失われた王国の王女と絶対忠誠騎士、運命に導かれる2人

疾風

文字の大きさ
上 下
23 / 30

第23話 真実

しおりを挟む
 リアナとエリオットが祭壇を背にして広間を見渡すと、次第に周囲の空間が変化し始めた。壁の紋章や絵画が青白い光に包まれ、まるで時の流れが逆戻りするかのように鮮やかな色彩を取り戻していく。そして、彼らの前にはかつてのエルドラシアの王城が幻影のように現れ、輝かしい時代の記憶が広間を満たしていった。

 リアナは目を見開き、目の前で繰り広げられる光景に圧倒された。かつての王族たちが賑わう大広間、優雅な舞踏会が開かれ、笑い声が響き渡る。彼女はその中に、若き日のソレーネの姿を見つけた。ソレーネは王族たちに囲まれながらも、どこか一人で孤独な影を背負っているように見えた。

「ソレーネ……あなたもこんな世界を守りたかったのね」

 リアナが呟くと、彼女の前にソレーネの幻影が現れた。ソレーネはかつての姿のまま、柔らかい微笑みを浮かべてリアナを見つめる。

「リアナ、あなたには私以上の力がある……だからこそ、未来を繋いでほしいの」

 その言葉と共に、幻影はふわりと消え去り、広間は再び静寂に包まれた。しかし、祭壇に刻まれた古代文字は、なおも青白く輝き続けている。

 エリオットは眉をひそめながら、古代文字を読み取ろうと試みる。彼の指が文字をなぞると、突然、地面が震え、祭壇の下に隠されていた隠し扉が開いた。

「隠し扉……? まだ何かが隠されているのか?」

 リアナとエリオットは顔を見合わせ、息を整える。そして、ゆっくりとその扉の中に足を踏み入れた。中には長い階段が続いており、その先には冷たい風が流れ込んでいた。

「エリオット、気をつけて進もう。この先に何が待っているのか分からないわ」

「そうだな、俺たちの準備はできている。進むぞ」

 彼らは慎重に階段を降りていくと、やがて地下の広大な空間にたどり着いた。そこには古代の装置が並び、中央には巨大な水晶球が鎮座している。その水晶球には、闇の中で微かに脈動する光が宿っており、まるで生きているかのように見えた。

「これは……何?」

 リアナが水晶球に近づくと、突然、球体の中から低く唸る声が響き渡った。その声はリアナの心に直接響き、まるで何者かが彼女を試しているかのようだった。

「リアナ、気をつけろ! この水晶球、絶対に何かある……。危険かもしれない!」

 エリオットが剣を構えたその瞬間、水晶球の中から黒い影が噴き出し、彼らを取り囲んだ。リアナは胸に広がる不安と戦いながら、再び金色の光を手に集めた。

「この闇を……押し返してみせる!」

 彼女は手を掲げ、全身の力を解放する。金色の光が闇を裂き、水晶球を覆うように包み込んだ。その光が水晶球の中に入り込むと、闇の声が次第にかき消され、広間には清浄な静けさが戻ってきた。

 水晶球が穏やかな光を放つと、その中から新たな映像が浮かび上がった。映し出されたのは、エルドラシアを裏切り、王国を滅ぼす過程だった。映像の中心は王宮の顧問のという役職を名乗る男である。
 しかし、この男はリアナが想像する人物とは違っていた。

「この間、私を襲ってきた、側近と違う。この人は誰なの?」

 リアナは目を見張り、エリオットも息を呑む。映像の中の顧問は、禁忌の魔術を手にしてエルドラシアの王国を陰で操り、ついには王家を滅ぼす計画を実行していた。そして、その目的が「闇の力を完全に支配すること」にあったことが明らかになる。

「ソレーネが闇と戦い続けていたのも、彼が原因だったんだ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろうでも公開しています。 2025年1月18日、内容を一部修正しました。

【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。 十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。 そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり────── ※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。 ※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...