あなたにおすすめの小説

【ショートショート】乱暴
遠藤良二
現代文学
俺はある女を付け回している。その女の名前は知らない。でも、顔とスタイルは気に入っている。だから、いずれ俺の女にしようと企んでいる。
今日もその女は夕方十七時半頃このマンションに帰宅するため歩いているところを見付けた。この女は俺の存在に気付いていないだろう。
今日は雨模様で周りに人影はいない。声をかけるチャンスだ。俺は木陰から出て来て傘をさしている女に、
「ちょっと、すみません。傘を持ってないんで入れてくれませんか?」
「あ、すみません。急いでいるもので」
そこで俺は女の右の頬を張った。
「キャッ!」
と声を上げた。それからお腹を殴った。すると、
「うう……」
とその場にうずくまりしゃがみ込んだ。
事前に用意しておいたハンカチに睡眠剤を含ませておいて女の口と鼻を塞ぎ即効性のある薬剤だからその場に倒れ込んだ。俺は女を背負い、俺の家に運んだ。そして、女を触りたいだけ触った。
十一人目の同窓生
羽柴吉高
ホラー
20年ぶりに届いた同窓会の招待状。それは、がんの手術を終えた板橋史良の「みんなに会いたい」という願いから始まった。しかし、当日彼は現れなかった。
その後、私は奇妙な夢を見る。板橋の葬儀、泣き崩れる奥さん、誰もいないはずの同級生の席。
——そして、夢は現実となる。
3年後、再び開かれた同窓会。私は板橋の墓参りを済ませ、会場へ向かった。だが、店の店員は言った。
「お客さん、今二人で入ってきましたよ?」
10人のはずの同窓生。しかし、そこにはもうひとつの席があった……。
夢と現実が交錯し、静かに忍び寄る違和感。
目に見えない何かが、確かにそこにいた。

「友達以上、恋人未満」
小川敦人
エッセイ・ノンフィクション
スマホの画面には、昨秋の京都旅行の写真。友達には近すぎ、恋人には遠すぎる二人の距離。誕生日に贈られた架空の旅行パンフレット、紅葉の名所巡り。触れそうで触れない関係は、心地よく続いていく。
花風の向こう
河原 伊織
現代文学
【不定期更新】
長年勤めた会社から、唐突に首を切られた。
絶望に暮れる中、呆然と桜の蕾を見つめていた佐々川。その彼女の隣に立っていた知らないご高齢の紳士が、静かに話を掛けてきた。