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3章 思い出のタルト・タタン

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◇◇◇

「で?孫娘の話し相手に、あんな大学生風の若い男を呼べだなんて言ってまで、総二郎さんは僕に何をさせたかったんですか」

ビュッフェ台に並ぶ好物のスイーツを食べながら、薫はちらりと総二郎を見た。すると、ぐぬぬとしかめっ面をする総二郎。

「なんで、お前にはそういうことはすぐバレるんだか」
「いくらなんでも不自然すぎるでしょう。いくら知人の知り合いとはいえ、初対面の人間を孫娘と2人にするなんて」
「お前のところに入ったバイトは、なかなか男前な好青年だと聞いたからな」

はあ、と大きなため息をつく総二郎に、薫は「香澄嬢のことで、なにか心配ごとでも?」と問いかけた。

「心配ごとというか、なんというか……。急に卒業後は、海外で女優になりたい、海外の大学に行くだなんて言い出してなぁ。付き合っている彼氏も海外に行くつもりらしいから、その影響だと思うんだが……娘夫婦が亡くなった今、香澄はたった一人の肉親だ。私があの子をしっかり育て上げねばと思っている。だから長く生きた人間のアドバイスとして、一時の感情で、将来を決めてほしくはないとも思っとるんだ」

総二郎の言葉に、薫は「それで?別の男を紹介して、違うところに目を向けさせようと?」と、胡乱な瞳を向けた。

「総二郎さんにしては、随分と愚かな策を講じましたね」
「言わんでくれ!私も冷静になって、つまらんことをと思っとる!最近は些細なことでケンカになって、香澄もあまり話してくれんようになってきたし……」

薫らしい遠慮のない物言いに、総二郎はがくりと項垂れた。どうやら自覚はあるらしい。しょんぼりとする老紳士に、薫はため息をつきながらプレートに乗っていた最後のスイーツをぱくりと食べた。
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