色が滲んでいた。
「リリアは、一族の悪事が許せなかった。彼女が掟を破ったのは、その良心からだ。だが、影の一族にそんなものは通じない。彼女は掟を破ったことにより、殺される運命となった」
「なら、あんたはリリアさんを助けるためにここに来たのか?」
悠斗が鋭い目で問い詰めると、イザークはわずかに表情を緩めた。
「そうだ。だが、僕はあくまで王国の命に従って動いている」
仮面の奥から、イザークの冷徹な視線が射抜くように悠斗を見据えた。
リリーナは不安げにイザークを見つめた。
「リリアちゃんが抱えているものが、そんなに重いなんて……」
「影の力を得ている以上、その力の使い道を選ばなければならない」
悠斗はイザークの言葉を聞きながら、静かに決意を固めていった。
「俺はリリアさんがどんな選択をしようとも、助ける。影の一族だろうがなんだろうが、倒してやる」
イザークはその決意を見つめ、仮面の奥で薄く微笑んだように見えた。
「ならば、お前も僕とともにこの道を進もう。リリアを助ける」
今まで冷静な口調だったイザークだが、その言葉には熱がこもっていた。
「ここが、闇の回廊ってことなの……」
リリーナが震える声で呟いた。視線の先には、古い石の門が見え、その先へと続く暗い道が口を開けている。門の先には、洋館が立っている。その様相はとても不気味なもので、悠斗が元いた世界であったら明らかに心霊スポットになっているだろう。二人が門に近づくと、無数の刻印が石に掘り込まれていることに気づいた。
「なんの刻印だろう……?」
悠斗は呟きながら、慎重に門の内側へと足を踏み入れた。重苦しい雰囲気に飲まれそうになるのを振り払い、悠斗とリリーナは奥へ進む決意を固めた。
「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……」
二人は互いに頷き合い、館の中へと進もうとした瞬間、道の奥から微かに光が見えた。誘われるように進んでいく。石造りの道の中央には古い祭壇のようなものが置かれており、その上に黒い布に包まれたものが置かれていた。
「なんだこれ。祭壇?」
「なんかすごく物騒な感じだね……」
二人は祭壇を見てそれぞれ感想を述べていると背後に何かの気配を感じて振り返った。
「誰かいるのか……?」
悠斗の呼びかけに応えるように、広間の暗がりから先ほどの仮面の影使いが姿を現した。相変わらず冷ややかな雰囲気を纏い、仮面の向こうから鋭い視線を悠斗たちに注いでいる。
「待っていた」
「お前、さっきの……!お前は、リリアさんを狙ってるあの男と同じ一族なのか?」
悠斗の問いかけに、仮面の影使いはゆっくりと頷いた。
「影の一族とは、その名前の通り生まれ持った『影の力』を操る者たちだ。例外を除いて全員家族というわけだ。なぜだか、影の力はその一族からしか発生しないものだとされていた。そして一族はリリアを裏切り者と呼び抹殺することを企んでいる」
悠斗は息を呑んだ。リリアが「影の一族」に関わる存在であることは理解できたが、なぜ彼女が裏切り者と呼ばれるのか、そこまではわからなかった。
「裏切り者、か……。彼女が一族を裏切った理由はなんだ?」
悠斗が問いかけると、仮面の男は一瞬、言葉を探すように沈黙した。しかし、やがて静かな声で語り始めた。
「彼女はもともと、一族の人間ではない。しかし、リリアは影の力を持っていた。ちょうど君と同じようにね」
仮面の男は、悠斗を指差しながら言葉を続ける。
「なので、僕たち一族は彼女を仲間に引き入れた。しかしリリアは我々の掟に逆らった。ゆえに……一族から追放され、裏切り者になったんだ」
「掟に逆らった……?」
悠斗が眉をひそめると、仮面の男は口元をわずかに歪め、静かに頷いた。
「そうだ。影の一族は代々、ファルディアの地下社会に根を張り、ファルディアの表も裏も支配してきた。その掟のもとに、影の力を悪用し、さまざまな工作活動を行ってきたんだ。だが、リリアはそれに反発した。おそらく彼女は……」
仮面の男は一瞬言葉を区切り、視線を彷徨わせた後、鋭い口調で続けた。
「彼女は、その力を不正や悪事に使いたくなかった。だが、影の一族にとって掟とは絶対。どんな犠牲を払っても、命令に従わぬ者は処罰される。そして、彼女は影の使い手たちから追われる身となった」
悠斗は驚きと共にリリアの覚悟を思い返し、彼女がこの過酷な状況で影の一族と対峙する決断をしていたことに胸を打たれた。
「じゃあ、あの男を筆頭に影の一族はその掟を守ろうとして、リリアさんを追ってるってことか……だけどあんたはなんでこんなこと教えてくれるんだ?あんたも影の一族じゃないのか?」
悠斗が疑問をぶつけると、仮面の男は一瞬沈黙し、目の奥で冷たい光が揺らめいた。
「僕の名はイザーク。影の一族に潜入している、王国の密偵だ」
リリーナが息を呑んで男を見つめ、慎重に尋ねた。
「潜入している……つまり、影の一族を追い詰めるために?」
「その通り。王国にとって、影の一族の存在は長年の懸念事項だった。奴らが王国の秩序を崩し、政治に悪影響を与えてきたことは言うまでもない。王国は影の一族を壊滅させるため、僕を送り込んだ。僕は一族ではないが影の力を使える例外だ。だから奴らに溶け込みチャンスを伺っていた。そんな時、同じく一族ではないのに影の力が使えるリリアが現れた」
イザークは淡々とした口調で語ったが、そこにはどこか厳しい決意の色が滲んでいた。
「リリアは、一族の悪事が許せなかった。彼女が掟を破ったのは、その良心からだ。だが、影の一族にそんなものは通じない。彼女は掟を破ったことにより、殺される運命となった」
「なら、あんたはリリアさんを助けるためにここに来たのか?」
悠斗が鋭い目で問い詰めると、イザークはわずかに表情を緩めた。
「そうだ。だが、僕はあくまで王国の命に従って動いている」
仮面の奥から、イザークの冷徹な視線が射抜くように悠斗を見据えた。
リリーナは不安げにイザークを見つめた。
「リリアちゃんが抱えているものが、そんなに重いなんて……」
「影の力を得ている以上、その力の使い道を選ばなければならない」
悠斗はイザークの言葉を聞きながら、静かに決意を固めていった。
「俺はリリアさんがどんな選択をしようとも、助ける。影の一族だろうがなんだろうが、倒してやる」
イザークはその決意を見つめ、仮面の奥で薄く微笑んだように見えた。
「ならば、お前も僕とともにこの道を進もう。リリアを助ける」
今まで冷静な口調だったイザークだが、その言葉には熱がこもっていた。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
私のスローライフはどこに消えた?? 神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!
魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。
なんか旅のお供が増え・・・。
一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。
どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。
R県R市のR大学病院の個室
ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。
ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声
私:[苦しい・・・息が出来ない・・・]
息子A「おふくろ頑張れ・・・」
息子B「おばあちゃん・・・」
息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」
孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」
ピーーーーー
医師「午後14時23分ご臨終です。」
私:[これでやっと楽になれる・・・。]
私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!!
なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、
なぜか攫われて・・・
色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり
事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!!
R15は保険です。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる